『うる星やつら オンリー・ユー』押井守の劇場版アニメ初監督作品

うる星やつら オンリー・ユー
出典:imdb
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作品データ

監督:押井守
原作:高橋留美子
脚本:金春智子
出演:古川登志夫、平野文、榊原良子、神谷明、永井一郎、千葉繁
制作:1983年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

影ふみをして遊ぶ少年と少女。少年は影ふみに勝ったと主張し、少女は11年後に自分たちは結婚しなくちゃいけないと告げる。それから11年後、あたるのクラスメイトや友人たちに、結婚式の招待状が届く。

『うる星やつら オンリー・ユー』の感想

YouTubeにアップされていたので、見てみた。
この映画は多分、ちゃんと見るのは今回が初めてなんじゃなかろうか。

今でもあるのか知らないが、80年代にアニメの画面をコマ割りしてフキダシつけて漫画みたいにした本がよくコンビニなどで売られていて、あれを立ち読みしていてつい読破してしまい、それで映画見た気になって本編はとうとう見こなしでここまできてしまった。
ちなみに当時の感想は、ストーリーはそれなりにおもしろく考えられているなあと思ったおぼえがある。

『うる星やつら』の映画というとやはりどうしても2番目の『ビューティフル・ドリーマー』の印象が強くて、さらにその後に作られたのはどれも駄作だったこともあり、この劇場アニメ第1作は影の薄いスタンダードな一本、という位置付けになっていた。

まあ直後に名作(傑作かどうかは議論の余地があるとして)がドカンと発表され、続けてドカドカと完結編までクズで埋められた『うる星』劇場アニメシリーズとしては、至極まっとうな第1作目は構造的なあおりを喰ったといえる。

しかし今になって改めて見直してみると、本当にそれなりによく出来ていて、可もなく不可も無くよりちょっとばかし上のレベルくらいには評価できる佳作だった。

あたるの結婚話しが宇宙戦争にまで発展するバカバカしさもいいが、ラムの艦隊があたるをエル軍から守るために命をかけて戦っているときに、あたるの不埒な発言が無線放送でダダ漏れしてしまうシーンはベタながらタイミングよくて笑った。
あと、似てないラムの変装であたるをさらいにくるロゼの存在がおかしかった。

よくないのは音楽で、主題歌・挿入歌を含め歌付きの曲が何ひとつ好きじゃない。
完結編の『好き嫌い』くらいの名曲がひとつはほしかった。
それが出来ないなら、せめて『ラムのラブソング』を一回くらい流してくれ。

あと、ランちゃんやレイなどは特にだが、本来のキャラにそぐわない言動が目につくところもイマイチ。
しかし、これは劇場版『うる星やつら』シリーズすべてに共通して散見される欠点なので、まあ今作の傷は浅いほうかな、とも思う。

そう、『うる星やつら』の劇場アニメはどれも、どういうわけか、キャラクターがすべて記号化してしまう傾向があるのだ。
そういえば昔、私の最も尊敬する映画評論家の友成純一大先生が、「『うる星やつら』の原作漫画はキャラクター性が拡散してゆくところに良さがあるのに、アニメの映画版はキャラクターがプロットに沿って集結してゆくのでダメだ」(うろ覚えなので間違っていたらごめんなさい)みたいなことを言っていたが、まさにそれって言い得て妙だと思う。
まあでも、これら『うる星』劇場アニメすべてに共通する欠点がいちばん穏やかなのがこの第1作目ということで、むしろ大目に見てしまってもいい。

映画としては2作目『ビューティフル・ドリーマー』の方が私は好きだが、漫画の映画化としては、これらのキャラクター性、ひいては『うる星やつら』本来の世界観、という点でこの第1作目のほうが上だ。

そういえば、この映画は何気にかの世界の押井守の劇場アニメ処女作なのだな。
押井守的な世界観(押井守は世界観で魅せる監督なのだ)は見られないが、独特の味わいをもつ固定画面や間合いは間違いなく押井監督ならではのもので、よかった。
そう、立ち食い蕎麦も出てきたし。
それにメガネの「これでオレたちも戦争を知ってる子供達だもんな」はおそらく押井が付け足したセリフなんじゃなかろうか。

しかしなんだな。
世界観で魅せる映画監督・押井守が、まだその独特のスタイルを確立していないデビュー作で、逆に「うる星やつら」の世界観を正しく表現してしまうに至っていたとは、なんとも皮肉でラッキーな結果だったといえる。

とまあ、いろいろ書いたが、やっぱり私は『うる星やつら』は劇場版よりTVアニメ、TVアニメよりは原作の漫画、とくに4巻くらいまでが好きなので、この映画は「見たら見たでおもしろい」レベル止まり。
時間の無駄とは言わないけど、別に見なくても惜しくはなかった程度の微妙な良作。

評価

最終評価はこんなところです。
★★★★★

Good Movie 認定

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