作品データ
総監督:庵野秀明
監督:摩砂雪、鶴巻和哉
原作:庵野秀明
脚本:庵野秀明
出演:緒方恵美、林原めぐみ、三石琴乃
音楽:鷺巣詩郎
制作:2007年、日本
あらすじ(ネタバレなし)
未曾有の大災害「セカンドインパクト」によって人口の半数が失われた。
その15年後、主人公の少年・碇シンジは3年間も会っていなかった父・ゲンドウに呼び出され、神奈川県第3新東京市へとやってくる。
ゲンドウはシンジに巨大な汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンに乗って、謎の巨大生物「使徒」と戦うことを命じるのだった。
※注:この記事は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の公開前に書かれたものです。
現在の私からみて、かなり間違った考察がなされておりますが、当時の考察過程の記録として、修正せずに残してあります。
最終的な私の結論を知りたい方は、このブログのYouTube版の再生リストから、厳選エヴァ考察動画をご覧ください。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の考察&感想
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公開にそなえて、エヴァンゲリオンを旧作からすべて見直して、完璧に理解(?)したうえで、考察する記事の第3回目。
第1回目はTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の考察。
第2回目は映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air / まごころを、君に』の考察。
そして今回からいよいよ新劇場版のレビューをしていきます。
本日は『:序』について。
そもそも新劇場版とは何なのか?
ここ数ヶ月、エヴァンゲリオンを旧作から新劇場版の『:Q』まで、何度もしつこく繰り返し見直してきて、だいたい新劇場版の物語がどんな方向に進んでいて、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』ではどんな展開が待っているのか、おぼろげながら、予想がついてきた。
そもそも新劇場版とは何なのか?
新劇場版が始まった当初、「新劇場版は、最初は旧エヴァとほとんど同じ物語から始まり、だんだん違う物語になっていって、最後は完全に違う物語になる」みたいなことがパンフレットか何かに書いてあったのを覚えている。
現在(2020年8月)までに『:序』『:破』『:Q』が公開されているが、確かに3作品を振り返ってみると、旧エヴァとくらべて
『:序』は、ほとんど同じ、
『:破』は、半分くらい同じで、半分くらい違う
そして『:Q』は、ほとんど違う、
と言った具合に、きれいなグラデを描いて物語が変化していっている。
と、言うことは、次に公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は、旧エヴァと同じ要素は一切無い。
旧エヴァを想起させるようなくだりも、シーンも、まったく無い。
完全に新しいエヴァンゲリオンが見れることになると、容易に想像できる。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の「シン」とは、旧エヴァから完全に異なる方向へいった、新しいエヴァンゲリオンが描かれる、という意味なんだとわかる。
しかし、私が考えるに『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の「シン」にはもうひとつ、重要な意味があると思うのだ。
しかしそれは『:Q』の考察でじっくり書きたいと思う。
というのも、その前に、まだいろいろと説明しなければいけない点がある。
まず第一に、この新劇場版は旧エヴァと関係があるのか、関係のないパラレルワールドのお話しなのか、という問題である。
はっきり言おう。
この新劇場版は、完全な旧エヴァの「続編」だと私は考えている。
「リメイク」ではなくて「リビルド(再構築)」の本当の意味
新劇場版は旧エヴァの続編だから、当然、旧エヴァをしっかり理解しておかないと、この新劇場版を解明するのは不可能なのだ。
この新劇場版が旧エヴァの続きだってことは、『:序』の冒頭の赤く染まった海を見たらわかる。
構図から何から何まで、旧劇場版のラストの海のショットとほぼ同じ。
これは明らかに旧完結編のサードインパクト後の世界、という記号である。
冒頭の街並みも、旧TVシリーズと比べてややボロボロになっている。
つまり新劇場版で描かれている世界とは、サードインパクトが中途半端に終わって、すべての人類にATフィールドが再生された後の出来事なのだ。
制作側の発表でも、新劇場版は「リメイク」ではなく「リビルド(再構築)」である、とちゃんと言っている。
この言葉の真の意味は明らかだ。
「リビルド(再構築)」されたのは、人類のATフィールドなのである。
だいたい、エヴァンゲリオンは説明をギリギリ最小限に抑えて謎めかしたりはするが、あまり「ひねった」ことはやらないイメージがある(どちらともとれる表現、てのはよくやるけど)。
旧劇場版のラストと同じカットを冒頭にもってきて、実は続編じゃないなんて、そういう詰まらんミスリードはやらないんじゃなかろうか。
存在してはならないものが存在する世界
さて、もし新劇場版が旧エヴァのサードインパクトの続きだとすると、存在してはならないものが2組ある。
ひとつは、「碇ユイ」。
もうひとつは「使徒」である。
なぜなら、碇ユイの魂は石化した初号機と共に、永遠に宇宙を彷徨っているはずだし、使徒はコアごとぜんぶ倒されたからだ。
まあ、碇ユイについてはネタバレになってしまうので、『:Q』の考察で改めて書きたいと思う。
さて、すべて殲滅されたはずの使徒が何故また襲ってくるのか?
その答えは簡単だ。
誰かが新たに再生させたに決まっている。
話しが横にそれるが、『:序』に関しては映像や演出の素晴らしさに関してもいろいろと言いたいことがある。
例えばクライマックスのヤシマ作戦の描写の素晴らしさ。
この時点での、アニメ史における最高レベルのアクション演出ではないかと思うほど、臨場感が頭抜けている。
しかしこの記事では、主にエヴァのテーマについての考察に的を絞って書いていきたいので、このあたりは割愛したい。
私が注目したいのは、ラストのあのお方の登場シーン。
↓ここから先はネタバレあり↓

出典:amazon
『:序』のラストが語る多くのこと
『:序』のラストでは、渚カヲルくんが早々に登場する。
カヲルくんは棺のようなものから目覚めるのだが、よく見るとその両側に、他の棺がいくつも並んでいる。
つまり、これらは他の使徒が生まれた棺なのである。
蓋が開いていたのはすでに登場した使徒のもの。
蓋が閉じている棺の中には、これから登場する使徒が入っているわけだ。
これらの使徒は、ゼーレによって再び培養された。
ゼーレのセリフに「死海文書外典」だとか「リリスとの契約」なんて言葉が出てくるが、これらが大きく関係していることは想像に難くない。
「旧エヴァ」と「新劇場版」の最大の違い
ここで、「旧エヴァ」と「新劇場版」の、もっとも重要な「違い」を指摘したい。
「旧エヴァ」と「新劇場版」が異なる最大のポイントはどこか?
それは黒幕である。
「旧エヴァ」と「新劇場版」では、そのストーリーの背後にいる黒幕が違うのだ。
旧エヴァではゼーレとゲンドウがすべての黒幕であり、リリスやアダムは利用されている立場だった。
しかし旧エヴァのラストで、ゲンドウはリリスに裏切られ、サードインパクトは失敗に終わった。
ATフィールドが再構築され、そうと知らずに同じ物語を繰り返しはじめた人間。
アダムと融合し、全知全能の神となったリリス(+アダム)が新たな世界の支配者となったのだ。
つまり新劇場版では、最初からすべての黒幕はこのリリス(+アダム)なのである。
これはちょっと考えてみたら当然のことだ。
旧エヴァで、ゼーレもゲンドウも含めて、すべての人類はATフィールドを無効化され、いったんLCLに還元された。
それに、旧エヴァのリリスにはゼーレの仮面がかぶされていたが、新劇場版のリリスには使徒の仮面がかぶされている。
これは旧エヴァではリリスはゼーレに利用されている立場だったのが、新劇場版では最初からその支配から解放されていることを意味しているのではなかろうか。
じゃあなんで使徒の仮面なのかというと、それはよくわからない。
使徒ってリリス(+アダム)が産み出したものだよね。
これはちょうど、庵野秀明さんがエヴァのコスプレしているようなものだと思えばよいのではなかろうか。
まあとにかく、けっきょく旧エヴァから継続して同じ自我を持ち続けることができたのはリリス(+アダム)だけなのだ。
おそらくリリスは「死海文書外典」という形で、新生された世界へ自分の想いを託したのではないか。
それでは、リリスが新しい世界に託した想いとは何か?
これも少し次作のネタバレになるので『:破』や『:Q』の考察で改めて書くことにする。
どうして次第に物語が変わってゆくのか
さっき私は、新劇場版は旧エヴァとくらべて、少しづつストーリーが変化していっていることに言及した。
これを私は最初、ヒトの人生には様々な選択肢があって、どの道を選ぶかで異なる人生へとシフトしてゆく、その様が描かれているのだと思っていた。
しかしそれは、どうも違うんじゃないかと思うようになってきた。
実際は人類は、黒幕であるリリスか誰かによって、意図的に違う方向へと進まされているのだ。
『:序』のラストで復活したカヲルくんは言ったではないか。
また3番目とはね。変わらないな、君は
そう、同じこと繰り返すのが人類。
だから誰かが変えるように仕向けてやらないといけない。
(ちなみに「また3番目」の意味は、「またサードチルドレン」という意味かもしれないが、私は「またサードインパクト」という意味だと思う。)
そして、そこにこそ、リリスの真の目的が隠されているのである。
(しかし、人類を異なる方向へと導いているのはリリスだけではないと私は考えている。これも『:破』『:Q』の考察で説明する)
【珍説】新劇場版そのものがATフィールドの再生過程を描いている!?
新劇場版が旧エヴァの続編だとして、ひとつ疑問に思うのは、どの時点から人類は再スタートしたのか、ということだ。
旧エヴァの冒頭にあった「西暦2015年」のテロップが、『:序』の冒頭では無くなっているところを見ても、そこはハッキリと明記できない裏設定があるに違いない。
まさか旧劇場版のラストのシンジくんとアスカがアダムとイヴになって、何千年もの長い人類の歴史を経て現在の状況に至ったというわけではなかろう。
ひょっとしたら、セカンドインパクトの時点かもしれない。
つまり新劇場版で再生された人類たちは、旧劇場版のサードインパクトの被害状況を、セカンドインパクトのものだと誤認識をしている、という解釈だ。
それはそれで正しい解釈だと思う。
しかし、こう考えてもいいのではなかろうか。
この新劇場版は、旧エヴァのサードインパクトが失敗に終わった後の、人類のATフィールドが次第に形成されてゆく過程そのものが描かれているということなのではないか、と。
つまりATフィールドが形成された時点にはハッキリとした境目がなく、新しい世界が少しづつ実態を伴ってきた、ということなのではなかろうか。
旧エヴァと違う部分は100%、ATフィールドが再形成されてから新たに起こっている出来事。
同じ部分は旧エヴァからサルベージされた記憶もまじっている。
そう考えると『:序』と『:破』は、ちょっと違った見え方になってくるかもしれない。
渚カヲルくんの言う「概括の段階」とは?
ひとつわからないのは、ラストで渚カヲルくんの言う「概括の段階」とは何なのか、ということだ。
シンジくんがネルフにやってきて、エヴァンゲリオンのパイロットになり、使徒を倒しはじめた。
このことを言っているのだということはだいたい想像できる。
これが何故、「概括」という言葉で言い表されているのか。
「概括」を辞書で調べてみると、こんな定義が載っている。
がいかつ【概括】・・・さまざまな点にわたる内容を、主な所に目をつけて、まとめること。
この定義をみて、ふと、こんなふうに思った。
「さまざまな点」とは「使徒」のこと。
「主な点に目をつけて、まとめる」とは「使徒をひとつひとつ倒してゆくこと」
そういえば前回の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』の考察で、ヤシマ作戦も、シンジとアスカの連携攻撃も、シンジくんが初号機に取り込まれて融解してしまったのも、すべてシンジくんが何度も同じことを繰り返しながらも前に進んでゆくためのアプローチだったのではないか、と書いた。
やはり今回の新劇場版でも、シンジくんはこうして無理やり初号機に乗せられ、歯を食いしばって使徒を倒してゆくうちに、何かの結論に向かっているのではないか、と思う。
それが何かは、じっくり今後の展開を見守ってゆきたいと思う。
まとめ
肝心なことはどうしても『:破』や『:Q』のネタバレになってしまうので、今回の記事は奥歯にモノが挟まったような内容になってしまったが、とりあえずまとめ。
本日の記事ではこれらのことを提示した。
- 『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の「シン」は、旧エヴァを想起させるようなシーンやくだりは一切ない、完全に新しいエヴァンゲリオンが描かれる、という意味が含まれている
- 新劇場版は旧エヴァの完全な続編である
- 新劇場版の黒幕はリリス(+アダム)である
- 使徒はリリス(+アダム)の指示のもとゼーレが新たに再生させた
- 新劇場版の物語が旧エヴァとだんだん違う方向へ進んでいるのは、何者かが意図的にそう仕向けているから
- 新劇場版のキャラクターたちは、旧エヴァのラストのサードインパクトの被害状況を、セカンドインパクトのものと誤認識している説
- 『:破』『:Q』は人類のATフィールドが再構築される過程が描かれている説
- カヲルくんの言う「概括」とは、エヴァに乗ったシンジくんが使徒と戦うプロセスを指している
そして次稿以降で語る予定の課題
- 『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の「シン」の、もうひとつの重要な意味
- 新劇場版におけるユイの存在とは?
- リリス(+アダム)の真の目的とは?
本記事のYouTubeバージョン
本日の記事のYouTube版はこちらです。
以下は、ラストの渚カヲル君のセリフ「また3番目とはね。変わらないな、君は」の意味について解説したYouTube動画です。
以下は、冒頭の綾波レイの幻影について解説した動画です。
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評価
新たなエヴァ・シリーズの幕開けを飾るに相応しい素晴らしい作品。
★★★★★
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