映画『コンボイ』の感想 – 暇つぶしかヒーローか

サム・ペキンパー監督の『コンボイ』
出典:imdb
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作品データ

原題:Convoy
監督:サム・ペキンパー
脚本:ビル・ノートン
出演:クリス・クリストファーソン、アリ・マッグロー、アーネスト・ボーグナイン
音楽:ジェリー・フィールディング
制作:1978年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

大型トラックを運転するラバー・ダックと、数人の運転手仲間は、保安官ライルとふとしたきっかけでトラブルになる。
無線で事情を知った多くのトラック野郎たちが集まってくる。
巨大トラックの大群がハイウェイを暴走をはじめる。
それを取り締まろうとするライルたち。
利用しようとする政治家。
あおりたてるマスコミ。

彼らと巨大トラック軍団とのかけあいを描く。

『コンボイ』の感想

私はかねがね、この世でいちばん退屈な職業はアメリカのトラックの運転手ではないかと思っている。

以前アメリカに住んでいた時、東海岸からカナダまで車で旅行をしたことがあるが、その退屈さは想像を絶するものがあった。
アメリカの片田舎のだだっぴろい道路の、なんの建物も風景の変化もなく、曲がり角もなく、ひたすら同じ光景が続く一本道を、日がな一日中ただ運転するだけという行為が、どれだけ退屈でストレスフルなものか、これは経験した者でないとわからないだろう。
それを職業にするなんて考えただけでも胃に穴が開きそうだ。

つまりこれは悪徳な保安官の執拗な嫌がらせに鬱憤を爆発させたトラックドライバーたちが、その事件をきっかけに退屈な日常から脱出する話しなのかと、最初はそう思ったのだ。

最後まで見るともっと鬱屈した民衆のルサンチマンが権力の横暴に反旗を翻し、暴走したトラックの運転手たちがヒーローに祭り上げられるという、もう少し重いメッセージ性のようなものが感じられるのだが、これはこの時代に量産されたカーアクション映画の定番のモチーフであり、観客の立場からすると、警察にチケット切られた経験のある人たちが溜飲を下げる映画、というところに落とし込めるレベルにも片付けられる。

つまり産業革命の時代にルパンみたいな泥棒のお話しが流行ったのと基本的に文脈は同じである。

後半はトラック野郎たちが集まってきていっぱしのムーブメントと化し、トラックの大群の大暴走に発展。

とにかくこの頃のカーアクション映画は、逃亡中の犯罪者がヒーローになるとか、スピード違反がヒーローになるとか、定番の展開だったよな。
これはその点、トラックの大群てところがちょっと斬新ではある。

導入部の、のどかな風景から突然バイオレンスな展開になるのはペキンパーのお家芸だが、しかしこの映画はドタバタ喜劇っぽいノリで、アクション映画としての迫力には乏しい。

この映画が公開されていた時期(より少し後だったかな)、テレビでダンプカーのレースがよくやっていて興奮したものだが、あのくらいの迫力があったらアクションとしてもっとよかったかもしれない。

最後はタランティーノの『デス・プルーフ』でオマージュされた、アヒル型オーナメントが印象的なラストシーン。

↓ここから先はネタバレあり↓

主人公が最後に生きていたオチは当然、予想されたもので、というのも、映画の途中で主人公のトラックは「爆発物を積んでいる」という情報が言及されていたから、この場合は途中のどこかのシーンで「なんちゃって」が無い限り、「実際に爆発物は積んでいなかった」というオチがくるはずなのだ。
ところがこの映画のラストでトラックは本当に爆発する。
この時点でもうオチは「主人公は生きていた」以外に選択肢が無くなってしまうのである。
ストーリー作成ってそういうもんだ。

最後に。

映画と同名のテーマ曲『コンボイ』がかなりの名曲で印象的だが、それもそのはず。
この映画はそもそもこのカントリーソングをもとに映画化されたものなのだそうだ。

これは映画公開の2年前の映像

評価

名曲とアメリカの退屈なトラックの運転手さんたちに。
★★★★★

Good Movie 認定

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