映画『息子』の感想 – 山田洋次監督、ありがとうございました。

山田洋次感想の映画『息子』
出典:imdb
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作品データ

監督:山田洋次
原作:椎名誠
脚本:山田洋次、朝間義隆
出演:三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見、田中隆三、原田美枝子
音楽:松村禎三
制作:1991年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

岩手でタバコ農家を営む昭男は1年前に妻に先立たれ、現在は独り身。
長男の忠司は東京の大企業に勤める妻子持ちで、年老いたひとり暮らしの親父を心配している。
しかし昭男は自分のことより、いつまでも定職につかずバイトを転々としている次男の哲夫の将来を心配していた。
そんな矢先、哲夫は新たに鉄工所のバイトをみつけ、そこの取引先の女子社員に恋をするのだが・・・。

『息子』の感想

これは私のために作られた映画じゃないかと思った。
私事なのでここには書かないが、この映画で描かれた息子はちょっとだけ私と共通点があったこともあったし。
主役たちの実家がタバコ農家というところも嬉しい(私は永遠の愛煙家である)。

しかしこの映画、息子のいる親、親父のいる息子、以外の人はどんな視点で見るのだろう。
感動するとしたら、それはどんな感動なのだろう。
それが想像つかないくらい、実感として心にしみいるものがあった。

それからもうひとつ、私は息子がいてもおかしくない年齢だが、いまだ息子に恵まれていない。
そんな立場から、私にもし息子がいたら、こんな気持ちだろうな、というバーチャルな感慨もあった。
そういう点で、この映画の息子だけでなく、親父のほうにも感情移入して見ていた。

↓ここから先はネタバレあり↓

山田洋次感想の映画『息子』

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息子がめんこい嫁さんをみつけて、よろこぶ親父の姿。
「オメェ、いつまでオレに手ぇかけさせたら気がすむんだ」のセリフはもう泣けてしょうがなかった。
こんなよろこぶ親父の姿を描ける映画監督が世界中どこを探して他にみつかるというのか。
山田洋次の名人芸だ。

親父が岩手へと帰る電車のなか、息子夫婦との外出風景を夢見るように思い出すシーンも大好きだ。
ファックスを選ぶショッピングの場面に「お父さん、お元気ですか」のファックスが挿入されるところなんかも憎い。

しみじみ、ああ、私は、自分の親父にこんな幸せな顔をさせてやったことが今まであったかなあ、と思った。
だいたい、私はこの映画の息子と違ってもういい年齢だが、それでも親にかけてる心配は負けてない自信がある(堂々と書くことじゃないが)。

ラストで幸せいっぱいの親父が帰ってきて、ふと昔を思い出し、誰もいない家にほのかなもの寂しさが立ちのぼる。
そんな空間に火を灯して、ひとり歌を口ずさむ。

どうしてこんな想像を絶する完璧なラストシーンが描けるのか不思議でしょうがない。
(書きながら思い出してまた涙がぽろぽろこぼれてくる)

ちなみに最後、親父がひとり雪のなか帰ってくるところ。
どことなくこの親父は死んでしまいそうな空気感が漂う。
しかしそれはこれまでに作られた凡百のお涙ちょうだい映画の幻影が頭に残っているからで、山田洋次はそういう姑息な手口など使わない監督であることは最初からわかり切っていた。
そこまでわかり切っていて尚、想像を超えるのが巨匠のマジックということだ。

評価

満点以外の点数をつけるなど考えられない。
★★★★★

Good Movie 認定


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