映画『エル ELLE』の感想 – 足りん

エル ELLE
出典:imdb
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作品データ

原題:Elle
監督:ポール・バーホーベン
原作:フィリップ・ジャン
脚本:デヴィッド・バーク
出演:イザベル・ユペール、クリスチャン・ベルケル、アンヌ・コンシニ、ロラン・ラフィット
音楽:アン・ダッドリー
制作:2016年、フランス

あらすじ(ネタバレなし)

ミシェルはレイプされるが、警察にも届けず、何事もなかったように日常を送る。
そのうち、ミシェルはレイプ犯が自分の知り合いらしいとわかり、犯人を自ら探しだす。

『エル ELLE』の感想

イザベル・ユペール主演のフランス映画。
なのに、なんと監督がオランダのポール・バーホーベン。

ポール・バーホーベンというと、私の世代ではハリウッドの娯楽映画の監督として80年代に一世を風靡した人、というイメージが強い。
思い起こせば、80年代はロシアのコンチャロフスキーとか、ヨーロッパ出身のアート系の監督がハリウッドに招かれてひと味違った娯楽映画を産み出すような現象がちらほらあった。
かのフェリーニだって、『キングコング』を監督する企画があったくらいだ(実現はしなかった)。

そんなバーホーベンが、長らくの低空飛行の期間を経て、近年またヨーロッパに戻り、次第に復活(?)の兆しを見せてきている。
もともとヨーロッパの監督なんだし、あるべきところに帰ってきたって感じ。

この作品は女性を主演にした禁断の香りただようサスペンスで、ちょうど『氷の微笑』を思わせるテーマ。

『エル ELLE』のポール・バーホーベンとイザベル・ユペール

ポール・バーホーベンとイザベル・ユペール(出典:imdb

レイプされた女性が、レイプされた後、淡々と後片付けをして、警察にも届けず、ただいつものような日常に戻る。
次第にレイプ犯は自分の知り合いだという確信を強めてゆき、彼女は犯人を自ら探しはじめる。
彼女の父親は連続殺人犯で、彼女自身も父に虐待されていた過去がある。

男性への愛憎と、彼女のうちに潜む暴力性、そして異端な欲望。
私は男だからわからんことだが、わからんながらも、あえて彼女の身になって考えてみると、確かにこんなトラウマ体験を持った、複雑なメンタリティーを持つ人間が、性犯罪にあって、警察まかせにすることほどクソつまらない身のふり方は無いように思える。

おぞましい体験でもそれは刺激であったし、そんな刺激に慣らされた感性には、刺激的な受け止め方しか出来なかったのかもしれない。

それに合わせて、まわりの人間たちも、妙に歪んだ背景をもつ人たちばかり。

これだけ歪な感性を多種多様に描きながら、すべてがきれいなパズルのピースとして当てはまるようなストーリー構成がなんともいえず、私には物足りなかった。

オチも含めて、この内容ならもっとおもしろくなってもよかったんじゃないかなあ。

評価

評論家には評価が高かったらしいけど。
★★★★★

コメント

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