『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』の感想 – 元祖少女“活”歌劇

アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!
出典:imdb
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作品データ

監督:三池崇史、横井健司、山口義高、他
脚本:藤平久子、松井香奈、青木万央
出演:内田亜紗香、足立涼夏、小田柚葉、薄倉里奈、西山未桜、小野真弓、雛形あきこ、匠、舞羽美海、ジェームス・ジラユ、鳥居みゆき
音楽:遠藤浩二
制作:2017年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

音楽の国のサウンドジュエルが魔王に奪われた。
魔王は毒毒団を率い、サウンドジュエルをネガティブジュエルに変え、人々をネガティブに染めてゆく。
これを救うべく、音楽の国の妖精たちが人間界に赴き、3人のアイドルユニットミラクルミラクルを結成させる。
ミラクルミラクルは音楽の国の女神様の指示のもと、ミラクルちゅーんずに変身し、魔王の野望を阻止し、世界の平和を守るため、戦いのステージへと上がってゆく。
じきにミラクルちゅーんずには新たに2人が加わって5人組となり、さらにパワーアップ。
さらなる強敵へと立ち向かってゆくのであった。

『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』の感想

Netflixで「鳥居みゆき」で検索したら、これを見つけた。

鳥居みゆきのファンなので、ちょっと再生してみた。

そしたら対象年齢が中学生くらいまでの女の子向けアイドル戦隊ヒロインもの。

「ひゃー。これは私の見るようなモノじゃないな」

と、見ているだけで恥ずかしくて、一瞬、見るのをやめようかと思った。

しかし私には「映像作品を差別しない」というポリシーがあったのだ。

どんな映像でも、見る機会が訪れた以上は、しっかり作品と向き合う。
ダメな作品だとわかったら途中でやめるなり、早送りするのはしょうがない。
しかし少なくともジャンルやスタイルで映像作品を判断しない。
そう私は心に決めているのだ。

とりあえず自分に課しているポリシーに従い、第1話だけでも最後まで見てみることにした。

そしたら、なかなかどうして、悪くない。

「意外とおもしろいぞ、これは」

ということで、第2話も見てみることにした。

そしたら、

「いや、かなりおもしろいではないか」

どんどん印象がよくなってゆく。

映像、音楽、ダンスどれもクオリティが高く(とくにダンスが楽しい)、主役の少女たちも個性的でイキイキとしている。
ストーリーもつまらないところはささっと省略して、どうでもいいけど楽しいダンスやお花畑CGのボリュームをしつこいくらい盛りまくり、確かなセンスに支えられた独特のバランス感覚が全編しっかり効きまくっている。

最後の字幕を見たら、監督が三池さんだって。
私は三池監督の映画を過去に5本ばかり見て、何ひとつおもしろいと思うものがなかったので、三池監督の映画は私にはダメだと思っていたので意外だった。

けっきょく第3話を見る頃には、amazonで主題歌の『Catch Me!』や『ハートのジュエル』を購入して普段から聴いてしまうくらいファンになっていた。

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そんなこんなで全51話すべて鑑賞。

けっきょく、心の底から楽しんで見ちゃったよ。

最終回まで見終わった後、すぐに第1話から最終回まで全話、2回目を見た。
お気に入りの「アメリ村」のエピソードなどは5回くらい見てしまった。

ラスト3話はもう涙、涙、涙。

いまだかつてこの作品ほど、自分に課していたポリシーに感謝したことはない。

子供向けドラマとはいっても、大人の私が見てもじゅうぶんおもしろい。

私の年齢で見ると遊び心が随所にあるのがわかって、例えば第11話のテクノお兄さんが悪いやつで、それをテクノジュエルを使ってミラクルちゅーんずがテクノ戦士に変身して戦う回。
同じテクノでも、悪いやつがクラフトワーク風、ミラクルちゅーんずがパフューム風という、新時代のテクノが旧時代のテクノを倒すという構図。
これなんか、YMO風じゃなくてクラフトワーク風にしているところがシブい。

このドラマは音楽が重要なテーマのひとつだけに、音楽的にもかなりすぐれている。
変身シーンのBGMでは、同じメロディを5人それぞれ5通りに変奏させていたり。
オープニングは2曲、エンディングテーマは4曲あったが、どれもいい曲ばかり。

この楽しさはなんだろうなあ、と考えていて、ふと、学生時代に毎週『スケバン刑事』を楽しみに見ていた頃の感覚を思い出した。

そういえば『スケバン刑事』は元々「少女歌劇」というものがあったのを、それなら「少女活劇」があったっていいじゃん、という発想で制作されたものだと聞いたことがある。
その点、この『ミラクルちゅーんず』は歌劇の要素もあるので、まさに『スケバン刑事』のおもしろさと、そのルーツである歌劇を魅力をかけあわせたハイブリットな楽しさがあるわけだ。

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5人のメンバーの話をすると、誰が一番いいとかはなく、私は全員のファンだと言ってもいいくらい(こういうのを最近の言葉で「箱推し」というらしい)、どの子もそれぞれの個性が光っていて魅力的だった。
全員が、将来の活躍が楽しみな、素晴らしく才能あふれるタレントさんばかりである。

例えばイタリアでこのドラマはリメイクされていて、YouTubeなどでクリップが見れるが、本家と比べてクオリティの低さは著しい。
しかし女の子たちの年齢を考えると、あの程度で当たり前なんじゃないかな。

なかでも演技にいちばん味があるのがマイ。
コミカルなリアクションやツッコミもうまく、女優としていちばん将来が楽しみなのがマイを演っている女優さんだと思う。

タレントとしてのオーラがすごいのがフウカ。
最初のほうはそれほど感じなかったんだけど、回を重ねるごとにオーラが出てきて、15話くらいから、フウカが映るたびに、まるで画面がパーッと輝いているように見えた。

顔立ちや表情が個性的で可愛いなあ、と思うのがアカリ。
瞳がパッチリしていて、画面の隅っこにいてもつい目がいってしまう。

ヒカリも将来すごくキレイなお姉さんになりそう。
歌声がとても魅力的。

↓ここから先はネタバレあり↓

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しかしやはり、キャラクターとしていちばん愛着あるのがカノン。
このドラマの成功は、5人の中でいちばんドジで人間味のあるカノンを主役にすえているところが大きい。
見ているわれわれは等身大の彼女を入り口にして、ドラマに感情移入してゆけるのだ。

最終決戦で、世界が闇に包まれ、ミラクルのみんなまでがネガティブに汚染されてしまい、もうダメだと思わされたそのとき、このカノンが最後に残ったわずかなポジティブな気持ちをふるいしぼり、残りのメンバーに忘れかけた使命を思いださせ、カメラを通して世界中に音楽を届けるのだ。

ここでカノンがふりしぼるように歌う『ハートのジュエル』の歌詞が光っている。

あらら どうしました
そんなに暗い顔をして
そんなんじゃ 油断してると
ネガティブ病になっちゃうよ

こんな絶望暗黒のシチュエーションに、ちょっとおどけた歌詞が心にささるのだ。

カノンを通してドラマの世界に生きていたわれわれは、カノンを通して音楽の大切さを体感し、ポジティブになろうと心をひとつにできるのである。

もうラスト3話は泣きっぱなしだった。
まさか子供向けのドラマでここまでガチ泣きしてしまうとは思わなかった。

この最終エピソードの5人の演技は神がかっている。
毒毒団だって涙したのだ。
このシーンの5人を見て涙しないやつは人間じゃねえ。

なんでこんなに涙が出てくるのかなあ、と、ちょっと考えた。
答えはすぐわかった。
この5人が本当に頑張っているからなのだ。

5人というのは、キャラクターとしての5人でもあるし、演じている5人の女優さん、という意味でもある。

もちろん細かくはられた伏線やストーリーも素晴らしい。
しかしそれらは感動的な最終章にもっていくための仕掛けでしかなく、感動の本質じゃない。
そんな大人が机の上や会議室で決めたような小手先の約束ごとだけで、こんな滂沱の涙は流れない。

あくまでもストーリーを追ってゆく過程で、頑張っていた少女たちの姿をずっと見守っていたからこその感動なのだ。

これは少女たちの頑張っている姿を見て、感動して、そして何かをもらえるドラマなのである。

こんな素晴らしいドラマを見て今後の人生を成長してゆける今の子供たちは幸せだなあ、としみじみ思った。

ああ、そうだ。
最後にお礼、言っとかないと。

鳥居みゆき様、出演していてくれて、ありがとうございました。
お陰でいい作品に出会えました。
うぎょろっそ。

評価

おもしろくて、見る人にいい影響をあたえる素晴らしいドラマです。
★★★★★

Good Movie 認定


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