映画『ババドック 暗闇の魔物』すべての境界線を曖昧にする巧みな演出

ババドック 暗闇の魔物
出典:imdb
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作品データ

原題:The Babadook
監督:ジェニファー・ケント
脚本:ジェニファー・ケント
出演:エシー・デイビス、ノア・ワイズマン
制作:2014年、オーストラリア

あらすじ(ネタバレなし)

夫を事故で亡くしたシングルマザーのアメリアは、学校で問題ばかり起こす息子サミュエルに悩まされていた。ある晩、サミュエルが絵本を持ってきて読んでほしいとせがむ。それは「ババドック」というタイトルの不気味な絵本で、物語は途中で終わっていた。アメリアは気味悪くなって、絵本を破り捨てる。しかし捨てたはずの絵本がいつの間にか戻ってきてしまう。それ以来、彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起きるようになり……。

『ババドック 暗闇の魔物』の感想

ホラー映画なのだが、最初はホラー映画なのか、なんなのか、という印象ではじまる。
ひたすら不気味で、何が起こっているのかよくわからない。
すべての境界線が曖昧なのだ。

どこからが現実に起こっていることで、どこからが幻想なのか、この手の、昔でいうクローネンバーグの『ビデオドローム』みたいな映画としては、境界線の曖昧さが多重構造になっている。

つまりオカシクなっているのは息子なのか、お母さんなのか、それとも実際にオカシナことが起きているのか、よくわからないのだ。

この境界線の曖昧さは映画そのものの印象にまで波及しているとも言える。
だから自分がいま見ている映画が「ホラー映画なのこれ?」という印象に陥るのだ。

しかしこの曖昧さも、クライマックスになるにつれて、完全なホラー映画となり、そして終わってみれば、至って単純な設定の典型的なホラー映画なのだとわかる。
この、ジャンルの境目さえ見失わせる切り口のうまさ、斬新じゃないか。

はっきしいって始まって半分以上は見ていて不快以外のなにものでもなかったが、クライマックスですべて解消されたから、印象はよくなった。
いやむしろ、また見たい。
逆に前半の不快さはこのカタルシスのためにあったのかもしれない。

↓ここから先はネタバレあり↓

これだけよく出来た映画だから、ラストは決してホラー映画のクリシェはないだろうと思ったが、やはりこの映画は一枚上手だった。

魔物は倒されず、飼い慣らされる。
子供は子供らしからぬマジックを披露し、平和の象徴であるハトが出てくる。
“魔”の力を飼いならし、その負の力を正に向かわせているように見える。

しかし不安は残る。
やはり完全には開放してくれないのだ。

監督はジェニファー・ケントという、これがデビュー作の女性監督。
なんとあのラース・フォン・トリアーの弟子だそうだ。

手法も斬新だし、キャスティングも上手。
これからが期待の新人監督ですな。

評価

ホラー映画はあまり好きでは無いのだが、こんなホラー映画ならもっと見てみたい。
★★★★

Good Movie 認定


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