『スーパー・ハイ・ミー』の感想 – 実験に成功して印象操作に失敗

スーパー・ハイ・ミー
出典:imdb
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作品データ

原題:Super High Me
監督:マイケル・ブライデン
出演:ダグ・ベンソン
制作:2007年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

コメディアンのダグ・ベンソンが、マリファナを30日間断って、そのあとで、マリファナを30日間吸い続けたらどうなるかを実験したドキュメンタリー映画。

『スーパー・ハイ・ミー』の感想

ダグ・ベンソンというマリファナ好きのコメディアンが、話題になったドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー』を見て、「こんな映画がヒットするなら、俺だって同じことをマリファナでやってやらあ」と思い立って制作したのがこの映画。

内容は、ダグが30日間、マリファナを断ち、その後30日間、朝から晩までマリファナを吸いまくる生活を送る、というもの。

『スーパーサイズ・ミー』はマクドナルド批判だったが、これはマリファナ賛美の映画なので、ベクトルは逆である。

一応、マリファナを断っている期間とマリファナ吸いまくり期間で、知能テストとか、健康診断とか、超能力テスト(わはは!)とか、いろいろやって比較検証をするのだが、まあ概ねマリファナは健康にほとんど害がなく、知性も衰えず、むしろ冴え渡る(好きな人限定かもしれないが)、という結果が出た。
しかし、それでこの映画の意図が成功していると思ったら大間違い。

実際のところ、出ている人たちが主役のダグを含めてザコっぽい人ばっかりで、こういう人たちがいるから、やっぱりマリファナはまともな人たちのやるもんじゃないな、と思える映画になっている。

こないだ『クッキング・ハイ』という、やはりそれほど出来の良くないマリファナ賛美のお料理番組を見たが、あれの方がまだ出演者にザコっぽい人が少ないだけマシだった(それでも普通の番組よりは多かった)。

だいたい、ドキュメンタリー映画としてもかなーり出来が悪い。
2007年の映画とは思えないほど映像がしょぼいし、グラフィックは冗談かと思えるほどチャチだが、笑える感じでもない。
こないだ『あまくない砂糖の話』という非常に映像の優れた似たようなドキュメンタリー映画を見たばかりだから、余計しょぼく見える。

構成にしても、後半ダグがマリファナを吸いまくりながらあちこち取材に行くのだが、ただ取材した映像を時系列に並べているだけで、断片的なシーンがずらずら続くばかりで退屈する。

例えばこんなのはどうだろう。
マリファナを吸うとどんな食べ物も美味しくなるから、30日間のマリファナ吸いまくり期間に嫌いな食べ物を克服するとか、塩分や脂肪分を減らした食生活をしてダイエットをするとか。
もしくは、マリファナを吸うとよく眠れるから、睡眠時間のリズムを修正するとか。
そういった、マリファナの特性を利用した生活改善の試みなどを取り入れたらマリファナの有効活用を訴えられてよかったんじゃないだろうか。

しかし、この映画はそういう工夫みたいなものは一切ない。
ほとんど主人公のダグがヘラヘラとマリファナを吸いまくっている姿を眺めるだけ。
取材部分は映画の尺を埋めるためのおざなり、といった印象。

それでほら、マリファナっていいでしょ、30日間吸いまくったけど、とくに害もないし、みたいな単純な結果を見せつけられても説得力がない。
思想なし、ポリシーなし、高き志なし、の三拍子。

こんな映画でも、アメリカは日本よりドラッグ・ビジネスが盛んだから、どんなバカな形であれ、大麻解禁を訴える意義は多少なりともあるんだろうけれども(ハード・ドラッグと市場を切り離し、税金も取れる)。
しかし少なくとも日本においては、この映画に喝采を送るのはまずマリファナ好きの変わり者ばかりで、「マリファナに害がないのはわかったけど、でもやっぱりマトモな人はやらないよね」と普通の人は白い目で遠巻きにしらじらと眺めているだけ、という既にある図式を薄っぺらく上塗りするだけのことにしかならない。

真面目で知的なマリファナ好きもいると思うが、そういうまっとうな大麻解禁主義者の方々にとっては、とっても迷惑なドキュメンタリー映画になってしまっているという、この悲しさ。

大麻解禁を本当に目指すなら、まずなんとかしないといけないのは、こういう映画を作っているマリファナの印象を悪くしているちょっと頭の悪そうな人たちなんじゃないだろうか。
頭の悪そう、という言葉が不適切なら、ちょっとだらしない感じの人たち、自由と好き勝手を履き違えてそうな人たち、頭ごなしに反骨精神を振りかざすことで正しいことをしている気になっているただの快楽主義者たち、などと言い換えてもいい。

評価

知的なユーモアに溢れたマリファナ賛美の作品も見てみたいなあ。
★★★★

Bad Movie

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コメント

  1. 匿名 より:

    検証はすべきだと思います。
    なぜか理由は定かではないが取り合えず禁止にします。というのが一番良くない状態で科学的に証明できればデータを盾に大麻解禁派を黙らせることが出来るはずです。
    頭の悪い人が手を出すというのは恐らく正しい事なのでしょうが、データのないものを危険というのも頭の悪い行為ではないかと思いますが如何でしょう
    個人的にはタバコを大麻に合わせるか、大麻をタバコに合わせるか扱いを同等にすべきと考えています。

    • TOM TOM より:

      そうですね。おっしゃる通り、検証すべきだと思います。
      私が言いたいのはそれとは別の話しで、せっかく検証して害がないことを証明しても、利用者の品性の悪さで大麻の印象を悪くしてたら世話ないよね、ということです。

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