作品データ
原題:And Then There Were None
監督:ルネ・クレール
原作:アガサ・クリスティー
脚本:ダドリー・ニコルズ
出演:ルイス・ヘイワード、C・オーブリー・スミス、ハリー・サーストン、クイニー・レナード、リチャード・ヘイデン、ローランド・ヤング、ジュディス・アンダーソン、バリー・フィッツジェラルド、ウォルター・ヒューストン、ミシャ・オウア、ジューン・デュプレ
音楽:マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ
制作:1945年、アメリカ
あらすじ(ネタバレなし)
オーエン夫妻からの招待状を受け取り、8人の男女が孤島にやってきた。
しかしそこには召使2人だけがいて、招待者のオーエン夫妻はいない。
不審に思う10人の登場人物たち。
その夜、蓄音器から、皆が過去に犯した罪を告発する謎の声が響き渡る。
そして童謡「10人のインディアン」の歌詞を連想させる死に方で、ひとりひとり、順番に殺されてゆくのであった。
『そして誰もいなくなった』の感想
サスペンスとしてなかなかスリルがあって、次は誰が殺されるのか、誰が犯人なのか、見ている最中、ずっと興味をそそられ続け、ラストまでおもしろく見れた。
ストーリーが進むにつれて、それぞれが疑心暗鬼になってきて、誰かが誰かを監視する態で、登場人物たちの様子が描かれてゆくところとか、映像作品としてうまい演出だと思った。
しかしサスペンス映画において、途中がおもしろいということは、それだけラストへの期待値が高まってしまう、ってことでもある。
つまりハードルが思いっきり上がっちゃうのだ。
↓ここから先はネタバレあり↓
この映画の場合、悪い意味で、ラストが予想とぜんぜん違って、腰を抜かすほどびっくりした。
冒頭でメンバーが船に乗って孤島に向かうシーンがあるのだが、そこに如何にも主役っぽいハンサム男と美女がいて、このふたりが最後まで生き残り、なんとラブロマンスみたいな流れになって、ふたり仲良く手を繋いで島から帰ってゆくというハッピーエンドが訪れるのだ。
私はてっきり登場人物全員が死ぬもんだとばかり思っていた。
まさかタイトルの「そして誰もいなくなった」が、島から元の日常へ帰ってゆく概念も含まれていたとは。
だいたい、ひとりひとり殺されていくってことは、普通に考えたら最後に犯人がひとり残る計算になる。
つまり、「誰もいなくなる」には
(1)最後は犯人が自殺する
(2)最後は相打ち
(3)最初から犯人はいなくて島に仕掛けが施してある
の選択肢しかない。
私はアガサ・クリスティの小説を一度も読んだことがないのだが、噂によると、アガサ・クリスティは予想を裏切る展開が売りだいう。
だとすると、実際はこの3つの選択肢どれでもない、何か驚くべき結末が用意されているのではなかろうか?
そう思ってかなり身構えて見てしまっていた。
確かにその3つのどれにも当てはまらなかったが、そもそも「生き残る」選択肢があったなんて、それ以前の問題じゃないか。
ひょっとしたらこれは原作と違うラストなのだろうか?
ここで、インターネットを検索してみる・・・
なるほど。
原作の小説は全員死ぬのだが、アガサ・クリスティ本人がこの小説を戯曲化していて、この映画はその戯曲版のラストを基にしているんだそうだ。
ちなみに小説版のラストは(1)の「最後は犯人が自殺する」パターンのようだ。
途中で死んだと思われていた人物が犯人、というのは小説にもあったアイデアらしい。
確かにそこらへんは意外性があってよかった。
犯人の動機も絶妙なものがあった。
まあしかし、「そして誰もいなくなった」と言っておいて、見事に生き残ってしまうラストは誰も予想がつかないという点ではスゴイ。
よくやった。
あっぱれ。
皮肉だよ、念のため。
評価
そこそこよく出来てはいるが、ここまでふざけた騙され方して、高評価つける気にならない。
★★★★★
コメント