作品データ
原題:Cooked with Cannabis
監督:リク・ラインホルトセン
出演:ケリス、レザー・ストーズ、エル・キング、マイケル・ラパポート
制作:2020年、アメリカ
あらすじ(ネタバレなし)
毎回マリファナ料理人が大麻を使った料理を作ってそのクオリティを競い合う。
『マリファナ・クッキングバトル』の感想
3人の大麻シェフがマリファナ入り料理を3品作り、大麻料理の腕を競い合う。
それを毎回違う特別ゲスト審査員が司会者ふたりと話し合い、優勝者一人を決める。
優勝賞金は1万ドル。
そんな感じのシンプルなお料理コンテストもの。
しかし、私はマリファナ関係の映像作品をよく見るな。
このブログで取り上げるのも、ドキュメンタリー映画『スーパー・ハイ・ミー』と、バラエティ番組『クッキング・ハイ マリファナ料理対決』に続いてこれで3度目だ。
誤解されないように最初に断っておくが、私はマリファナなどやらないし、やったこともないし、これからの人生、機会があってもやるつもりもない。
ただ学生時代にホラー映画が好きで、ルチオ・フルチの映画批評を書いていた青山正明先生の文章をよく読んでいた影響で、ドラッグ・カルチャーというものに多少なりとも興味があるだけなのだ(氏の『危ない薬』は名著)。
それに、マリファナのような酒やタバコと比べて害が少なく、砂糖やジャンク・フードと比べて依存性の低いようなものを、違法にしておく必然性などまったく感じないし、むしろ医療用としてはかなり有益なもなのだと思うので、このような番組が日本で堂々と日本語字幕付きで配信されることは、その存在自体でくだらない司法制度をコケにしているという点で、痛快さが楽しくもある。
しかし残念ながら、マリファナ関係の映像作品は、そのクオリティがそれ相応の痛快な出来になっているかというと、かなり疑問に思うものが多い。
この『マリファナ・クッキングバトル』は、前にやっていた『クッキング・ハイ』とほぼ同じような内容。
『クッキング・ハイ』がわりとショボい番組だったので、アイデアだけパクって、もうちょっとちゃんとした感じで作ろうって話しになったのかな。
確かに『クッキング・ハイ』よりは金がかかっている感じ。
『クッキング・ハイ』は出ている人がザコっぽい人ばかりだったが、この『マリファナ・クッキングバトル』の方は、そこそこグレードアップしている。
例えばゲスト審査員には映画『ゴーストバスターズ(2016年度版)』のエンディングテーマ曲『Good Girls』(名曲!)を歌ったエル・キングや、タランティーノの『トゥルー・ロマンス』でクラレンスの親友役をやったマイケル・ラパポートなどが出演している。
その反面、やはりマリファナ関係の番組にふさわしいザコっぽい人は結構目につく。
司会者ふたりは魅力ないし、『クッキング・ハイ』のウンガイオさんに匹敵するような、インパクトのあるレギュラー陣がひとりもいない。
某ゲスト審査員は番組中にハイになってスタジオをウロウロしだしたかと思ったら、「ボク、刑務所に12年服役したことあるんだ」などと呟いていたり。
某ゲスト審査員のコメディアンは、テーブル上に飾ってあるサボテンの土を食おうとして止められていたり。
ある料理人は、料理中に薫製で使っている大麻の煙をどさくさに吸っていたり。
(つまみ食いならぬつまみ吸いだ)
しかし一方で、マリファナに関してとても前向きに取り組んでいる立派な人たちもちらほら。
ある料理人さんは、11年前に母親が癌になって、大麻料理を作る必要に迫られ、それまで勤めていたシェフを辞めて、真剣に大麻料理に取り組むようになった、とのこと。
またある料理人さんは、以前は薬物に関して反対だったが、食品会社に勤めていたところ、ひょんなことから大麻製品開発に携わることになり、研究のために大麻を吸ったり食べたりするようになったんだって。
そしたら長年抱えていた鬱病の悩みから解放され、現在は大麻料理人として大麻の素晴らしさを伝えようと活動しているのだという。
また、料理を食べた司会者が「大麻との強い絆を感じました」などと美しい言葉で賛辞を述べていたりもしていた。
まさか「絆」なんてヒューマニズムあふれるボキャブラリーを大麻の話題で耳にするとは思わなかった。
大麻と向き合う人間模様もいろいろってことだ。
何より『クッキング・ハイ』と比べてめざましく発展しているのは、料理のクオリティがすごく高いこと。
競技に参加する料理人たちは大麻を食材に使ってそれぞれ前菜・メイン・デザートの3品を作るのだが、その料理のバリエーションの豊富さは素晴らしい。
大麻の使い方も成分をオイルに溶かした大麻オリーブオイルを使ったり、大麻の葉っぱをそのままトルティーヤに練り込んだり、大麻を燃やしてスモークにしたり、マリファナ料理とひとくちに言っても様々な料理法があるんだってことがわかる。
しかし大麻の葉っぱをまな板の上にのせて包丁で刻んでいる光景って妙にシュールだな。
毎回「結婚式」とか「祝祭日」とかテーマがあるのだが、なかでも興味深かったのは、第4回の「未来の食べ物」。
ビーカーを器に使ったり、食材に虫を使ったり(未来は食糧危機が訪れるから、というコンセプトだそうだ)、なかなかクリエイティブな発想の創作料理が披露された。
まあ作られているお料理のクオリティとしては、大麻とか関係なしに、めっちゃ美味そうなので、普通にお料理グルメ番組として見たらそこそこの出来と言えるんじゃなかろうか。
ただお料理コンテスト番組として見ると、例えば日本の『料理の鉄人』とかイギリスの『ベイクオフ』などと比べて、緊張感を盛り上げる演出の工夫に乏しく、今回は誰が優勝するのかというワクワク感がほとんど無い。
私はお料理コンテスト番組はわりと好きだが、グルメ番組には興味が無いので、正直それほどおもしろいとは思わなかった。
評価
ま、悪かないけど、見なくてもいいですよ。
★★★★★
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