『DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』の感想

DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令
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作品データ

監督:庵野秀明、赤井孝美
脚本:岡田斗司夫
出演:庵野秀明、武田康廣、澤村武伺、田村紀雄、ねこまたや
制作:1983年、日本

あらすじ(ネタバレなし)

ある朝、隕石が落下して、街が崩壊。
さらに隕石から怪獣が出てきて、暴れだした。
地球防衛機構所属・怪獣攻撃隊MATは核兵器による攻撃を決定する。
しかしそれをよしとしないハヤカワ隊員は、ウルトラマンに変身。
怪獣を倒しにゆくのであった。

『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』の感想

自主制作映画ながら、円谷プロの偉い人だった私の尊敬する友人が「完璧な作品だ」と絶賛していたほどの良作。

確かにこれはなかなかいい。

この映画のすごいのはなんといっても監督の庵野秀明みずからが演ずるウルトラマン。
ここまで本格的に作っておきながら、なんで最後のヒーローが素顔の人間なのか。
そうツッコミを入れる人は多い。

しかし、実はこれは考え方が逆で、「庵野秀明がウルトラマンごっこをして遊ぶ」のをカメラで撮影するのが本番で、それまでの過程や周囲のセットがサブの部分、つまり御膳立てということなのだ。

このクライマックスで、見ている我々は「なんだ、俺たちは庵野秀明のウルトラマンごっこつきあっていただけだったのか」と気がつかされて「ギャフン!」となる。
そういう仕掛けになっている映画なのである。

カラータイマーのアップに堂々と、ジャンバーのチャックがアップで映り込んでいるところなど、

「あ。僕たちはあくまでもウルトラマンごっこをして遊んでるだけだったんですよ。え? ウルトラマンの映画を真面目に作っていたと思っていたんですか? はっはっはっ。騙されましたね」

と制作者の声がきこえてくるようだ。

バカなことを大真面目に手間をかけてやる、というのは、80年代には実によくみられたエンターテイメントのモチーフのひとつだった。

この究極のウルトラマンごっこ遊びのコンセプトはストーリーにも象徴されている。

普通のヒーローものは、人類の力では倒せない強い怪獣を、ウルトラマンが人類にかわって倒してあげる、という構図が一般的だ。
しかしこの作品では、脚本の岡田斗司夫氏のコメントによると、そんな構図が逆転されているのだという。

人類は核兵器によって怪獣を倒せるのだけれど、それだと被害が大きくなってしまうので、人類より少し弱いウルトラマンに、怪獣を倒させてあげる、ということなんだって。

つまり、わかりやすくセリフで説明すると、こういうことだ。

これまでのヒーローものは、

「ウルトラマンさん、怪獣が強すぎてボクたちではとても倒せそうにないので、かわりにやっつけてくれませんか?」

だった。

しかし、この作品では、

「ウルトラマンさん、ボクたちは強すぎて、怪獣ごときが相手だと、ちょっと大人気ないことになっちゃいそうなんで、どうかボクたちのかわりにひとつ、ウルトラマンさんが怪獣と遊んであげてくださいませんか?」

という映画なのだ。

ここに「ウルトラマンごっこをして遊びをしたかった」庵野青年が当てはまる、という構図になっているのである。

深い。

追記:他のDAICON作品の方が面白かった件

つい最近になって同じDAICON FILM制作の他の作品『愛國戰隊大日本』『八岐之大蛇の逆襲』を見てみたら、この『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』よりはるかに面白い大傑作だった。

若き日の庵野秀明監督が出ているということで『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』の知名度ばかりが圧倒しているが、何気に本当に自主制作映画のクオリティを超越したおすすめの作品は『愛國戰隊大日本』『八岐之大蛇の逆襲』の方だと思う。

未見の方は、ぜひこの2つを鑑賞されたい。

評価

『シン・ゴジラ』の原点。また、『シン・ウルトラマン』の原点かもしれない。
★★★★★

Good Movie 認定


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