劇場版『機動戦士ガンダム』の感想

作品データ

総監督：富野喜幸
総作画監督：安彦良和
監督：藤原良二
原作：矢立肇、富野喜幸
脚本：星山博之、松崎健一、荒木芳久、山本優
出演：古谷徹、池田秀一、鵜飼るみ子、井上遥、古川登志夫、戸田恵子、永井一郎、倍賞千恵子
音楽：渡辺岳夫、松山祐士
制作：1981年、日本

宇宙世紀0079、スペースコロニー“サイド３”はジオン公国を名乗り、新開発の人型機動兵器モビルスーツ“ザク”を実戦に投入して、地球連邦に独立戦争を挑んできた。

開戦から半年が経過し、戦争は膠着状態に陥っていた。

地球連邦軍は起死回生のため、新型モビルスーツ“ガンダム”を開発。

ガンダム受領に、辺境のスペースコロニー“サイド７”へ新型の宇宙戦艦ホワイトベースが到着するが、ジオン軍の「赤い彗星」シャア少佐に攻撃を受けてしまう。

戦乱により、ホワイトベース乗組員の大半が戦死。
そこにたまたま居合わせたサイド７の住民だったアムロ・レイが咄嗟の判断でガンダムに乗り込み、攻撃を仕掛けてきたザク２機を倒す。

戦火によりサイド７は破損、人の住めない状態に陥ってしまう。
住民は避難民となってホワイトベースに乗り込み、脱出する。

一路ホワイトベースは地球の連邦本部を目指すが、大気圏突入での戦闘で、まんまとシャアの策略にはまり、ジオン軍の制空権内に降り立ってしまうのであった。

ファーストのテレビ版の第１話から第14話までを再編集した劇場版三部作の一作目。

こないだから15年ぶりくらいにテレビ版の初代ガンダムを見ていて、ついでに劇場版との違いも楽しみたいと思い、第14話まで見終わった時点でこの映画を鑑賞してみた。

この映画を見るのは35年ぶりくらい。

私は今まで、初代ガンダムを見るなら断然テレビ版だと思っていた。
しかし改めてこの映画を見てみて、ちょっと考えを改めた。

初代ガンダムは新しい世代の人たちにもぜひ見てもらいたい名作だが、テレビ版は長すぎるという点で、少しハードルが高い。
てっとりばやく初代ガンダムのおもしろさを知りたいなら、意外とこの劇場版を選んでも正解といえるのではないか、と思った。

ただし、映画を見た後で、第８話『戦場は荒野』、もし時間があったら第11話『イセリナ、恋のあと』や第14話『時間よ、とまれ』あたりは追加で見てほしいと思う。

劇場版のいいところはやはり、テレビ版より短くまとまっているので見やすいという点と、編集での間合いのとりかたが実に映画的で、すごく見応えがある出来になっている点。
また、音や映像が格段に改善されているところ。

テレビ版では同じ声優の使い回しが気になっていたが、劇場版ではちゃんとポッと出の人物にもその声優がふられていて、この点ばかりはテレビ版を見た後だとずいぶんホッとさせられる。

ゲスト出演として倍賞千恵子がアムロのお母さんの声を演っていて、これもテレビ版より自然な演技でよくなっていた。
ガンダムのような大河ドラマはあまりアニメっぽい演技よりリアリティがあったほうがいいので、このキャスティングは正解だと思う。

劇場版になるとドラマ部分がかなり削られることになるので、人間描写は薄味になるかと思っていたが、いやなかなかどうして、声の演技の改善もふくめて、よくなっている部分もある。

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出典：amazon

人間ドラマの部分で唸ったのは、大気圏突入の直前にアムロがヘルメットをかぶりながら「いつの間にか戦争させられて」とテレビ版には無かったセリフをボソッとつぶやくところ。
さりげない挿入にガンダムらしいセンスが効いていて、ふっと鳥肌がたった。

この大気圏突入のエピソードはテレビ版ではかなり作画が荒れていた回で、ほぼ全面作り直しになっており、アクションがもう段違いに素晴らしくなっている。

さっき新しく初代ガンダムを見る人に、劇場版を見てから補足でテレビ版の第８話を見てほしい、と提案したが、逆にテレビ版をメインに見るなら、ぜひ補足で劇場版の大気圏突入の部分だけでも見てほしい。

ラストの編集もよかった。
ガルマの国葬でのギレンの演説を最後にもってきたことで、劇場版三部作の序章がきれいに締まっている。
ついこないだまで一般人として日常を送っていた若者たちが、テレビの画面を通して初めて具体的な人間としての“敵”を認識し、それぞれが複雑な想いを心にめぐらせるのだ。

エンディングテーマがまたいい。
初代ガンダム劇場版の歌というと井上大輔のイメージが強かったのだが、なんと第１作目はやしきたかじんだったのだな。

確実に単なる総集編は超えている。
★★★★★