映画『キネマの神様』の感想 – 志村けん主演で見たかったけど…

キネマの神様
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作品データ

監督:山田洋次
原作:原田マハ
脚本:山田洋次、朝原雄三
出演:沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、リリー・フランキー、前田旺志郎、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子
音楽:岩代太郎
制作:2021年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

かつて映画監督を志すも夢破れ、今やギャンブルに明け暮れる借金まみれのゴウ。
妻や娘にもすっかり見放されている。

そんな中、幻となったゴウの初監督作品の脚本を読んだ孫の勇太は、その内容に感銘を受け、脚本賞に挑戦することを提案。
ゴウは、自身の作品と向き合いながら、映画への愛を再確認していく。

『キネマの神様』の感想

この映画、前半はダメすぎる老人のために崩壊寸前になっている家庭のお話し。

なんとなく、沢田研二をはじめとする登場人物たちの演出から察すると、この映画の前半はもっとユーモラスに見えるように意図されてるんじゃないかとも思うのだが、実際はひたすら悲壮感しか感じない。

↓ここから先はネタバレあり↓

キネマの神様

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これでユーモアが前面に出ていたら、ラストの娘の「親子の縁を切ろうと思っていた」と涙ながらに想いを吐露するシーンなど、素晴らしく際立って見えたかもしれない。
(だって、あれだけモロに悲惨に描いちゃったら、親子の縁のひとつやふたつ切りたくもなるのは当然だろう、と身も蓋もないことを思ってしまう)

本来、山田洋次監督は素朴で貧乏だけど、心や感情が豊かな古き良き時代の人情物語を描く名手だったはずだ。

ところが最近の山田洋次監督の映画は、いや「最近」と言っても、寅さんシリーズの後半くらいからその傾向はあったのだが、訪れる現代の新しい文化に侵食され、従来の「山田洋次節」が肩身の狭い想いをしながら、都会の片隅の中でなんとか居場所を探している、という感じがしていた。

だから昔のようなのびのびとした「山田洋次節」はもう見れないのかなあ、と、ちょっと寂しい思いを抱く。

そう、そんな現代社会の波にのまれ、おまけに志村けんの降板といい、後半の展開といい、コロナにまで侵食されて悪い影響を受けているこの映画。

山田洋次監督の感性は本当に素晴らしいのに、山田洋次監督のせいではないところで、かなりダメにされてしまった映画、という印象である。

まあ、問題は多い映画だが、やっぱり最大に気になってしまうのは、やっぱりこの映画、志村けん主演で見たかったなあ、ということ。
ひょっとしたら必要なユーモアの欠落は、志村けんが主演することを想定されて書かれた脚本だったからなのではなかろうか?

と、ここでちょっとネットを検索してみる。。。

やっぱり脚本のセリフは志村けんのために当て書きされたものを改変せず、そのまま使ったものらしい。
こうなるともう余計、志村けん主演でこの映画は見たかった。

それでも沢田研二はすごくよかったし、大好きな宮本信子さんも出ていたから、ギリ星4つはあげたい映画になるところだった。

志村けんの不在をよそに、何気にこの映画の最大の問題点は、ラストのナレーション。

「映画を見ながら死ぬ。その父の願いをきっとキネマの神様が聞いてくれたのだろう」

こんなこと、いちいち言葉にしないでもわかりそうなものだ。

「十のことを言うのに七で止めて、七で十のことを伝える。饒舌でなく、訥々と語る」

と、登場人物のセリフに言わせているのに、このナレーションはどういうつもりだろう。

この余計なナレーションがあるだけで星ひとつマイナス。

評価

現代文明に侵食され、コロナに侵食され、肩身の狭い思いをしながら、ここまで踏みとどまった山田洋次監督に感謝。
★★★★★

Good Movie 認定


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