映画『ブレックファスト・クラブ』ジョン・ヒューズがくれた永遠の青春

ブレックファスト・クラブ
出典:imdb
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作品データ

原題:The Breakfast Club
監督:ジョン・ヒューズ
脚本:ジョン・ヒューズ
出演:エミリオ・エステベス、モリー・リングウォルド、アリー・シーディ、アンソニー・マイケル・ホール、ジャド・ネルソン
制作:1985年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

異なるタイプの高校生、ガリ勉、スポーツ馬鹿、不思議ちゃん、お姫様、チンピラの5人が、休日に補習で呼び出され、図書館で「自分とは何か」をテーマにした作文を書かされる。5人は作文そっちのけで交流をはじめる。

『ブレックファスト・クラブ』の感想

青春映画のスピルバーグとかいって80年代を一世風靡したジョン・ヒューズ。
しかし当時の私はホラー映画ばかり見ていて、ジョン・ヒューズの名作をほとんど見ないで大人になった。

そういうわけで、今頃になって初めてこの『ブレックファスト・クラブ』を見てみた。
現在でもカルト青春映画として根強い人気をはくしている名作だが、なるほど。
想像をはるかに上回る素晴らしさだった。

保存されたこの時代の空気感の味わいも含めて、いま見ても、とてもいい。
とくに私はまさにここに出ている人たちとほぼ同時期に青春時代をすごした人間だから、まるでタイムスリップして高校から海外留学した別の人生を体験したみたいな感覚を味わった。
(私は大学からアメリカに留学したのだ)

ストーリーはなんてことない。土曜の補習(Saturday detention)に集まった若者たち、ナレーションの表現を借りると「ガリ勉(a brain)」「スポーツ馬鹿(an athlete)」「不思議ちゃん(a basket case)」「お姫様(a princess)」「チンピラ(a criminal)」の5人が、1日そこでダラダラするお話し。

大きな事件は起こりそうで、起こったようで、とくに何も起こらない。。
しかし若者たちの心のなかには間違いなく何か大きな変化があり、大きな何かが生まれている。
それがダラッとした1日の補習の人間模様の中に表現されている。
この“ダラダラ”したところがこの映画の魅力。

ブレックファスト・クラブ

ダラダラ中のキャラクターたち(出典:imdb

暇をもてあましてバッグの中身を見せ合うとかダラダラもいいとこ。
学校の補習の最中にマリファナ吸うとか、ありえないだらけっぷり。
見ているこっちもこいつらと一緒にダラダラしている気になってくる。

笑ったのは昼食シーンで、お姫様が寿司を食べてるかと思ったら、不思議ちゃんは机にこぼれたコーラの炭酸を口つけてズルズルすすり、サンドイッチのハムをアートのオブジェにペタッと貼り付け(お肉、キライなのね)、代わりに食パンにスティックシュガーとシリアルを挟んでボリボリと食っている。
当時の大人の感性で“新人類”を創出したってことなんだろうけど、いいセンスしている。

まあそんな風にダラダラと過ごしながら、まったくタイプの違う5人の若者たちが、心を通わせ、友情みたいなものを育み、それをまた冗談で濁したり、またダラダラが始まったりして、時はただ過ぎてゆく。
つまらないことで笑いあってるかと思ったら、つまらないことで喧嘩をはじめたり。
若いってそういうことなんだなあ、なんて自分のなかで禁句にしていた言葉が思わず口をついて漏れ出てきた。
気持ちの上では私はまだ若いつもりでいるのだ。

でもまあいいや、この映画の感想を書くあいだだけ、年相応の視点をチラつかせてもらう。
じゃないとこの映画は語れない。

なんでかって、この映画を観終わって、若いうちに見ておけばよかったなあ、なんて後悔をカケラも感じなかったんだよな。
この歳になって見てよかったな、と思っている自分がいるのだ。

若い頃って、何気なく学校の帰りに友だちと話した会話とかがいつまでも心に残って、それがなんだか大事だったりして、ようするに私みたいな世代がこの映画を見るって、そんなことの疑似体験なんだよな。
そういうのが当たり前だった時期では意識できようもない感慨なのだ。

「大人になると、心が死ぬの(When you grow up, your heart dies)」なんてセリフがあったが、こんな“痛み”を感じることができた時代が懐かしく、なんだか泣けてくる。
地味な映画なのに最初から最後まで涙が出たり声を出して笑ったり、けっこう私の心は激しく揺れ動いた。

ブレックファスト・クラブ

モリー・リングウォルド演ずる“お姫さま”(出典:imdb

キャストでは不思議ちゃんを演じたアリー・シーディの存在感がよかった。
モリー・リングウォルドの、看板は“お姫様”だけど、けっこう自然な普通っぽさがまたよかった。

しかしこの映画、リアルタイムで見ていたら私はどんな感想をもっていたんだろう。
そういえば、相米慎二の『台風クラブ(ちょっとこの映画と似ているね)』を高校のときに見てぜんぜんわからなくて、最近改めて見直したらとてもよかったことを思い出した。
きっと『台風クラブ』と同じように、あの頃の私はわからなかったんじゃないかな。

評価

この映画がある限り、世界の青春はおわらない。
★★★★★

Good Movie 認定


『ブレックファスト・クラブ (字幕版)』を見る

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