作品データ
原題:Into the Inferno
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:ヴェルナー・ヘルツォーク、クライブ・オッペンハイマー
制作:2016年、イギリス・オーストリア合作
あらすじ(ネタバレなし)
世界各地の大噴火や煌々と流れる溶岩の迫力の映像とともに、火山を畏れ敬う人々の儀式を取材し、火山と人間の関係を考えるドキュメンタリー映画。
『イントゥ・ザ・インフェルノ マグマの世界』の感想
最近、私の中で火山がマイブームなのだ。
別に火山について調べたり研究したりしているわけではないのだが、ただ火山の光景に無性に惹かれる自分がいて、ネットで火山の画像をダウンロードしまくってはデスクトップにランダム表示させて、眺めている。
さすがヴェルナー・ヘルツォーク。
こんな時期に火山をテーマにしたドキュメンタリーを作ってくれるとは。
私がドイツで最も尊敬する監督だけのことはある。
しかしそれにしても、なんで火山を見ていると、こんな胸の底からズンズンわきあがる高揚感を味わえるのだろう。
とはいえこの作品、火山の映像ばかりがおさめられているわけではない。
ヘルツォークが火山学者と一緒に、インドネシア、エチオピア、アイスランド、北朝鮮などなど、世界各国の火山をまわり、その地域の人々がそれぞれの文化の中でどう火山と向き合ってきたのか、火山に対してどんな想いを抱いてきたのかをじっくり描いているのだ。
大自然の圧倒的なパワーを人間たちがどうその文化の中で理解し、畏れ敬ってきたのか、それはそれで興味深いものがあった。
その反面、火山という現象に対しての科学的な解説みたいなのはほぼ無い。
あくまでも「火山」を文化として捉えたドキュメンタリーなのである。
それでいて、北朝鮮でのインタビューなどは、火山に関する文化的な発言よりも、すぐに政治的な主張や国家賛美や戦時中の日本の悪口ばかりになってしまって、どうも火山からは話題がそれぎみになり、それはそれで別の意味で興味深いながらも、テーマを見失っているかにみえた。
しかしそれなら、北朝鮮パートを編集でもっと中盤にもってくればよかったのではないか。
北朝鮮パートがクライマックスとも言えるべき後半部分に、とりわけ他のパートよりも長めの尺で収録されているのは、何か裏の意図があったのでは無いかとも考えられる。
つまりは火山のドキュメンタリーというのは半ば口実で、この映画は北朝鮮にカメラを持ち込むことに本意があったのかもしれない。
確かに火山の取材という名目ならば、北朝鮮も普段は許可しないところにまで外国人によるカメラの持ち込みを許可するだろう。
朝鮮民族の聖地・白頭山を出発点として、北朝鮮の文化を掘り下げてゆくきっかけとしては、なるほど「火山のドキュメンタリー映画」という名目はうってつけであったのだろう。
そんな穿った見方も面白い、ヘルツォークの火山(?)映画であった。
評価
個人的に楽しめたのは火山の映像だけだったので。
★★★★★
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