作品データ
原題:Scent of a Woman
監督:マーティン・ブレスト
脚本:ボー・ゴールドマン
出演:アル・パチーノ
制作:1992年、アメリカ
あらすじ(ネタバレなし)
ボストンの名門校に通うチャーリーは、盲目の退役軍人フランク・スレード中佐の世話をすることになった。中佐はとても気難しく強引で、チャーリーを無理やりニューヨークへと連れ出す。しかしチャーリーは、中佐と付き合ううちに、彼の魅力に気がつきはじめる。一方、チャーリーの学校では、学生たちのちょっとしたイタズラが大問題に発展していた。
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の感想
アル・パチーノ目当て。
私がアメリカで好きな、もうその人が出ているからというだけで見る俳優というと、デニーロ、ブランド、そしてパチーノくらい(とはいってもまだ未見の映画がごまんと残っている)。
さてこの映画。
盲人の元中佐と、週末の間だけその世話役のバイトを引き受けた青年との交流を描いた感動作である。
原題は『Scent of a Woman』。
カタカナで「セント・オブ・ウーマン」と書くとかっこいいが、「をんなのにほひ」という意味だ。
しかしこれが最後まで見ると、このストーリーに「女の香り」というタイトルがついているなんて、洒落てるなあと感心する。
ただこの映画、実は私、最初はダメな映画かと思った。
語り手役の青年がダメで、盲人の相手をしているのにぜんぜん声出さないし、なんだかボサーッとしていて度量の狭いガキなのだ。
見ていてイライラするだけで、ついでにアル・パチーノの演技も大雑把であまりいいとは思えず、早送りしようかと思った。
しかし、である。
アル・パチーノが美女とタンゴを踊るなんとまあ素敵なシーンを見て、この映画の印象がガラリと変わってしまった。

名シーンです(出典:imdb)
最初は大雑把に思えたアル・パチーノの演技も、見ていくうちにいつのまにかしっくり役柄に馴染んできて、気がついたらアル・パチーノじゃない、映画の登場人物“中佐”の生き様に目が離せなくなっていた。
そしてあの名スピーチ場面。
泣いた。
青年のダメさは相変わらずでも、アル・パチーノの円熟した渋味だけでもう映画の格としては最上級。
アカデミー主演男優賞を受賞したのも当然だと思う。
ちなみにアル・パチーノとタンゴを踊った女性、あの後も出てくるのかと思ったら、あのシーンだけしか出てこなかった。
1シーンだけにしか出てこないヒロインなんて、これまた洒落てる。
そう、この“洒落てる”ところがこの映画のちょっとしたチャームポイント。
基本的に人情劇なんだけど、ドロ臭いお涙ちょうだいのドラマにとどまらない、趣みたいなものがこの映画にはあるのだ。

出典:imdb
アル・パチーノ演ずる中佐だって、最初は単なる粗暴なオッサンだと思ったら、洋服のセンスとかとてもお洒落で、女性の扱いがとてもうまい。
少しお話しをしただけで、大抵の女性は中佐に心をとろかされてしまう。
「そこにある酒のラベルを端から読み上げてくれ」とか「モンテクリストの1番を買ってきてくれ」とか、お酒や葉巻や香水の銘柄にも詳しく、紳士の嗜みを知る粋人なのだとわかってくる。
いわゆる、この人情劇にさりげなく添えられている洒落た趣が、最初に言及したヒネリの効いたタイトルにかかってくるわけだ。
アル・パチーノ演ずる主人公が洒落た粋人であることと、盲であることの両方を暗にほのめかしている。
タイトルといえば、邦題のサブタイトル『夢の香り』って、寒すぎる。
この副題つけた人、配給会社にまだいたら、今からでもクビにしたほうがいい。
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出典:amazon
さて、この一見ワガママで遊び上手なオッサンが、クライマックスで感動のスピーチをする。
このシーンが感動的なのはなぜか。
まず、たかが学生のイタズラを公聴会まで開いてネチネチと責め立てる学校側のクソっぷりとの対比がある。
「我が校は多くの政治家を輩出してきた名門校である。だからあのようなイタズラをする生徒をこのまま放置してはおけない」とかなんとか、校長が宣うのだが、なんてことない、名門校の権威をかさにきて、溜飲を下げているだけ。
そんなこと、少しでも空気を読めるやつならバカでもわかることだ。
中佐が言うのは、そんなケチくさい権力におもねるような生徒をハーバード大学へ推薦する、それでアメリカの未来の政治は良いのかと。
権力に屈することなく、友を売らない高潔さを守り通す、それこそが政治家に必要な資質なんじゃないかと。
要するに、このシーンの中佐のスピーチが感動的なのは、彼がどこまでも正しいからなのだ。
私だってあの場にいたら、立ち上がって拍手する。
粗暴だがお洒落で、諦めかけたけど最後の最後には間違わない、そんな魅力あるオッサンの生き様から受け取れるものは計り知れないのである。
評価
紳士とは。
★★★★★
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