映画『ワンダー・アンダー・ウォーター/原色の海』主役はウミウシ

ワンダー・アンダー・ウォーター/原色の海
出典:imdb
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作品データ

原題:Impressionen unter Wasser
監督:レニ・リーフェンシュタール
出演:レニ・リーフェンシュタール
音楽:ジョルジオ・モロダー
制作:2002年、ドイツ

あらすじ(ネタバレなし)

ドイツの女優兼映画監督レニ・リーフェンシュタールが1973年、71歳のとき、年齢を51歳と偽りダイビングのライセンスを取得。以来、世界中の海を訪れ、海の生命の美を記録していった。本作は、レニが2千回にもおよぶダイブで撮影した膨大な映像を編集した海中映像詩である。

『ワンダー・アンダー・ウォーター/原色の海』の感想

ドイツ映画史の大御所レニ・リーフェンシュタール女史の、48年ぶりの監督復帰作にして遺作となった作品。

内容は、71歳で世界最年長記録のスクーバダイビングのライセンスを取得したリーフェンシュタールが、30年にも渡り、海の中で撮影した映像素材を編集してまとめた映像集である。

撮影期間は1970年から2000年まで。
場所はパプアニューギニアが中心だが、他にもモルディブ諸島、セーシェル諸島、ケニア、タンザニア、インドネシア、紅海、ココス諸島、カリブ海など、世界各地におよんでいる。

これほどの長期間と広範囲の撮影にして、本編の尺がたった45分。
どれだけ素材を厳選したんだと驚くが、映像のクオリティも相応の美しいものとなっている。
編集に1年以上かけたというのも頷ける。

ワンダー・アンダー・ウォーター/原色の海

カラフルな海の世界(出典:imdb

リーフェンシュタールというとナチスのドキュメンタリー映画を撮った人として知られているが、もともとはドイツ山岳映画の女優として華々しいキャリアをスタートさせた人だ。
山の映画で有名になった彼女が、最後に撮ったのは海の映画なのである。

人間は海が好きな人間と山が好きな人間、言い換えると海系か山系かでタイプが分かれるという。
心理学的には、海系の人は社交的、山系の人は内向的なんだそうだ。

そう考えると、どちらかというと内向きだった彼女は、ナチスにまるめこまれて不埒なプロパガンダ映画を作らされ、そして長い人生経験を経て、気持ちが外向きになって、おおいなる地球を舞台に、ひろびろとした海の映画でその表現活動に終止符を打った、ということになる。

なんだか美しい海の映像を通して、ひとりの人間の成長と完成を垣間見るようで感慨深い。

とにかく海の中がこれほどカラフルなものだったとはと驚く。
とくに印象に残ったのは最後の方に出てきたウミウシたち。
ウミウシってこんなバラエティに富んだ生き物だったんだな。

あと海のなかでエイを撫でるリーフェンシュタールがちょっと微笑ましかった。

ワンダー・アンダー・ウォーター/原色の海

本作の主演俳優・ウミウシ氏(出典:imdb

ナレーションなんて余計なものが無いところも好感が持てる。
私はドキュメンタリー映画でナレーションを使うのは二流だと思うのだ。
(それだけでテレビっぽく成り下がる)

これで冒頭の能書きがなかったらもっとよかった。
百歩ゆずって、もしコメントを入れるなら、最後に入れたほうがよかったんじゃなかろうか。
冒頭で「これらの映像を通してこんなメッセージを伝えます」と観客の視点を固定してしまうんじゃなくて、何も考えずに美しい映像を楽しませたあとで、最後に「世界でこんなことが起こっています」と締めたほうが、観客の心に刺さるものがあったと思う。
まあでも、余計なブツクサは一切無いのが一番いい。

とにかく言葉はいらない、映像をひたすら眺めて悦に入れる45分。

ワンダー・アンダー・ウォーター/原色の海

エイを愛でるリーフェンシュタール(出典:imdb

この美しい映像にジョルジオ・モロダーの音楽がまたよく合っている。
私にとってのジョルジオ・モロダーと言えば、ニナ・ハーゲンのサード・アルバムと、『スカーフェイス』の音楽、というイメージが強かった。
この2作品の横にこの『ワンダー・アンダー・ウォーター』が新たに加わった、とまでは言わないけれども、80年代のモロダー版『メトロポリス』の横くらいには並んだ、という感じ。

評価

いっぱしの映画として完成されているかどうかはともかく、いい映像集でした。
★★★★★

Good Movie 認定

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