ドキュメンタリー『テラ 〜母なる地球〜』ヴァネッサ・パラディ礼賛

テラ 〜母なる地球〜
出典:imdb
この記事は約3分で読めます。

作品データ

原題:Terra
監督:ヤン・アルテュス=ベルトラン、マイケル・ピティオ
脚本:マイケル・ピティオ
出演:ヴァネッサ・パラディ(ナレーション)
制作:2015年、フランス(TV映画)

あらすじ(ネタバレなし)

人類と自然界の隔絶が進むなか、地球に生息する様々な生き物と人間の関係を、美しく鮮明な映像を通して問いかけるドキュメンタリー。

『テラ 〜母なる地球〜』の感想

壮大な自然の歴史と、人間の文明との関わりを描いたドキュメンタリー映画。
ストレートな作りだが、映像が美しく、ナレーションがよくて、惹き込まれる。

ナレーションをやっているのはフランスの歌姫ヴァネッサ・パラディ。
私は歌手としてヴァネッサ・パラディの30年来のファンだが、歌手活動は抜きにしても、彼女の声はとてもいい。
とても落ち着いて何かを訴えかけるような魅力がある。

そんな説得力のあるお声で語られるのは、自然がどれだけパワフルな創造性を発揮して地球を形作ってきたか、そしてその美しい自然を人間がどれだけ我が物顔で蹂躙し、形を変えてしまったのか、ということ。

その「蹂躙」の部分が美しい大自然の映像の合間にアクセントみたいな分量で挿入される。
そのバランスがなんだか妙に心に刺さるのだ。

それにナレーションの文章そのものがとてもいい。
ヴァネッサ・パラディの不思議な声と相まって、なんだかいつまでも聞いていたい気持ちにさせられる。
しかしその内容は深刻だ。

語り手の「私」は一個人ではなく、人類全体の集団意識としての人格をあらわしていたように思えた。
その点で、大都会のネオンに大自然の光景が映し出されるオープニングは象徴的である。

↓ここから先はネタバレあり↓

そして最後、このままでは人類の意識の産物である文明に、人類そのものが無意識のうちに絡めとられ、蹂躙されるであろう、という警告でこの映画は終わる。

文明は人間の欲望と経済システムを動力にひとり歩きをはじめたのだ。

そして人間自体は本来、生物学的には自然の一部なのである。

人間はもともと森の住人だった。
人間は森から離れ、文明を築くことにより、野生を失った。

この映画は“野生”を「森を守ること」と定義している。
これはフランス語の「sauvage(野生)」という言葉の語源がラテン語の「森(silva)」からきていること、また「守る」を意味するフランス語「sauver(英語の save と同源)」と綴りが似ていることを言っているんだと思う。

このことを踏まえて、この地球そのものを、人類にとっての“森”だと考えよう、われわれ人類にとっての森である地球を守っていこう、とこの映画は訴えているのだ。

学校の授業でも上映すべき、よいドキュメンタリー作品だった。

評価

たまにはこんな直球のドキュメンタリー作品も悪くない。サンキュー、ヴァネッサ。
★★★★

Good Movie 認定

コメント

タイトルとURLをコピーしました