映画『バスターのバラード』コーエン兄弟が手がけたNetflixオリジナル

バスターのバラード
出典:imdb
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作品データ

原題:The Ballad of Buster Scruggs
監督:コーエン兄弟
脚本:コーエン兄弟
出演:ティム・ブレイク・ネルソン、ジェームズ・フランコ、ゾーイ・カザン、リーアム・ニーソン、トム・ウェイツ、タイン・デイリー
制作:2018年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

オムニバス西部劇。白馬のダンに乗り、歌うことが好きで無法者の陽気なガンマン、バスター・スクラッグス。銀行強盗のカウボーイ。年老いた興行師と手足がない青年ハリソン。砂金を掘る老山師。新天地を求め、オレゴンへ向かう旅の一団で、夫を亡くしたアリスと彼女を助けるビリーと親友のアーサー。フォートモーガンに向かう馬車に同席する老婦人、猟師、フランス人、アイルランド人、イギリス人の5人組。6つの異なる物語。

『バスターのバラード』の感想

コーエン兄弟監督・脚本のオムニバス西部劇。
コーエン兄弟の西部劇としては『トゥルー・グリット』に続く2作目ということになるのかな。

正直、『トゥルー・グリット』の出来には失望だった。
というのも、ジョン・ウェインのオリジナルをぜんぜん超えてないというか、並んでさえおらず、はるかに下の出来だったのである。
まあジョン・ウェインの『勇気ある追跡』は私もかなり好きな映画だから、あれ以上の出来を期待するのは酷かもしれないが、それでもコーエン兄弟なんだから、最低でもちょっと下回るだけ、ぐらいのクオリティは魅せてほしかった。

そこにきてこの映画。
これはよかった。
西部劇好きな私の琴線に、ひと味違った形でふれまくった良作だと言える。

そもそも西部劇のおもしろさとは、ストーリーはもちろんのこと、その世界観の味わいにある。
西部の街並みとか、荒野とか、拳銃とか帽子とか馬とか煙草とか、酒場での人間模様とか。

そこにきてこの『バスターのバラード』は、まさにそんな西部劇の世界観を楽しむための映画、といっても過言ではないくらい、ストーリーよりも世界観主体で作られている。

しかもその描写が独特で、馬が草を食むショットとか、銃撃の質感とか、風景の使い方とか、今までの西部劇では見たことないような感覚で撮られているのだ。

バスターのバラード

各エピソードの最初に出てくるエピグラフでもっとも痛烈だったのがこれ(画像出典:imdb

エピソードとしては最初の2つのエピソードが一番おもしろい。
こんな感じのおもしろいお話しがこの後も続いていくのかな、と思ったら大間違い。
残りのエピソードはどんよりとさせられたり、かと思ったらほのぼのしたり、悲しかったり、怖かったり。
6つのエピソードすべて、見終わったあとに異なる感情を引き出される仕掛けになっている。

よくオムニバス映画の感想で、何話と何話が好き、なんて物言いがあるが、これは全話ひと揃いでひとつの映画、という印象が強烈である。
ひとつとして同じようなエピソードはなく、6話6様の世界観と感情が体感できる。
エピソードが並んでいる順番もよく考えられていて、ひとつ前に引き出された感情を、次のエピソードでひっくり返されたり、勢いをつけられたかと思ったら、どんと落とされたり、実にうまくそれぞれのエピソードごとの対比を考慮に入れて構成されているのだ。

この映画は最初ミニシリーズとして企画され、紆余曲折あって映画になったという情報が出回ったようだが、コーエン兄弟のインタビューによるとそれは間違った情報で、この映画は最初から映画なり、ひとまとまりの作品として企画されたんだそうだ。

私としてもその方が納得がいく。
このまとまりは、一本の映画でしか考えられない。

まとまりといえば、この映画、よく考えたらどのエピソードでも最後に必ず誰かが死んでいる。
そして最後はまんま“死”がテーマのエピソード。

鮮やかな6色仕様に構成されたオムニバス映画にして、きっちりひとつのテーマに沿って作られているところがまたお見事。

コーエン兄弟の作品としては、私の大好きな『ファーゴ』や『ミラーズ・クロッシング』には遠く及ばないけれども、『トゥルー・グリット』の失望はすっかり覆い隠してくれた、満足の一作であった。

評価

やっぱり西部劇っていいね。
★★★★

Good Movie 認定

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