『パイレーツ・ムービー』の感想 – 古き恥ずかしきあの時代に

パイレーツ・ムービー
出典:imdb
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作品データ

原題:The Pirate Movie
監督:ケン・アナキン
原作:ウィリアム・S・ギルバート、アーサー・サリヴァン
脚本:ウィリアム・S・ギルバート、トレヴァー・ファラント
出演:クリスティ・マクニコル、クリストファー・アトキンズ、テッド・ハミルトン
音楽:マイク・ブレディ、テリー・ブリテン、スー・シフリン、ピーター・サリヴァン、アーサー・サリヴァン
制作:1982年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

メガネをかけた冴えない女の子メイベルが、海に落ちて、19世紀にタイムスリップ。
ペンザンスの海賊からお宝をとりもどす冒険に出る。

『パイレーツ・ムービー』の感想

私はいまだにどこか、自分の心の一部が80年代を彷徨っているような気がしている。
10代という最も多感な時期をすごした時代の空気というのは、どんなに大人になっても、一生つきまとうものだ。

そんな私だから、たまに80年代を感じる映画を見たくなる。
心の里帰りみたいなもんだろうか。

この『パイレーツ・ムービー』なんか、もう冒頭から濃厚な80年代臭。

ちなみに80年代とはどんな時代であったか。

ひとくちに言うと、「恥ずかしい時代」であった。

古いものというのはどこか精錬されてなかったり、今にしてみると古臭かったりするものだが、それが80年代のものは妙に「恥ずかしい」方向に突出する傾向がある。
これは70年代にも90年代にも見られない現象だ。

この80年代的な「恥ずかしさ」を感じるとき、私はそこに青春時代の青臭い自分自身が重なるのを感じ、なんともいえない気持ちになるのである。

ちなみに私の中で、古き恥ずかしき80年代を象徴する映画といえば、一連の鈴木則文監督のアイドル映画(『パンツの穴』『伊賀野カバ丸』『コータローまかりとおる!』『ザ・サムライ』)や、手塚眞監督の『星くず兄弟の伝説』、村上龍の『だいじょうぶマイ・フレンド』、工藤夕貴主演の『本場ぢょしこうマニュアル・初恋微熱篇』、少女隊主演の『クララ白書』、など。
ご覧のとおり、日本映画ばかりだ。

この『パイレーツ・ムービー』は、アメリカ映画にはかなり珍しいレベルの、「恥ずかしい80年代」を代表する珠玉の一本。

この映画の恥ずかしさを盛り上げているのは、80年代っぽいダサい音楽、漫画みたいなチャチな演出。

しかしそれらをすべてまるくつつみこんでいるのが、主演のクリスティ・マクニコルの可愛らしさ、初々しさである。

『パイレーツ・ムービー』のクリスティ・マクニコル

クリスティ・マクニコル(出典:imdb

クリスティ・マクニコルは80年代、ブルック・シールズやフィービー・ケイツなんかと並んでアイドル的な人気を博したアメリカの女優さん。
この映画の彼女は、私の好きな『さよならジョージア』やサミュエル・フラー監督の『ホワイト・ドッグ』の名演は超えてないものの、キュートな可愛さという点ではピカイチの魅力が出ている。

まさに単なる駄作に終わるところを、クリスティ・マクニコルのキュートな魅力がキレイに角をとりのぞき、恥ずかしい楽しさあふれる佳作へと昇華させたといえる。

けっこう軽〜い感じの映画だが、なにげに原作は、『ペンザンスの海賊』という19世紀の戯曲。
『ペンザンスの海賊』は当時でいう大衆娯楽演劇だけに、80年代の空気とよくマッチしている。

しかしそれにしても、えらく演出がショボいなあ、誰だ監督はと思って検索してみたら、なんと私の大好きな映画『長くつ下ピッピの冒険物語』(こちらは傑作)の監督ケン・アナキンだった。
まあ作風からして、見ている最中からそんな気はしてたけどね。

この監督は他にも『史上最大の作戦』やら『素晴らしきヒコーキ野郎』やら名作があり、クラシック映画の時代から活躍しているベテラン監督なのだった。

評価

映画の出来だけで評価したら星ゼロかひとつレベルだけど、クリスティ・マクニコルの可愛さと、80年代的な恥ずかしい雰囲気が楽しいので、星2つ献上。

★★★★★

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