アニメ『機動戦士ガンダムF91』の感想 – こじんまりとガンダム

機動戦士ガンダムF91
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作品データ

監督:富野由悠季
脚本:伊東恒久、富野由悠季
出演:辻谷耕史、冬馬由美、前田昌明
音楽:門倉聡
制作:1991年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

宇宙世紀0123年3月。
平和だったスペースコロニー「フロンティアIV」にいきなりモビルスーツ部隊が攻めてきて、戦争になる。
高校生のシーブック・アノーは、妹のリィズや友人セシリーたちと一緒に逃げる。
ところがセシリーは敵に連れ去られてしまう。

攻めてきたモビルスーツ部隊は軍事組織「クロスボーン・バンガード」のものだった。
クロスボーン・バンガードは腐敗した地球連邦政府を倒し、新たな国家「コスモ・バビロニア」を建国するため、ロナ家によって組織されたのである。
そしてセシリーはロナ家の当主マイッツァー・ロナの生き別れの孫娘だったのだ。

シーブックは近隣のコロニー「フロンティアI」にたどり着き、F91と名付けられたガンダムに乗ってクロスボーン・バンガードと戦うことになる。
そしてセシリーもまた、コスモ・バビロニアの象徴として祭り上げられ、自らモビルスーツに乗って連邦軍と戦うのであった。

『機動戦士ガンダムF91 完全版』の感想

ガンダムというとほとんど一年戦争を扱ったファーストしか知らずにここまできた。
Netflixにガンダム・シリーズがいくつかアップされていたので、これをきっかけにファースト以外のガンダムも見てみるか、とまずはこれを再生。

「フロンティアIV」と「フロンティアI」というコロニーが舞台。
これらのコロニーを制圧する過程で描かれるドラマがストーリーの骨子。

最初の方のシーンで、平和ボケしたコロニーにいきなり敵が攻めてきて、ボカボカ人が死ぬ。
いい意味で映画の導入部、って感じがせず、見ているこちらもいきなり日常から戦争に巻き込まれたような不安を抱かせる。
このあたりのつかみはやっぱりガンダムって感じでいいな。

キャラクターに知ってる顔がひとつも無く、博物館にザクがあったりで、なんとなく感覚で時代設定もわかるようになっている。
「ニュータイプ」なんて言葉も出てきて一般人も使ってるけど、用法が少し平たい。
それでいて、科学技術は一年戦争の頃と比べてそれほど著しく先へ行っているような感じでも無い。
まあだいたい、一年戦争の2〜3世代後(60〜90年後)くらいってとこ?

で、検索してみたら、一年戦争の40年後くらいの設定だって。
思ったより近い設定だったな。

ガンダムというとジオン軍のモビルスーツのカッコよさが印象的だったが、今回の敵はガスマスクみたいなデザインで、いまいち。
また、ジオン軍は軍服のデザインとかナチスっぽい感じだったが、こちらの敵はマークがモロにナチス。

しかし敵は貴族主義を掲げているだけに、なるべく一般市民の血は流さずに目的を遂げようとしているのに対して、地球連邦軍のほうは早く平和をとりもどすためには多少の犠牲はやむをえないなどと考えている。
こういう意識的に勧善懲悪の図式を排除して考えさせる形にしているところがまたガンダムって感じ。

一応、敵には鉄仮面のドレル・ロナみたいにあからさまな悪い奴はいるが、これはある種「ストーリーの落としどころの持って行き場を確保した」っていう印象が強くて、ほとんどキャラとしては興味がない。

その点、キャラクターとしてはセシリーの存在が一番おもしろかった。

↓ここから先はネタバレあり↓

機動戦士ガンダムF91

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私が好きなシーンは2つあって、ひとつはロナ家の屋敷で深夜に連邦軍からの攻撃を受けたときのマイッツァーとベラ・ロナ(セシリー)との会話。
外で爆撃音が響く最中に、連邦軍の腐敗や、貴族の使命などについて祖父と娘が議論をするという、敵の誇り高き理想と大義名分がわかる味わい深いひとコマ。

もうひとつ好きなシーンは、空中戦でガンダムに乗ったシーブックと敵のモビルスーツに乗ったセシリーが再会して、一緒に連邦軍に戻ってからのやりとり。
序盤では意思のしっかりした気丈なお嬢さんだと思っていたセシリーが、究極の選択で若さをちらつかせる様に気持ちのいいリアリティを感じた。
アクションもいいが、やっぱりこういう一筋縄ではいかない人間の描き方こそがガンダムの醍醐味だな。

しかしこの映画、妙にファーストを思わせる符号が多い。

科学者の息子の一般人の若者がガンダムに乗ることになるとか、敵国がナチスっぽい雰囲気の君主制だとか、素人兵が操縦するホワイトベースみたいな船が出てくるところとか、ラストは宇宙遊泳シーンで終わるところとか。

ふりかえってみれば、一年戦争を彷彿とさせる戦争が当人たちにはそうと知らずに行われていた、みたいな戦記物という印象。

最後も突き抜けたスゴさはなかったが、ちょっとガンダムらしい独特な感じがあってよかった。

それにしてもエンディングでガンダムと悪い鉄仮面の顔が半々で重なるのはどういう意味なんだろう?
この最後のカットが1番の謎。

評価

こじんまりとガンダムでした。おもしろかった。
★★★★★

Good Movie 認定


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