『リアル鬼ごっこ 2015 劇場版』の感想 – リアルの解釈がメタ深い

リアル鬼ごっこ 2015 劇場版
出典:imdb
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作品データ

監督:園子温
原作:山田悠介(?)
脚本:園子温
出演:トリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜
制作:2015年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

女子高生のミツコは何者かに追われ、ふと気が付くと学校の教室にたどり着いていた。ケイコは知らない女性にウエディングドレスに着替えさせられ、何者かに追われる。そして陸上部のいづみも迫りくる恐怖と対峙することとなり……。

『リアル鬼ごっこ 2015 劇場版』の感想

園子温は原作も読まず、映像化した作品も見ずに、ただタイトルだけにインスピレーションを得て作ったという。
どんなインスピレーションを得たのかと思ったが、どうやら美少女たちがナンダカワカラナイ恐怖から逃げまくるお話し、のようだ。
と最初は思った。

謎の巨大カマイタチ、マシンガン女教師、豚のお婿さん。
しかし“鬼ごっこ”の解釈はもっと深かった。

まず惹かれたのは、トリンドル玲奈。表情がいい。
カマイタチの惨事をクラスメートに涙ながらに語るシーンとか、思わず魅入ってしまう。

リアル鬼ごっこ 2015 劇場版

しかしよくこんなバカなこと考えるなあ。このシーンだけは本当にいい意味で呆れた。(出典:imdb

無駄なパンチラや水着なども盛り込みながら、シュールにお話しは進んでゆく。
いわゆるシュールな運命に美少女たちが弄ばれる映画である。

真の「鬼ごっこ」の解釈もまさにそこで、映画はシュールにどんどん飛ばしてゆく。
わけがわからなくて、観客はついていけない。

早い話しが、これは観客がオニになって、「シュールな映画」を追いかけるという、映画と観客の鬼ごっこなのだ。

しかし、考えてみたら恐ろしい映画だ。

「なんだこの映画は。ワケワカランぞ」

なんて言ってる輩は、この映画を見始めた瞬間に実は自分が鬼ごっこに参加させられていることにも気がつかず、ぐんぐん引き離されてしまう。
そして見終わって「鬼ごっこは関係なかったな」などとのたまいながら、知らず知らずのうちに、いつの間にか映画に負かされているという。

なるほど。

“リアル”鬼ごっことはよく言ったもんだ。

映画の中でも「シュールに負けるな。人生はいつだってシュールなんだ」と、ちゃんと人生そのものがシュール(=鬼ごっこ)であることがちゃんと明言されている。
シュールに打ち勝った者だけが、この映画のよさがわかる、そういうことなのか。

レビューサイトなどを見ると、この映画の評価は平均、星2つ。
鬼ごっこに負けた人がこの日本にそれだけいるということだ。

海外レビューサイトをチェックしてみると、日本より評価が高い。
シュールな映画との鬼ごっこは海外の人の方が得意だとみえる。

ちなみに映画のストーリー上に実際の鬼ごっこの要素がないのは賢明な判断だろう。
このコンセプトでそんなミスリードはいたずらに主旨をぼやかすだけだもんな。

リアル鬼ごっこ 2015 劇場版

いちいち無駄にエロい。(出典:imdb

で、ここまでが映画のコンセプトをしっかり理解して、その主旨にのっかってあげた上での感想。

これが映画と観客の「リアル鬼ごっこ」だと気がついたとして、そもそも、そんな鬼ごっこに付き合ってあげられる価値のある映画になっているのか、という問題だが。

ぶっちゃけ、トリンドル玲奈以外のシーンがイマイチ詰まらない。
最後のほう、ヘンに説明があるところも気に食わないけど、あれはあれで、まだじゅうぶんわけがわからないから、まあいい。
その点での減点はナシ。

あと特殊メイクとか、CGとか、作りがかなり雑。
園子温は同じ年の2015年にこの作品を含めて4本も撮ってるし、なんだか濫作っぽいなあ。

この雑さはB級なんだけど、B級にしちゃあ臭ってくるテーマとか、ちょっと高尚すぎる。
園子温の脚本はヘンに詩才があるだけに、それがアダになっているとも言える。
丁寧に作ったらわりと名作になるポテンシャルを秘めていたんじゃないかと。

↓ここから先はネタバレあり↓

リアル鬼ごっこ 2015 劇場版

キャッチコピーはどちらかというと、「全国の素人映画批評家のみなさん〜」
のほうがしっくりくる(その理由はコメント欄を参照)。(出典:amazon

ラストは、「自殺する女の子たちのアタマの中でこんなシュールな出来事が起こっていました」という解釈をするならば、『自殺サークル』の裏エピソード、とも言えるかもしれない。
もしそうだとすると、結局いちばん主人公を騙していたのはアキたちだったということになる。

まあ思ったより悪くなかったが、「こんな鬼ごっこなら勝たなくてもいいや」と思って途中で勝負を降りたとしても、せめて引き分けくらいの判定にはもってってもらえる程度の微妙な出来であった。

評価

全体の評価はこれだけど、冒頭40分をひとつの短編映画と捉えるなら、星4つあげてもいい。
★★★★★

Good Movie 認定


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コメント

  1. 名無しオレ的ゲーム速報さん より:

    同じ考えに至った方がいてほっとしました
    私のanswerは違っていたのかと他のブログを見て思いました
    映画を責めている人がいますが、その人たちは理解していませんでした
    視聴者、私たちのレベルが低下していて理解できる人が少ないことに危機感を持たなければいけないと思います

    • TOMTOM より:

      コメントありがとうございます。
      私もレビューサイトをあちこち見て同じ解釈の人がいないことをちょっと意外に感じておりました。

      追記:キャッチコピーの「全国のJKのみなさん、あなたたちの数を減らすことにします。」は、「全国の素人映画批評家のみなさん〜」に置き換えた方がいいのかもしれませんね(笑)
      私もこのような映画で粛清されないよう、気をつけたいと思います。

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