映画『アースクエイクバード』の感想 – 丁寧に咲き誇る伏線のアダ桜

アースクエイクバード
出典:imdb
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作品データ

原題:Earthquake Bird
監督:ウォッシュ・ウェストモアランド
原作:スザンナ・ジョーンズ
脚本:ウォッシュ・ウェストモアランド
製作総指揮:リドリー・スコット
出演:アリシア・ヴィキャンデル、ライリー・キーオ、小林直己、山村憲之介
音楽:アッティカス・ロス、レオポルド・ロス
制作:2019年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

1980年代の東京。
ある日、日本に住むイギリス人女性リリーが行方不明となり、数日後に東京湾で死体となって発見された。

彼女の友人であったルーシーに容疑がかけられるが、この2人は日本人カメラマン禎司をめぐって三角関係になっていた。

『アースクエイクバード』の感想

友達が出演していると聞いて見たのだが、どんなチョイ役なんだか、けっきょく見つからず、おまけに映画じたいもつまらなかった。

最初のほう、日本語とか日本人の演出がヘンなので非常に見にくかったが(とくに警察)、それは見ていくうちに慣れたので、まあいい。
とにかくお話しがつまらない。

主役のルーシーを演じた女優さんは、どことなくヒッチコックの『レベッカ』のジョーン・フォンテインみたいで、うまく役にハマっていてよかった(そういえばジョーン・フォンテインは日本生まれだったっけ)。
ファッションが地味でかわいい。演技はちょっとクサかったけど。

それにしても、前に見た『TOKYO!』というオムニバス映画の第3話『シェイキング東京』という作品を見たときも思ったが、地震地震て、海外のアーチストが日本を描くとそればっか。
どうせ扱うなら松本人志の『R100』の「揺れてる?」あの程度のセンスは超えてほしい。

↓ここから先はネタバレあり↓

主人公ルーシーの友達リリーが死体で発見され、ルーシーが犯人として疑われる、という冒頭。
そこから回想シーンになり、ルーシーに日本人の恋人ができて、リリーがその彼氏とアヤシイ雰囲気になる。

また、ルーシーには子供の頃にトラウマがあり、それが原因らしい妄想癖がある、という情報が語られる。
ストーリーの前半で佐久間良子演ずる山本さんという音楽教室の女性が階段から落ちて死ぬのだが、この惨劇を目の当たりにしたルーシーは、衝撃のあまり幼少期のトラウマを復活させてしまったのかもしれない、という暗示がある。

おまけにルーシーが見る妄想というのが、リリーとキスしたりの、レズビアン妄想。

つまりトラウマを発動させたルーシーが、彼氏と浮気をしていると思われる親友のリリーを、リリーに対するレズ妄想も勢い手伝って、殺したのだと、観客に思わせる仕掛けになっているのだ。

もうこの時点で、オチがその通りじゃないことは確定である。

メインの登場人物は少ないし、選択肢がほとんど無いだけにこの展開はキビしい。

すべてがルーシーの主観で描かれているので、どこまでが現実で、どこからがルーシーの妄想なのかわからない作り方になっていることが、ちょっとした日本という異国で迷宮に取り込まれたような効果をもたらし、同時に日本人の彼氏の異常性をぼやかす要素になってはいる。
あまり効果的じゃなかったけど。

「ひょっとしたら犯人は彼氏じゃなくて、それもルーシーの妄想なのかも?」とでも思ってもらいたいのだろうか。
この程度の幼稚な仕掛けでそんな受け取り方してもらえるほど優しい観客もそういないんじゃないかね。

犯人が日本人の彼氏に決定した時点で、ミスリードのために丁寧にひかれた伏線が突如としてとりのこされる。
その置いてけぼりを解消するために申し訳程度に置かれたラストのドラマシーンが妙に虚しくこの映画を締めくくる。

純粋にサスペンスとしてみたらここまで低レベルのストーリーもない。
公式通りに作りすぎ。

コンセプトや映像表現の面でも特筆すべき点は無し。

評価

こういう映画を撮りたいなら、もっとわけわかんなく作ってほしい。
★★★★

Bad Movie

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