映画『ハイ・フォン:ママは元ギャング』不良ママさんが昔とった杵柄で…

ハイ・フォン:ママは元ギャング
出典:imdb
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作品データ

原題:Hai Phượng
監督:ル・バン・キエット
出演:ゴー・タイン・ヴァン、マイ・カット・ヴィー
制作:2019年、ベトナム

あらすじ(ネタバレなし)

人身売買集団に娘を誘拐されたハイ・フォンが、かつて荒んだ生活を送っていたサイゴンへと舞い戻る。
娘を襲った奴らを倒すまで戦い続けると心に誓って…

『ハイ・フォン:ママは元ギャング』の感想

最近インドネシア・フィリピン・タイなど、アジアのアクション映画を漁っている。
私はとくにアクション映画好きってわけでもないのだが、なんだか発掘癖のようなものがあって、Netflixで得体の知れないアジア映画を見つけると、つい再生してしまうのだ。

それでいてアクションなら何でもそれなりに楽しめるたちでもないから、だいたい見たのを後悔する。
これが西部劇とかコメディとかインド映画みたいにジャンル的に好きだったら、それなりのポイントさえ押さえていればオリジナリティゼロでもそれなりに楽しめちゃうんだが、アクションだとやっぱり何か、そこにしかない魅力を求めてしまう。

それを踏まえて、この『ハイ・フォン: ママは元ギャング』は、なかなかよかった。
ベトナム総合武術ボビナム(知らなかったなあ)の使い手で、元不良少女の主人公ハイ・フォンは、現在は更生して娘とふたり暮らし。
昔とった杵柄ってやつで、借金の取立て屋をして生計を立てている。
ある日、大事な娘が人身売買組織に誘拐され、怒り狂ったママさんが、過去に不良だったときの人脈のツテをたどって娘を取り戻すために戦いの世界に飛び込んでゆく、というお話し。

マイ・カット・ヴィー

可愛いだけじゃない名子役 マイ・カット・ヴィー
出典:imdb

アクションの前提となるドラマ部分がわりとしっかり作られていて、それほど演出は上手いわけではないんだけれども、主役の親子二人のキャラクターは実に人間味があるし、その関係性の描き方などそれなりに丁寧で好感がもてる。
例えば娘はママに借金の取り立て屋を辞めてほしいと思っていて、自分がまっとうな仕事で家計を助けられるようになるため、養殖の勉強をしていたりする。
こういう細かいところの書き込みを見ても、ドラマ部分がアクションの流れにもっていくためだけの口実にとどまっていないと感じる。

それに娘さん役の子役がやたらかわいくて、演技も大人顔負け。いわゆる天才子役タイプ。
ママはタバコを吸っていて、紙巻きタバコに火をつけるところなんて妙に生活感漂っててシブい。

さてそんな骨太とまではいかないけれど、スルメくらいの噛みごたえはあるドラマによって導かれたアクションはというと、これがスゲエ!と思うような派手なものではないけれど、ジミーにおもしろい。

大ボスが女で、武術のウデは主人公のママよりはるかに上。
どうすんだ、と思ったら、クライマックスの戦いの最後の10秒が神だった。
この10秒のためにこれまでのストーリーがあったのか! と思わせるほど。

これで終わりかと思ったら、さらにもうひと暴れあって、アクション部分もかなり満足できるサービス量。

あと最初と最後のタイトルで、無駄にCG張り切っててほほえましい。

ゴー・タイン・ヴァン(ベロニカ・グゥ)

タバコを吸う演技がシブい。主演のゴー・タイン・ヴァン(ベロニカ・グゥ)
出典:imdb

ちょっと力が抜けたのはクライマックス直前の、最後の戦いに向かうときの一連の過程。
いくら強いからって、主人公は一介の主婦なのだ。警察が犯罪捜査をいきなり任せるわけがない。
死地に赴くママを押しとどめようとする警察隊に、刑事が「行かせろ」とか、いくらなんでもムチャクチャだ。

まあでも、ドラマもそこそこよく出来てるし、クライマックス最後の10秒+αがよかったから、そんな欠点も今となってはあの娘さん役の子役のように、かわいく思える。

ちなみに主役の女優さんに好奇心をそそられた。
この人は格闘家なのか? プロの女優なのか?
それともその両方、つまりアクション女優なのか?

検索してみたら、なんと、主役のゴー・タイン・バンはベトナムの元モデルさん。
モデルとして活躍したあと、歌手デビューして、女優になったのはさらにその後とのこと。
またベロニカ・グゥという英語名もあって、スター・ウォーズ・シリーズにも出演したことがあるらしい。

プロフィールを見ても、格闘技のバックグラウンドは無い模様。
それでこれだけのアクションをこなすなんてスゴイね。
こないだ見たフィリピンの『MARIA/マリア』もそうだったけど、アジア圏はアクションスターでもない人に、CGも使わず、アクションやらすのがやたらうまい。

評価

フィリピン映画『MARIA/マリア』と妙に似ているが、こちらの方がはるかによかった。
★★★★★

Good Movie 認定

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