映画『ゴーストバスターズ(2016)』お笑いの神様プロデュース

ゴーストバスターズ
出典:imdb
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作品データ

原題:Ghostbusters
監督:ポール・フェイグ
脚本:ポール・フェイグ、ケイティ・ディポルド
出演:クリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシー、ケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズ、クリス・ヘムズワース、アンディ・ガルシア
制作:2016年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

コロンビア大学の物理学者エリン・ギルバートは終身雇用の審査を目前に控えていた。ある日、旧友のアビー・イェーツと原子力エンジニアのジリアン・ホルツマンと幽霊屋敷を訪れ、幽霊に遭遇する。そのときに撮影した動画をインターネットで公開したことが原因で、超常現象の研究をしていたことが大学にバレて、エリンは大学をクビになってしまう。そこで3人は「超常現象究明研究所」を設立。本格的に幽霊退治に乗り出すことになる。

『ゴーストバスターズ』の感想

今だからこそ出来た女性版のゴーストバスターズ。

今だから、というのは他でもない。
アメリカでこれほどクオリティの高い女性お笑い芸人が同時期に揃ったのはここ数十年で初めてのことなのだ。

私が書いている別ブログ『映画で英語を勉強するブログ』の『クリステン・ウィグの英語がわからなくても笑えるSNLコント紹介』という記事に詳しく書いたが、アメリカではクリステン・ウィグが登場するまでの30年間ほど、女性お笑い芸人不作の時代が続いていた。

まったくもって、クリステン・ウィグの登場は衝撃的だった。
90年代ちょっと話題になったモーリー・シャノンを軽くけとばし、かのアメリカ史上最強の女性お笑い芸人と謳われたギルダ・ラドナーさえも超えた、という声もあるほど。

そして気がついてみれば、近年アメリカはオモロイ女性お笑い芸人が花盛り。
クリステン・ウィグと入れ違いにサタデー・ナイト・ライブのレギュラーになったケイト・マッキノンにレスリー・ジョーンズ。
また、クリステン・ウィグと『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』で共演したメリッサ・マッカーシーなど、それまで吹き荒れていた空っ風はなんだったのかと思うほど、次から次へとクオリティの高い女性お笑い芸人が後を絶たない。
そう、最近ではエイミー・シューマーなんかが話題になってるね。

まさに機は熟していたのだ。
女性版ゴーストバスターズを作るには最高のタイミングだったといえる。

ゴーストバスターズ

出典:imdb

この映画はもともとオリジナルキャストが出演するパート3として企画され、スペングラー博士役のハロルド・ライミスの死去にともない、メンバーを女性キャストで一新し、リブート作品として制作することに軌道修正されたのだそうだ。

これはきっとこれはお笑いの神様の導きであろう。
そうに違いない。

と、制作発表から公開まで、これほどまでワクワクさせてくれる企画もなかなか他にないくらいのものだったのだが、問題は映画の出来である。

お笑いの神様は企画・制作だけでなく、ちゃんと本編のクオリティでも霊力を働かせてくれたのであろうか。
世評を紐解けば「あまり笑えない」だの「性差別映画」だの、イマイチ芳しい声が聞こえてこない。

しかし私はこの映画、とてもおもしろかった。
そんな人が言うほど悪くない。
いや、かなりよかった。

だいたい1984年のオリジナルは人が言うほど、それほどよい映画だったのか、よく思い出してほしい。

めちゃくちゃ話題になったし、主題歌も大ヒットしたが、映画そのものの評判はそこそこだったではないか。

当時、私は高校生だったが、とにかくクラスで話題になっていて、「もう見たか?」「昨日、見に行ってきた」としばらく『ゴーストバスターズ』の話題でクラスはもちきりだった。
そして見てきたクラスメートは皆一様に「どうだった?」と聞かれると、おもむろに表情をニュートラルにさせ、「うん、おもしろかったよ」とあまり魂のこもっていない言い方をするのである。

これが嘘偽りのない、当時の私の周囲での、オリジナル『ゴーストバスターズ』の反応だったのだ。

つまり最初の『ゴーストバスターズ』は、おもしろいことはおもしろいけど、そんなスッゴいおもしろいってほどではない、というのが世間一般の評価だったのである。

だいたいクライマックスの手前までちゃんとしたゴースト退治のシーンがたったひとつしかなく、あとはダイジェストで、後半がまるごとズールのエピソード。
それでいてゴーストバスターズが結成され、体制や道具が整ってゆく過程はバッサリ省略されているという、バランスの悪い構成。
おまけにコメディなのに笑えるシーンが酷く少ないときた。
途中「光線を交差させると危険」というセリフを登場人物に言わせておいて、最後の戦いで光線を交差させてラスボスを倒すという、80年代だから許された古臭い伏線の貼り方。

こうして振り返ってみても、オリジナルはどう考えてもそこまで上等な映画じゃない。

もちろん、最初にこういったゴースト退治コメディのアイデアを発案したこと、独特の漫画チックな特殊効果を編み出したことはオリジナルの功績だし、オリジナルあってのリブートだし、第1作目の偉大さは依然として揺るぎない。
あくまでもコメディ一般としての完成度についてモノ申しているだけである。

マシュマロマン

カメオ出演中のマシュマロマン(出典:imdb

さてそんなオリジナルに対して、このリブート版はどうだ。

マシュマロマンのインパクトを超えるバカ要素がひとつもなかったのは確かに痛い失点だが、笑えるシーンは明らかにこのリブート版の方が多い。
キャラクターたちの個性も豊かで、会話センスもはるかに上だ。

オリジナルではおざなりだった、ゴーストバスターズが結成され、体制や道具が整ってゆく過程も丁寧に描かれているし、人間描写もこのリブート版の方がしっかりしている。
例えば「私をジョーズの市長と一緒にするな!」とムキになるニューヨーク市長とか、細かいところまでキャラクター性が練られている痕跡が認められる。

テーマ曲はもっと長めに聴きたかったが、私はパート2で、かかってすぐラップになってギャフン!ときた経験があり、免疫が出来ていたのでそれほど残念には思わなかった。
「ああハイハイ、そういう当たり前の気の利いたサービス精神はないのね相変わらず」と諦めていた。

こうしてひとつひとつ要素を挙げ連ねてみても、明らかにオリジナルよりリブート版の方が映画として上だろう。
負けてるのはテンポの悪さだけ。
あ、それから悪いやつキャラ。あいつはあんましパッとしなかったね。
まあでも、欠点なんてそれくらい。

なによりも、サタデー・ナイト・ライブのファンの私としては、あのクリステン・ウィグやケイト・マッキノンがゴーストバスターズをやってるってだけでもう嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。

とにかく最大の問題は演出のテンポが悪いことで、イマイチ盛り上がってしかるべきところで盛り上がりきらなかったりするが、これは明らかに監督の力量だ。
オリジナルキャストがちょこちょこカメオ出演するのだが、演出のキレが悪いので、あまりワクワクさせてくれない。
ダン・エイクロイドなんて小ネタ効かせてきてファンとしては嬉しいのだが、同時にかわいそうと思ってしまう。
唯一オリジナルのオマージュでよかったのはエンドクレジットの「彼女」と、最後のあのひと言。

キャストは充実しているし、お笑いの神様のバックアップもついているこのリブート版。
評判が多少なりとも悪いのは、何度も繰り返すが、ぜんぶこの監督のせいなのだ。

電子音声現象だと思わせてオナラの音が「ブー」と聴こえてくるところとか、たぶん脚本ではすごくおもしろいシーンだったんだろうな、と思うんだけれども、テンポの悪い演出でもう完璧にスベった印象になってしまっている。
ポールさん、脚本はなかなかおもしろかったから、続編やるんなら脚本だけにしなさいね。

ゴーストバスターズ

カメオ出演中のスライマー(アグリー・リトル・スパッド) 出典:imdb

それにしても日本タイトル、ちゃんとそのままオリジナルと同じ『ゴーストバスターズ』にしてくれていてホッとした。
糞タイトルが得意な日本の配給会社のことだから、オリジナルと差をつけるために『ゴーストブスターズ』とかつけやがるんじゃないかと心配したよ。

まあとにかく、傑作ではなかったが、とにかくオリジナルは超えていた!

ゴーストバスターズ

出典: Amazon

評価

どう考えてもリブートかなりの成功ですよ。
★★★★

Good Movie 認定


『ゴーストバスターズ (字幕版)』を見る
『ゴーストバスターズ (吹替版)』を見る

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