作品データ
原題:功夫
監督:チャウ・シンチー
脚本:チャウ・シンチー、ツァン・カンチョン、ローラ・フオ、チャン・マンキョン
出演:チャウ・シンチー、ラム・ジーチョン、ユン・ワー、ユン・チウ、ドン・ジーホワ、チウ・チーリン、シン・ユー、チャン・クォックワン、ラム・シュー、ティン・カイマン、ホアン・シェンイー
音楽:レイモンド・ウォン
制作:2004年、香港
あらすじ(ネタバレなし)
1930年代の上海は、ライバルを殺戮してのし上がってきた暴力組織・斧頭会(ふとうかい)が牛耳っていた。
一方、「豚小屋砦」と呼ばれる貧困地区に「俺たちは斧頭会だ!」と入り込んできた2人の男、シンとその相棒。
実はその2人、斧頭会の名をかたる単なるチンピラだった。
シンたちは逆に住人達にボコボコにされ、苦し紛れに投げた爆竹で、偶然にも通りかかった本当の斧頭会の幹部に怪我をさせてしまう。
怒った斧頭会の幹部を、豚小屋砦に住んでいたカンフーの達人が撃退する。
斧頭会と豚小屋砦との抗争は奇想天外なカンフーの達人たちによるめくるめくカンフー・バトルの連闘へと発展してゆく。
そしてシンの眠っていた能力も目覚めつつあった。
『カンフーハッスル』の感想
Netflixで鑑賞。
映画館で見て以来、16年ぶり。
大ヒット映画『少林サッカー』で一気に知名度が上がったチャウ・シンチーが、満を持して次回作として送り込んだ超話題作がこの映画である。
ところが私はこの映画、映画館で見たときはぜんぜん笑えなかったし、面白くなかった。
しかし今回、改めてNetflixで見直してみて、やっとこの映画のやりたいことがわかったのだ。
『少林サッカー』は、日本の荒唐無稽なスポーツ漫画の世界観を実写で表現したコメディだった。
つまりこの『カンフーハッスル』は、『少林サッカー』がウケたので、今度はさらにど真ん中を狙って、日本の荒唐無稽な格闘技マンガの動きを実写でやろうとしたものなのだ。
映画館で見たときはあまりにもCGがヘタでわからず、「なんだこりゃ」としか思わなかったよ。
PCモニタの小さな画面で見たら、なるほど、そういうことか。
映画館ではぜんぜん笑えなかったシーンの数々が、PCモニタのサイズではきっちり笑える。
もともとチャウ・シンチーの映画って、昔から妙な不安定感があって、見るときの状態によって笑えたり笑えなかったりすることがあった。
そりゃあ、映画館のスクリーンとPCモニタの大きさの違いに印象が左右されるなんてこともあるだろう。
あと、当時、映画館で見たときは、その直前に予告編を見ていて、不当にもクライマックスのオチの映像を前もって見せられていたこともあったように思う。
なんでオチを予告編で見せるのか。
映画会社はバカじゃ無いかと思うことがよくある。
『菊次郎の夏』『ジャッキー・ブラウン』などなど、オチかそれに近い部分を予告編で事前に見せられて、大変な損害を被った経験は一度や二度じゃない。
あれから16年経って、いい感じに内容を忘れていたことが今回いい感じに功を奏した。
当時は欠点だと思ったヒロインの存在感の薄さも、改めて前向きに見てみるとこれはこれで、大袈裟なカンフー・バトルに焦点を当てたストーリー構成に、詩的に折り込まれた美しい伏線としてバランスよく映画の器におさまっているように感じられた。
ヒロインとのロマンスだけでなく、全体的にストーリーがあまり無いような印象になっているのも、当時は気が付かなかったが、これは意図的なことなのだ。
つまりは日本のバトル漫画の、ひたすら強いやつらが戦うシーンが折り重なってゆく、あの定番の構成をパロディ的に模した作りになっているのである。
アクションの無茶苦茶さも、日本の漫画で強いヤツがこぶしでコンクリートを粉々にしたり、ジャンプして天高く舞い上がったり、ああいったノリをギャグに応用したもので、CGの下手さがなかなかそれを伝わり難くしてしまっているが、チャウ・シンチーのセンスだけで言ったら間違いなく素晴らしいものが活きていた。
香港映画にはワイヤーを使った奇想天外なアクション映画の流れがもともとあるので、そちらの文脈でも見れてしまうところも逆にこの映画のコンセプトをわかりにくくしてしまっている原因と言えるかもしれない。
というわけで、やはり、チャウ・シンチーの他の傑作群と比べたらイマイチの部類だけど、それでもかなり面白い。
そこらへんに転がってるクソなコメディ・アクションよりは百倍おもしろい。
評価
映画館で見た時は星1つだったが、改めてNetflixで見てみてこの評価。
★★★★★
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