ドラマ『ザ・クラウン』シーズン1 退屈そうなイギリス王室があら不思議

『ザ・クラウン』シーズン1
出典:imdb
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作品データ

原題:The Crown Season 1
監督:スティーブン・ダルドリー、フィリップ・マーティン、他
原作:ピーター・モーガン
脚本:ピーター・モーガン
出演:クレア・フォイ、マット・スミス、ヴァネッサ・カービー、ジャレッド・ハリス、ジョン・リスゴー
制作:2016年、イギリス・アメリカ合作

あらすじ(ネタバレなし)

1952年、国王ジョージ6世が死に、その娘であるエリザベスが25歳の若さで君主となる。政治家たちとの確執、王室のスキャンダル、その他、様々な歴史的事件を経験しながら、女王として、妻として、母として生きるエリザベス女王の半生を描く。シーズン1は1947年(21歳)から1955年(29歳)まで。

『ザ・クラウン』シーズン1の感想

ここ数年、妻と一緒にNetflixでドラマを見るのが夫婦の毎日の習慣になっている。
それまで見ていたドラマが終わって、「次はどれにしようか」なんて話してて、妻が「これにしよう」と指さしたのがこのドラマ。

クラウン? ピエロの話し? それとも、とよた?
と思ったら、クラウン(crown)=王冠
イギリス女王エリザベス2世の物語だった。

イギリス王室なんてまるで興味ないんだけどなあ……
と、最初はちょっと見るのがかったるかった。

ところが、これがえらくよく出来たドラマで、そのクオリティの高さにみるみるお話しに惹きこまれ、最後までまったく飽きることなく、おもしろく見れてしまった。
王室の生活なんて退屈に決まってるのに、それを題材に選んでどうしてこんなエキサイティングな内容に出来るのか不思議。
それだけ激動の時代だったんだろうが、それ以上に脚本がよくできているのだ。

普通、連続ドラマってのは複数の脚本家がいるものだが、このドラマの場合は、原作者のピーター・モーガンがひとりで全エピソードを書いているらしい。
そのせいか、第1話から最終話まで全編ビシッと同じテンションで貫き通された重厚感みたいなのがある。
ストーリー進行は決してスピーディーなものとは言えないが、少しも気持ちがそれることがない。

豪華美術による時代の雰囲気の再現も完璧なら、俳優陣の演技も完璧。

ジョン・リスゴー演ずるチャーチル首相

ジョン・リスゴー演ずるチャーチル首相
(出典:imdb

なかでもキャラクターとしておもしろかったのがチャーチル首相。
最初に画面に出てきたとき「あっ。チャーチル首相だ」と思った。
そしてよく見たら、演じているのがなんとかのジョン・リスゴーじゃない。

ジョン・リスゴーなんてスピルバーグの映画とかで何十年も前から見慣れていた俳優なのに、出てきてすぐ「あっ。ジョン・リスゴーだ」と思う前に「チャーチルだ」と感じさせるなんて、これぞ役作りの完璧さを物語っているではないか。
さすが「ヒトラーを倒した首相」だけあって、豪快で傑物な感じがよく出ている。
トイレのドアを挟んで用を足しながら秘書に指示をするシーンはおかしかった。

役作りといえば、エリザベス女王の夫フィリップも本物そっくり。
出てきてすぐ、ああ、なるほど、こういう感じの人なのね、というのが一発でわかる演出。
素晴らしい。

扱っている題材もおもしろくて、1万人以上の死者を出したロンドンのスモッグ事件だとか、マーガレット王女のスキャンダルなど、実際の出来事の裏側はなるほどこんな感じだったのかな、と、元の事件を知らなくても興味深くストーリーを追っていける。

あえてこのドラマの欠点を挙げるとすると、イギリス王室という主題に私がまったく興味なかった、というくらいしか他に見当たらない。
(しかしそれは制作側のせいじゃないし)

ところが、ところがである。

このドラマのシーズン1を見終わって、ふと気になってYouTubeで本物のエリザベス女王の映像を見ていたら、もうひとつだけ、このドラマの意外な欠点が発覚した。

『ザ・クラウン』シーズン1

出典:imdb

このドラマの主演女優のクレア・フォイさん。
演技もうまいし、人物造形も申し分ないのだが、実際のエリザベス女王と比べると、王家の人間に特有の高貴な雰囲気がまるでなく、顔立ちもオバサン臭くて華がない。
つまり実際の人物と照らし合わせると、女王様っぽさがぜんぜん感じられないのだ。
確かに実際のエリザベス女王様もちょっとオバサン顔(失礼)なのだが、力を入れるのはそこじゃないだろう、と思う。

まあしかし、そこはそれ、繰り返しになるが、私はとくにイギリスの王室なんて興味なかったから、このドラマの素晴らしさが揺らぐようなことでもない。
ようするに「私のエリザベス女王様をこんな風に描きやがって!」などと文句を言う筋合いなどないということだ。

つまりこのドラマにはどうでもいい欠点が2つあって、その2つが相殺しているという、珍しい現象が私の中で起こっていたりするのだ。

とにかく、プラマイゼロで、このドラマが非の打ちどころのない完璧な傑作であるという事実は変わらないのである。

評価

続きが楽しみだ。
★★★★

Good Movie 認定

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コメント

  1. 匿名 より:

    チャーチルは首相です、

    • TOMTOM より:

      ご指摘ありがとうございます!

      今まで気がつきませんでした(^^;)

      ご指摘を受けて記事の文章を

      チャーチル大統領 → チャーチル首相

      に修正させていただきました。

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