映画『サスペリア(2018)』の感想 – リメイクを意識しすぎてホラーを忘れたのはドイツだ

サスペリア(2018)
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作品データ

原題:Suspiria
監督:ルカ・グァダニーノ
原作:ダリオ・アルジェント、ダリア・ニコロディ
脚本:デヴィッド・カイガニック
出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、ジェシカ・ハーパー
クロエ・グレース・モレッツ
音楽:トム・ヨーク
制作:2018年、アメリカ・イタリア合作

あらすじ(ネタバレなし)

米ソ冷戦真っ只中の1977年のベルリン。
アメリカからやってきた少女スージーは、モダンダンスの舞踊団へ入学する。

精神科医のクレンペラーは、患者のパトリシアから、自分が入団している舞踊団で夜な夜な奇妙な悪魔崇拝の儀式が行われていることを知らされる。
しかしその後、パトリシアと一切連絡が取れなくなったことを不審に思い、クレンペラーは独自に調査を行い始める。

『サスペリア(2018)』の感想

斬新なオープニングとモチーフの数々

かのダリオ・アルジェント監督のの名作イタリアン・ホラーのリメイクである。

なかなか斬新なオープニング。
フリーメイソン、ベルリンの壁、ユングの精神分析学……。
『サスペリア』の世界観に妙になじむキーワードの羅列に、クロエ・グレース・モレッツというワクワクするとりあわせ。

クロエ・グレース・モレッツ

クロエ・グレース・モレッツ(出典:imdb

クロエ・グレース・モレッツは『キャリー』という、もう一つの70年代の名作ホラーのリメイクに主演していた。
その『キャリー』のオリジナル版の監督ブライアン・デパルマは、『ファントム・オブ・パラダイス』というジェシカ・ハーパー主演のロックミュージカルを監督している。
そしてそのジェシカ・ハーパーは、オリジナル版の『サスペリア』の主演。
そんな感じで、ここらへん界隈は背景でつながっていたりするのだ。

ジェシカ・ハーパー

70年代、我が最愛の女優だったジェシカ・ハーパー(出典:imdb

違いのわかる独逸アレンジとニナ・ハーゲン!

さてリメイクと言っても、同じような映画を作ったら意味がない。

なんてったって、あの『サスペリア』のリメイクなのだ。
どう違いをつけるかが勝負どころ。

まず、オリジナルの『サスペリア』といえばあの毒々しいまでの色彩感覚を思い出す。
私はあんまりオリジナルのファンを意識しすぎるサービス精神はウザいと思う方だから、その色彩演出の部分をバッサリ切り捨て、それに変わるアート要素をオープニングから思いもよらぬキーワードで飾ってくるところにまず好感を持った。

舞台となる学校もバレーじゃなくて、前衛的なモダンダンス。

オリジナルは舞台がドイツって言ってるだけで、もろイタリア映画の雰囲気だったが、今回はいかにも「ドイツ」って感じを出してきた。

最初の方のシーンで我が敬愛するドイツのパンク歌手ニナ・ハーゲンの『Auf’m Friedhof(墓場にて)』という曲の「Gott ist tot(神は死んだ!)」と歌う部分が流れていたのも素晴らしい。

↓この曲です。

だいたいダリオ・アルジェントはいつもスイスだのドイツだのニューヨークだの、やたら海外を舞台にしていたが、ストーリーや雰囲気はいつも同じで、イタリア臭が抜けてた試しがなかった。
このリメイクはそこを見事についてきたわけだ。

オリジナルは非常にアート性の高いホラーだったから、別の方向でアートを目指そうとした意欲がしっかり感じられる。

ここまでやるならいっそ映像をドイツ表現主義っぽくしてくれてたらスゴかったな。

クレンペラー

ちなみにクレンペラー医師(右)はドイツの指揮者オットー・クレンペラー(左)がモデルかも。
名前も顔もそっくり。しかし医師のモデルに指揮者って、どういう脈絡なんだろう?
(出典:imdb

ホラーとしてはどうなんでしょうか

肝心のホラー描写について。

オリジナルは魔女が魔法で殺しているはずなのに、殺人鬼がいるみたいな殺し方があったのが恣意的すぎて、映画の面白さという点では欠点になっていなかったが、確かにツッコミどころではあった。
このリメイクでは、そういうところはすべて魔法っぽく修正されている。

つじつまが合う、という点では感心だが、それで面白くなっているかというと、ぜんぜんダメ。

この映画の決定的な落ち度は、恐怖を体験する「被害者」の役割を演ずるキャラクターが不在であることだ。

主人公のスージーが怖がるシーンはほとんど皆無で、観客は恐怖を感じるために誰に感情移入して見ればいいのかわからず、この映画の最初から最後まで、観客は常に事件の傍観者なのである。
ホラー映画としてこれほどの欠陥品もあるまい。

↓ここから先はネタバレあり↓

サスペリア(2018)

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「三人の母」は誰なのか?

さて、ストーリー的にこの『サスペリア』という映画は、「三人の母」というテーマに沿って制作された「魔女三部作」のひとつに位置される。

テネブラルム、ラクリマルム、サスピリオルムという名の3人の魔女がいて、テネブラルムが描かれたのが『インフェルノ』、ラクリマルムが描かれたのが『サスペリア・テルザ 最後の魔女』、そしてサスピリオルムが描かれたのがこの『サスペリア』なのである。

オリジナルでは、ラスボスの魔女はエレナ・マルコスだったから、サスピリオルムはエレナ・マルコスのこと、という結論で落ち着く内容だった。

ところがこのリメイクでは、途中で「エレナ・マルコスが三人の母のひとりだったらこんなことにはならなかったのに」というセリフがあった。

「エレナ・マルコスがサスピリオルムじゃない?」とまず驚いたが、続けてストーリーが進行してゆくと、どうやらこのダンス学校では、エレナ・マルコスと、マザー・ブランとの間で魔女の派閥争いのようなものがあるらしい、とわかってくる。
(マザー・ブランはオリジナルでジョーン・ベネットがやったキャラ)

なるほど、2人の魔女の対立構造を描くことによって、「サスピリオルムは登場人物の誰なのか?」というミステリー要素を追加したのか。
これはなかなか面白いストーリーのアレンジだと言える。

それにオリジナルではエレナ・マルコスがあっけなくやられすぎ、というツッコミどころがあったから、2人の魔女が対立していたという設定にすれば、スージーはマザー・ブランに利用されてその力を借りたからマルコスをあっさり殺せたのだという説明がつくようになって、自然と辻褄が合う。

まとめ 〜オチはうまくても全体としては……

そしてラスト、このリメイクで示唆されるオチは、なんとスージー・バニオン本人がサスピリオルムだったかもしれない、というもの。

これも確かに、オリジナルではスージーが謎の微笑みを讃えるラストカットがあって、「ひょっとしたらスージーは魔にとり込まれて、魔女になってしまったのかもしれない」という解釈がもともとあったから、その説を発展させたという感じで面白い。

しかしこのオチにするならば、スージーをちゃんと途中経過でホラーのヒロインっぽく、被害者らしく演出して、クライマックスで被害者と加害者が逆転、という感じのサプライズ演出を施したら面白かったのに。

アート性やドラマ性を意識しすぎたのか、ホラー映画としてのお約束ごとを悪い意味で無視してしまっていて、後半など特に面白味に欠ける。

まとめると、『サスペリア』のリメイクとして新しい工夫や試みが見え隠れするものの、ホラー映画としては三流の出来でありました。

評価

『サスペリア』のリメイクとしては上出来、ホラー映画としてはダメ。
★★★★★


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