作品データ
原題:Ghoul
監督:パトリック・グレアム
脚本:パトリック・グレアム
出演:ラディカ・アプテ、マナフ・カウル、ラトナバリ・バッタチャルジー
制作:2018年、インド
あらすじ(ネタバレなし)
新米尋問官ニーダは、とある極秘拘置所に配属される。
しかしその収容所に拘置されているテロリストの中には、この世ならざる存在“グール”が紛れ込んでいた。
やがて収容所の職員たちは、ひとりひとり、自らの過去を暴かれ、恐怖のどん底へと突き落とされてゆくのだった。
『GHOUL/グール』の感想
インドのドラマなんて初めて。
しかもスタンダードなインド映画の要素はカケラもない。
普通のホラー・サスペンスもので、スタイルだけいったらインドというよりアメリカか、東南アジアの作品っぽい。
やたら暗い雰囲気で、映像も重々しく、なんだか見ていて息が詰まりそう。
全3話だからさくっと見れるかと思ったが、見はじめて「この調子でずっと見続けるのはかなりキツいものがあるなあ」とちょっと不安になった。
いやしかし、なかなかどうして、シンプルなストーリーながら引き込まれる展開で、よく出来ていた。
じわじわと核心に近づいてゆきつつ、クライマックスで一気に驚愕の事実が畳み掛けてくる構成もなかなか。
ホラー描写も最初は雰囲気重視で、後半になるにつれちゃんと段階を踏んで激しくなってくる。
それでいて派手なスプラッターじゃないから、あまり作為を感じさせず、自然に見ていられた。
モンスターとなるグールの“仕様”がなかなかおもしろくて、さらにその仕様をうまく使ったビックリがクライマックスにあり、単なる定型ホラーにとどまらないアイデア精神があった。
それにしても、バケモノの登場をここまで後半にもってきて、そこまでの展開を飽きさせずに見せるってなかなか出来るもんじゃない。
他のホラー・サスペンス系の作品で、途中は淡々とさせて最後だけかなり派手な花火を打ち上げるメリハリ系の構成もよく使われる手だが(このケースは多少前半退屈させても最後に解消されるからそれほどアダにならない)、このドラマはそれもやってない。
前半はちゃんとストーリー展開でひっぱり、後半は必要な分量の殺戮で堅実に締める。
しっかりとしたストーリーテリングの実力がないとこうはできないもんだ。
インドの映像作品というと歌あり笑いあり恋ありアクションありの楽しいインド映画ばかり見てきたが、こんなタイプの作品をうまく作れるアーチストもいるのだな。
だいたいこんな見ていて気が滅入るような雰囲気で、飽きずに最後まで見通せる作品になっているところが大したものである。
制作者を調べてみると、脚本・監督はパトリック・グレアムという人で、インド系イギリス人の方だそうだ。
やっぱり純粋なインド育ちのアーチストじゃなかった。
そしてこの作品がメジャーデビューとのこと。
期待の新人とまではいかないが、普通にいい仕事でした。
評価
ホラーものには珍しく、じっくり観れる歯ごたえのある力作。
★★★★★
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