映画『シンクロナイズドモンスター』の感想 – 勝手スピンオフになりそこなった普通のコメディ

シンクロナイズドモンスター
出典:imdb
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作品データ

原題:Colossal
監督:ナチョ・ビガロンド
脚本:ナチョ・ビガロンド
出演:アン・ハサウェイ、ジェイソン・サダイキス
音楽:ベアー・マクレアリー
制作:2016年、カナダ・スペイン

あらすじ(ネタバレなし)

アル中のグロリアは、度重なる暴挙が原因で恋人にフラれ、同棲していたニューヨークのアパートを追い出されてニューハンプシャー州の実家に帰ってきた。
そこで幼馴染のオスカーと再会。
グロリアはオスカーが経営しているバーで働き始める。
しかしグロリアのアル中は酷くなる一方。

そんなある日、韓国のソウルで巨大怪獣が出現して暴れ回るという事件が発生した。

『シンクロナイズドモンスター』の感想

これはアメリカでの予告編を見た時からずっと見たいと思っていた。

原題は『COLOSSAL』。
「巨大な」という意味だが、「(彫刻が)等身大の2倍の」という意味もある。
(ストーリー上での登場人物たちの心の推移を追ってゆくと、この原題はちょっと深いかもしれない)

そんな感じで日本公開を楽しみに待っていたら、なんと邦題が『シンクロナイズドモンスター』などというクソタイトル。
おまけに、かなり評判が悪いときた。

おかげで見る前はちょっと不安だったのだが、いや、これはこれで、そこそこ面白かった。
もっとヘンな映画を期待してたのだが、蓋を開けてみたらわりとマトモな映画というか、限りなく普通のコメディだった。

アン・ハサウェイがあちらのトーク番組で「わたしはずっと、こういう『マルコヴィッチの穴』みたいな、ちょっとヘンな映画に出たいと思っていたの。だから願いが叶って嬉しいわ」とコメントしていたのだが、残念ながら、チャーリー・カウフマンの境地にはかなりほど遠い。

私は個人的にこういう、怪獣が出てくるけど怪獣映画じゃない、みたいなタイプの作品が好きだ。
例えばロボットものなのにほとんどロボットが出てこず、人間ドラマがメインのアニメ『パトレイバー』とか。
だからジャンル的にはかなり好きなのだ。

ただこの映画が致命的なのは、人間ドラマの部分がありきたりなこと。
『パトレイバー』にしろ『機動戦士ガンダム』にしろ、このてのタイプの作品は、人間ドラマの部分だけ抜き出してもいっぱしの大河ドラマとして成立するくらいまでドラマ部分を作り込まないと、成功するはずがない。

しかしまあ、コメディとして普通に笑えるし、飽きずには見れた。

↓ここから先はネタバレあり↓

シンクロナイズドモンスター

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一番おもしろかったのは、怪獣とのシンクロに気がついた主人公が、韓国人に訳してもらって

I’m sorry, it was a mistake, it won’t happen again.
(ごめんなさい。悪気はなかったの。もうしません)

と地面に指で書くところ。

人が何人も死んだのに、このカジュアルな謝罪文は流石に笑うしかない。

グロリアとオスカーが喧嘩している時に、シンクロしている怪獣とロボットをネット中継で見て歓声をあげている近所の人たちの声が聞こえてくるところもそこそこ可笑しかった。

怪獣が出てくるのが何で日本じゃなくて韓国なのかというと、この映画は企画段階でゴジラの画像を無断で使用してしまったため、東宝に起訴を起こされたことが原因ではないかと一説に言われている。
しかしゴジラの画像を使用したからと言って、何で企画書が流出した段階で起訴を起こされるのか不思議だ。

この映画の最初の発想の出発点は、「この世で最も安っぽいゴジラ映画」というものだったんだそうだ。

そういうことなら、やはり正しい手続きを踏んで、なんとか東宝を説得して、怪獣のシーンはちゃんとしたゴジラを日本に登場させるべきだったんじゃないかなあ、と思う。

日本の生粋のゴジラ映画の「勝手スピンオフ」的な作品として作ったら、かなり斬新なアプローチと評価できる仕上がりになったんじゃなかろうか。

評価

イマイチではあるけれど、飽きずに最後まで見れたし、そこそこ笑えたので。
★★★★★

Good Movie 認定


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