アニメ『映像研には手を出すな!』の感想 – ロボアニメ制作というオトナへの階段を登る少女たち

アニメ『映像研には手を出すな!』
出典:imdb
この記事は約4分で読めます。

作品データ

監督:湯浅政明
原作:大童澄瞳
脚本:木戸雄一郎
出演:伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里
音楽:オオルタイチ
制作:2020年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

芝浜高校に入学した浅草みどりは、アニメを作るのが夢。
友人の金森さやかを誘い、アニメ研の見学に行くが、そこで水崎ツバメと遭遇。
アニメーター志望の水崎は浅草と意気投合。
3人は「映像研」を立ち上げ、アニメ制作を開始する。

『映像研には手を出すな!』の感想

冒険家を夢見ていた少女・浅草氏が、宮崎アニメで映像に開眼。
仲間の金森氏や水崎氏とともに、夢の舞台を現実から空想へと移し替え、アニメ制作を開始。
あげく、現実までをも空想のキャンバスへと塗り替えてゆく。

ヲタクたちの会話が面白くて、単なる夢ある学生たちの青春コメディに終わらない科学考証のツッコミ、戦略的な展開などが妙に笑いを誘う。

↓ここから先はネタバレあり↓

アニメ『映像研には手を出すな!』

出典:amazon

このアニメはキレるな、と早くも思い知らされたのが、第一話の、浅草氏が金森氏に宮崎アニメを初めて見せるシーン。
浅草氏は宮崎アニメのスゴさを語り、現実主義の金森氏がそれを一発で理解する。
ここに黒服に追われる水崎氏という、『カリオストロの城』のパロディがなだれ込み、浅草氏は冒険を求めて、金森氏は金の匂いを嗅ぎつけて、水崎氏を救出に向かう。

浅草氏と金森氏をルパンと次元に、水崎氏をクラリスに見立てつつ、3人の対照的なキャラクターをくっきり描き切るあざやかな出だし。
(しかもルパンと次元が自らの野望のためにクラリスを利用するというふうに、『カリオストロの城』のモチーフを逆転させている)
傑作の予感である。

神回は第6話、ロボットアニメ制作が抱える矛盾を描いた深いエピソード。

鉄腕アトムからガンダムやパトレイバーを経て、エヴァンゲリオンに至るまで、これまでロボットアニメはロボットを通して、人間のなんたるかを解き明かす深遠なテーマを追求してきた。
しかしそれは同時に、ロボットが巨大になったり最新の科学兵器を装備したりすることで、リアリティから離れてゆくという矛盾を抱えることになった。
かといって、ロボットを実用サイズにまで小さくしたり、わざわざメカを二足歩行にする必然性にまで切り込んでゆくと、それはもはやロボットアニメそのものを否定する境地にまで至らざるを得ない。
このジレンマを呑み込み、立ち直ることで、浅草氏のアニメ監督としての成長が表現される。

水崎氏の、

ロボアニメ制作は逃れられない罪を背負うことだもん

というセリフが光っていた。

これは人間の成長にもなぞらえることができる。

オトナになるってことは、世界は矛盾と理不尽と不公平に満ちていることを知ることだ。
これを認められない限りは、人間はモラトリアムな子供のままなのである。

大切なことはみんなアニメや漫画が教えてくれる。

この第6話を頂点に、前半に神回がいくつもあった。
これ以降の後半はいまいち同じようなエピソードが続いて退屈したが、まあ、悪くはない。

なかなかいいアニメ。

願わくば、生徒会長の凡庸な政治家っぷりが好きだったので、もっと登場してほしかった。

評価

前半に素晴らしい神回がいくつもあったから、後半の失速は目をつぶることにして、この評価。
★★★★

Good Movie 認定


アニメ『映像研には手を出すな!』を見る

【Amazon.co.jp限定】映像研には手を出すな! COMPLETE BOX (初回生産限定版/2枚組) (映像研キャストトークCD付) [Blu-ray]

映像研には手を出すな! コミック 1-5巻セット

映像研には手を出すな!(1) (ビッグコミックス)
映像研には手を出すな!(2) (ビッグコミックス)
映像研には手を出すな!(3) (ビッグコミックス)
映像研には手を出すな!(4) (ビッグコミックス)
映像研には手を出すな!(5) (ビッグコミックス)

TVアニメ『映像研には手を出すな!』公式ガイド: 映像研活動報告 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

コメント

タイトルとURLをコピーしました