映画『KAMIKAZE TAXI』原田眞人と役所広司が魅せた真のカミカゼ

コンドル
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作品データ

監督:原田眞人
脚本:原田眞人
出演:役所広司、高橋和也、片岡礼子、矢島健一、中上ちか、ミッキー・カーチス、内藤武敏、田口トモロヲ
音楽:川崎真弘
制作:1995年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

悪徳政治家・土門の世話係になったチンピラ・達男は、恋人のレンコに頼んで土門に女を世話する。女がSM趣味の土門に重傷を負わされ、怒ったレンコはヤクザの組長・亜仁丸に抗議し、殺される。恋人を殺された達男は復讐を誓い、土門から大金を盗み出すことに成功するが、すぐに亜仁丸にバレてしまい、追われる身となる。達男は逃亡中に日系ペルー人・寒竹の運転するタクシーを拾い、一緒に旅を続けるが……。

『KAMIKAZE TAXI』の感想

176分バージョンで鑑賞。
どんな映画なのかまったく知らないで見はじめた。

まず日系外国人労働者のインタビューや日本の国会の映像などが映し出され、「ドキュメンタリー映画なのかなこれは」と思っていると、そのたどたどしい日本語をしゃべる外国人労働者たちのひとりにいきなり役所広司が出てきてびっくり。

「なんだこれは?」と戸惑うが、そんな混乱もどこ吹く風とばかりに即、普通にストーリーが動き出す。

そこからはガラッと、まるでタランティーノみたいな犯罪映画のノリに。
しかもハードボイルド・クライム・サスペンス・アクションとしてなかなかおもしろい。

役所広司のたどたどしい日本語をしゃべる日系人役も最初は「えっ」と思ったけど、よく見たらぜんぜん違和感なかった。うまい。
組長にミッキー・カーチスをもってきたキャスティングのセンスがまた素晴らしい。
日本映画って、このキャスティングセンスが足りないんだよな。
さすがアメリカ仕込みの原田監督だと思った。

とても長い映画だが、理屈抜きにおもしろいし、それでいてその根っこには、日系外国人労働者、政治と暴力団の関係、日本の黒歴史など、冒頭でほのめかされたモチーフがしっかり流れ続けている。

↓ここから先はネタバレあり↓

注目すべきは役所広司演ずるペルー移民の日系人・寒竹。
彼の父は第二次大戦中に断固として神風特攻隊として死ぬことを拒否した高潔な人物であった。
そして彼ら親子は日本を捨て、ペルーに移住し、そのコンドルが飛翔する壮大な自然で真のカミカゼを見たのだ。
この経験が、寒竹のクライマックスの行動へとつながってゆく。
このくだりに私はとことんシビれた。

ラスト30分はもう言葉はいらない。
それまで描かれてきたことすべてひとつになる。

制作は1995年。
しかしなんだな、バブルが崩壊してから20年以上にわたって経済成長をしていない唯一の先進国になってしまった日本。
けっきょくこの映画が作られてからのこの長い年月はなんだったのかと思うくらい、「外国人労働者」「政治の腐敗」「正しい歴史認識」など、この映画で語られた問題意識は今現在でも立派に通じてしまう。

文明は発達したかにみえて、何十年間、少しも変わっていないのだこの国は。
日本っていつからこんな悲しい国になっちまったんだ、としみじみ思った。
だからこそ、この映画は今からでももっと多くの人たちに見られるべき映画なのである。

KAMIKAZE TAXI

出典:imdb

なんでもこの映画、原田眞人監督がリメイクに意欲を示しているそうだが、ぜひやってほしい。

評価

これで最初はVシネとして制作・発売されていたなんて驚き。
劇場公開の声が上がったのもうなずける。
★★★★

Good Movie 認定


『KAMIKAZE TAXI <インターナショナル・バージョン>』を見る

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