映画『ランダム 存在の確率』の感想 – 量子力学ミステリー!!!

ランダム 存在の確率
出典:imdb
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作品データ

原題:Coherence
監督:ジェームズ・ウォード・バーキット
脚本:ジェームズ・ウォード・バーキット
出演:エミリー・フォクスラー、モーリー・スターリング、ニコラス・ブレンドン、エリザベス・グレイセン、ローレン・マハー、ヒューゴ・アームストロング、ローリーン・スカファリア
音楽:クリスティン・オーン・ディルド
制作:2013年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

ミラー彗星が地球に最も接近する夜、エムは恋人のケヴィンと、友人のホームパーティーを訪れる。すると突然、停電で部屋が真っ暗に。パニックになる男女8人。外の様子を見に行ったエムたちが目撃したのは、まったく同じ家に住む、まったく同じ自分たち。別世界の自分たちが、同じ空間に同時に存在するという驚愕の事実を目の当たりにする。

『ランダム 存在の確率』の感想

私の尊敬するジャーナリスト、神保哲生氏がこの映画をビデオニュースドットコムで紹介していて、氏の語るストーリー紹介がおもしろそうだったので見てみた。

確かに小品ながら、これはなかなかおもしろい。

いやしかし、私のこんな感想文より神保哲生氏と宮台真司氏の分析の方がよっぽどおもしろいので、YouTubeの動画をここに貼っておこう。
(ただし、ラストの解釈だけは的を得ているとは言い難いものがあります)

時間の無い方はこの記事を読むより動画を観る方を優先しちゃっても構いません。
ただ、ネタバレしてます。

さて、ここからが私の感想。

この映画で特筆すべきは、量子力学をうまくミステリーに取り入れてあるところ。

前半の会話で後半に巻き起こるパズルのような出来事を多角的に予兆していて、これがミステリーを解読する鍵になっている。

つまりよくあるパラレルもののストーリーを下敷きに、異なるパラレルが交差する瞬間をシュレーディンガーの猫の理論になぞらえているのだ。
いわゆる、登場人物たちが箱に入った猫と化してしまうという斬新な発想。

さらにそこに、観察するという行為が観察される現象に変化を与えるという、「観察者効果」の文脈を当てはめ、つまり箱に入った猫同士が干渉し合うことで発生するミステリーを描いている。
(映画を見てなかったら何を言っているのかさっぱりワカランだろうな)

↓ここから先はネタバレあり↓

パーティーの夜、そこにいる8人のうちのひとりの男が、雑談で「シュレーディンガーの猫って知ってるか?」と話題を持ち出す。

シュレーディンガーの猫とは、箱に入った猫の生死は、箱を開けて中身を確認して初めて決定される、という思考実験のことだ。

時空が歪んで自分たちと同じ人間が存在するとわかったとき、ひとりの男が「待てよ、これって、俺たちがシュレーディンガーの猫になったってことじゃないか」と気が付く。

すると、「……ってことは、俺たちがあいつらを殺さないと、自分たちが殺されるってことじゃん!」という話しになるのだ。

そんなバカな理屈はないだろうと、たかを括ってはいけない。

なぜなら、こちらがそれを思いついたということは、あちら側の自分たちも同じことを思いついている可能性があるということだからだ。

単なる量子力学の思考実験が、リアルなシチュエーションに見事に適用されることになるのだ。

考えてみたらこれはミステリーとして、すごい斬新なアイデアなのかもしれない。

ランダム 存在の確率

出典:imdb

パラレル同士でちょっと時間がズレている点も仕掛けのポイント。
完全に同じ時間を共有していたら、ここまでの歪みは生じなかっただろう。

そしてその歪みの最大は、最後のヒロインの選択。

ヒロインのエムは自分のいるパラレルが自分の元いた時空じゃないことに気がつき、戻ろうとして、元の時空を探しているうちに、なんとなく、理想の時空を探すようになってしまう。

そして元いた時空じゃなくて、居心地よさそうな時空を「選んで」そこにいる自分を殺して入れ替わる、という選択をする。

しかしその目論見は失敗し、同じ時空に自分自身が複数存在することになってしまった。

というオチ。

エムのように一見、マトモそうな人間が実はこっそり悪いことしている、みたいなところにもゾッとくるリアリティがあった。

評価

あざやかに決まった量子力学ミステリーの佳作。
★★★★★

Good Movie 認定

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