インド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』の感想 – 生理用ナプキンから始まる究極の愛のドラマ

パッドマン 5億人の女性を救った男
出典:imdb
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作品データ

原題:Pad Man
監督:R・バールキ
原作:トゥインクル・カンナー
脚本:R・バールキ
出演:アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー、アミターブ・バッチャン
音楽:アミット・トリヴェディ
制作:2018年、インド

あらすじ(ネタバレなし)

主人公のラクシュミはインドの田舎に奥さんと住んでいる。
ある日、ラクシュミは女性が生理にボロ切れなどを使っていて、不衛生で病気になったり時には死んだりするリスクを日常で抱えていることを知る。
ラクシュミは奥さんを守るため、生理用ナプキンを自作することを思いつく。
しかし女性の生理に対する意識の低い村人たちからの風当たりは強く……。

『パッドマン 5億人の女性を救った男』の感想

アクシャイ・クマールはたまに演技がクサいことがあって、あまり好きな俳優じゃないのだが、評判がいいので見てみた。

これが面白いのなんの。

生理用ナプキンに敗北感を味わった件

主人公のラクシュミはインドの田舎に奥さんと住むスーパーDIY男。

ある日、彼は女性が生理にボロ切れなどを使っていて、不衛生で病気になったり時には死んだりするリスクを日常で抱えていることを知り、自分の奥さんが女性というだけでそんな危険と隣り合わせの人生を送っているなんて大変だと、奥さんのために生理用ナプキンを自作し始める。

しかしインドの田舎の生理に対する認識の遅れは甚だしく、何度も試作を重ねているうち、奥さんは次第に嫌がるようになる。
仕方なくラクシュミは他の身内の女性に声をかけはじめるが、彼の努力は理解されず、挙げ句の果てに自作した生理用ナプキンを自分で試したりして変態扱いされてしまう。

個人的な話しだが、私が昔、痔を酷く病んだ時、生理用ナプキンをして生活していたことがあるが、私より先に生理用ナプキンをした男がいたとは思わなかった。

パッドマン 5億人の女性を救った男

何気に究極の愛のドラマである(出典:amazon

悪役不在のストーリーに浮かび上がる究極の愛のドラマ

そんなこんなでラクシュミは、しまいに町中から爪弾きにされてしまう。

町の人たちは、女性の生理をあくまでも穢れとして認識し、取り返しのつかない感染のリスクを受け入れてでも、不浄は不浄として最新の医学に基づいた対応に目を向けようとしない。

個人的には、これはこれで文化だと思うし、信心深いことは悪いことじゃない。
だからラクシュミの革新的な考えを理解しない周囲は必ずしも責められたものではない。

とはいえ、そんな古い考えに凝り固まった周囲の猛烈な反発にも負けず、あくまでも生理用ナプキンを普及させようと奮闘するラクシュミの思いの根底には、奥さんへの愛があるのだ。

この悪者のいない状況の中、とにかく奥さんを守りたい、そのラクシュミの一心が泣かせるのである。

そう、これは生理用ナプキンを介した究極の愛のドラマなのだ。

「生理用品を作りたいんです」
「だって君は男じゃないか」
「女性を守らないで、男とは言えません」

この会話なんて本当にシビれる。

こんなエキサイティングで面白いお話しがすべて実話という驚異

さて、この映画で描かれたラクシュミは実在の人物がモデルだというが、この映画に描かれた出来事はどこまでが事実で、どこまでが創作なのか。

興味が出てきてwikipediaを読んでみた。

実際の人物の名前はアルナーチャラム・ムルガナンダム。
映画はヒンディー映画だが、ムルガナンダムさんはタミル地方の人。

映画では女性が生理用用品がわりにボロ切れを使っている様が描かれていたが、実際にはそれ以外にも古新聞などまで使っていた人がいたそうだ。

↓ここから先はネタバレあり↓

パッドマン 5億人の女性を救った男

出典:amazon

その後、ムルガナンダムさんが生理用ナプキン製造機を開発するまでの流れはだいたい映画と同じで、映画の中では正確な期間は表現されていなかったが、生理用ナプキンに使用されていた素材は綿ではなく、実はセルロース繊維が使われていることに気がつくまで2年もの歳月を擁していたのだそうだ。

そんな長い歳月と苦労の末に、普通なら5千万円くらいかかる生理用ナプキン製造機を、たった10万円以下で自作することに成功。
彼の製造した生理用ナプキン製造機はさまざまな賞を受賞し、企業から事業化の打診があったが、彼はそのすべてを拒否し、各地域の共同体の女性たちによって結成された自助グループに機械を提供し続けた。

彼の作った生理用ナプキン製造機の普及によって、女性の感染リスクがなくなったばかりでなく、女性が社会に出て活躍する機会も広がった。

現在、彼は世界各国の大学などで講演活動なども行なっている。

つまりこの映画と完全に同じなのだ。

ムルガナンダムさんの功績もスゴいが、現実にあったことをここまで見事なストーリーテリングの技術で「映画」にしたスタッフの才能もスゴい。

キャストと原作について

キャストについて。

主演のアクシェイ・クマールの起用はムルガナンダムさん自身の提案とのこと。

ストーリー的にはいらないけど、エンターテイメントとしては楽しいオマケのヒロインを演じているのは、アニル・カプールの娘、ソーナム・カプール。

ラクシュミの奥さん役を演じるのは『GHOUL/グール』というインド製ホラー・ドラマに主演していたラーディカー・アープテー。

あと、大御所アミタブ・バッチャンがゲスト出演している。

原作について。

この映画のストーリーはアクシェイ・クマールの奥さんで作家兼女優さんでもあるトゥインクル・カンナの描いた短編小説が原作になっているそうな。

評価

ムルガナンダムさんの功績と、それを見事な映画にしたスタッフの才能に文句なしの満点評価。
★★★★★

Good Movie 認定


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