数回に分けてクエンティン・タランティーノの処女作『マイ・ベスト・フレンズ・バースデー』の内容を、36分の未完成映像を中心に、脚本で補完しながら徹底解説するシリーズ。
今回はその第3回目です。
前回はこちら。
初めての方はこちらの解説文をお読みください。
【欠落シーン】クラレンスがミスティをナンパする
前回ミッキーの家を追い出されたクラレンスは、ロニーというデブの男がバーテンダーをやっているバーで飲んでいます。
クラレンスはロニーに「今夜、俺にはある使命があるんだ」と言います。
「使命って?」と聞き返すロニーに、クラレンスは「どうしてもミッキーに素敵な誕生日を迎えさせてやりたいんだ」と答えます。
ふと、クラレンスは、店内のプールバーでひとりビリヤードを楽しんでいる、ミスティ・ナイトという名前のセクシーな美女に目をとめます。
いい考えを思いついたクラレンスは、ミスティのところに近づいてゆきます。
クラレンスがミスティの背後に近づいた瞬間、ビリヤードをやっているミスティがキューで玉を突いたので、キューのおしりがクラレンスの眼球に直撃します。
クラレンス「いってえええええええ!」
ミスティ、振り向く。
クラレンス、目を押さえている。
ミスティ「あら……ごめんね! 大丈夫?」
クラレンス「大丈夫。一時的に目が見えなくなってるだけだから」
と、目をさすっている。
ミスティ「何をしているの?」
クラレンス「脳みそにくっついちゃった目玉をはがしてるんだよ」
ミスティ「悪かったわねえ」
クラレンス「もう大丈夫。これで元通り。ほらね(目から手を離す)もう片方の目と同じ位置に戻っただろ」
ミスティ、笑う。
以上の会話の続きが、次の本編シーンになります。
【本編シーン】クラレンスがミスティに頼みごとをする 14:39
クラレンスはミスティに事情を話します。
友達のミッキーが三十路に突入して、おまけに恋人に二度もふられて、落ち込んでるから、元気づけてやりたい。
そこで、ミッキーのデートの相手になってくれないか?と。
ミスティはクラレンスとミッキーのラジオのファンだったので、ふたつ返事でオッケーします。
クラレンスはミッキーの住所をを書いたメモとミッキーの家の合鍵(クラレンスはミッキーの親友なので合鍵を持っている)を渡し、今からミッキーの家に行って、ミッキーをサプライズで楽しませてやってくれ、と頼みます。
クラレンスは自分の恋人のセシリアを呼び出してから、2人でミッキーの家に向かい、後から合流する予定。
そこからは、4人で楽しくパーティーをしよう、というのが計画の全貌です。
ここで、ミスティは衝撃の一言を口にします。
「料金は前金でもらえるの? それとも後で?」
そこで初めて、クラレンスはミスティがコールガールだと気がつきます。
「りょ、料金・・・・あ・・・ああ、料金ね? アハハハハ、そうだね! 忘れてたよ! いくら?」
と、クラレンスはコールガールだと知らなかったことをごまかして料金の交渉に入ります。
ここら辺は映画『トゥルー・ロマンス』と同じ展開ですね。
ミスティの「私は売春婦じゃなくてコールガールなのよ。高級なのよ」と、『トゥルー・ロマンス』と、ほぼ同じセリフもあります。
交渉の結果、40ドルで話しが決まり、クラレンスが財布から40ドルを出してミスティに渡し、ミスティが喜ぶカットで映像はいきなりバツンと切れます。
タランティーノの脚本ではこの後、まだ続きがあります。
【欠落シーン】クリフォードがミスティを探しにくる
ミスティはミッキーの家に向かい、クラレンスは「ビル・スミスのビデオ・ベーカリー」というレンタルビデオ屋とパン屋が合体しているお店に向かいます。
二人がいなくなった後、ロニーのバーに、クリフォードという黒人の男ががやってきます。
クリフォードはミスティのポン引きで、ミスティを探しにやってきたのでした。
クリフォードがバーテンダーのロニーに「ミスティはどこへいった?」と聞くと、ロニーは「守秘義務があるから教えられないね」と答えます。
怒ったクリフォードに胸ぐらをつかまれ、ロニーは「カーペンター通りのダーウィン・アパートの13号室です」と、あっさり口を割ります。
クリフォードはバーを飛び出してゆき、ロニーがぶつぶつ言うところでこのシーンは終わりです。
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