作品データ
原題:Слуга народу
監督:アレクセイ・キリュシュチェンコ
脚本:セルゲイ・クイビシェフ
出演:ウォロディミル・ゼレンスキー、ナターリヤ・スムスカヤ、ヴィクトル・サライキン、スタニスラフ・ボクラン、エカテリーナ・キステン
制作:2015年、ウクライナ
あらすじ(ネタバレなし)
政府の腐敗を非難する動画がSNSで話題になり、一躍時の人となったウクライナの高校教師が、まったく意図せず選挙で大統領に。
『国民の僕』の感想
※注:本記事はややロシアよりの内容になっておりますが、私としてはいろいろな資料にあたって公平に判断しております。
もちろん、私の判断が絶対だとは思っておりません。
ひとつの見方と思ってご容赦ください。
(本記事の最後に参考にしたYouTube動画を貼っておきます)
主役を演じた現ゼレンスキー大統領について
ウクライナの現大統領・ゼレンスキー主演のドラマ。
このドラマで一般の教師から大統領になってしまうゴロボロジコ役を演じたゼレンスキーが、後に実際にウクライナの大統領になって現在に至る。
ウクライナ戦争前は汚職まみれで支持率が2割以下にさがっていたゼレンスキーだったが、現在は戦争のプロパガンダで一躍ヒーローにまつりあげられ、見事に祖国の自由のために戦う大統領を演じている。
私はウクライナ戦争が始まってからネットで何人か現地のウクライナ女子と話しをしたのだが、私が話しをした限りでは、現在のウクライナにおけるゼレンスキー大統領の評価は素晴らしいものがあった(2022年8月くらいの話し)。
ウクライナ女子にこの「『国人の僕』を日本語字幕付きで見た」と言うと、決まってびっくりして、「日本人があのドラマを見てわかるの!?」と不思議そうにしながらも、すごく喜んでくれる。
そんな話しの流れから、何人かのウクライナ女子に「あなたはゼレンスキー大統領のことをどう思うか?」と聞いてみたが、ゼレンスキーのことを悪く言う子はひとりもいなかった。
ひとり「ゼレンスキー大統領は好き?」と聞いたら、ちょっとムッとした顔になって、「“好き”ってどう言うことよ!? 彼は偉大な人物なのよ! わたしたちは彼を崇拝しているの」とムキになってしまわれて困ったこともある。
いくらか冷静なウクライナ女子でも「ゼレンスキー大統領のことをどう思うか?」の問いに、「彼は最初の頃はダメだったけど、最近はよくなってきたわね」とやっぱり現在の彼のリーダーシップを評価しているようだった。
プロパガンダ色を検証してみる
私としては、現在のウクライナ戦争は、アメリカがウクライナをけしかけてロシアを挑発したことによって起きた、という論説はかなり信憑性があるとみている。
(その理由を詳しく書くと長くなるので、伊藤貫さんや馬渕睦夫さんのYouTubeを見て勉強されたい)
その説が本当だとすると、つまりゼレンスキーはドラマでその演技力を買われてプロパガンダの矢面に立たされた傀儡であり、むしろ国民を戦火に巻き込んだ張本人だという見方も出来る。
ちょっと詳しく言うと、今回のウクライナ戦争は2014年くらいからアメリカのネオコンが具体的に計画を立て始め、それに対抗してプーチンが2015年くらいから戦争の準備をしていて、それがついに実行に移されたのが今年(2022年)ということらしい。
このドラマの放送開始が2015年11月からだということは、このドラマの制作じたいがひょっとしたら今回の戦争のプロパガンダ効果を見込んでのものだった可能性もある。
そう断定することは危険だが、可能性を頭に入れておくくらいは必要なことだろう。
ちなみに政治家としてのゼレンスキーが所属する政党の名前がこのドラマと同名の「国民の僕(2017年に結成)」……。
ま、調べれば調べるほど、このドラマの制作経緯がプロパガンダ臭いことは否定できない。
とはいえ、エンターテイメントを鑑賞する身としては、そんな疑惑の絶えない戦争の渦中にいる人物が過去に主演したドラマを、その戦争の最中に見るなんて、これはなかなかすごい体験だ。
演技派ゼレンスキー、プーチンを演じるの巻
とにかくゼレンスキーの演技力は西側諸国のプロパガンダ報道でも折り紙つき。
その点でも期待は高まる。
先に言った理由で、私はゼレンスキーは政治家としては大きな疑問が残るのだが、それと芸術の価値とは別の話しである。
だからドラマはドラマとして正当に評価したい。
とりあえずシーズン1を見た限りでは、さすが評判のドラマだけあって面白い。
映像や演出、脚本のクオリティ、どれをとっても、アメリカや韓国の良質のドラマと比べて遜色ない。
少しプロパガンダ色を意識して内容を鑑みると、果たしてこのドラマは、どこまでその後の国際情勢やウクライナ戦争などの展開を見越して作ったのか、興味深いものがある。
ストーリーを通してオリガルヒの政治への影響、政治家の汚職などが批判されているが、それらは本当の批判だとも言えるし、メディアを使った巨悪のカモフラージュだとも受け取れる。
しかし面白いなあ、と思うのは、もし、この戦争で一番悪いのがアメリカで、ウクライナはその矢面に立たされている被害者、プーチンが悪しきグローバリズム利権に立ち向かっている屈強の男だとすると、このドラマにおいて、いわゆるゼレンスキーと同じ立場の人が、実はプーチンなのだ。
そしてこのドラマで描かれているゴロボロジコを正反対にしたら、実際のゼレンスキーになるかもしれないのである。
もちろん偶然かもしれないが、そういう風にうまく作られているように見える。
例えば、このドラマの中で終始、主人公のゴロボロジコはオリガルヒからの要求をとことん跳ねつける。
ゼレンスキー大統領が本当にこんなことをやっていたら、アメリカの言いなりになってロシアと戦争などやらなかっただろうし、そもそも最初から単なるTVドラマのコメディ俳優が大統領になることもなかったかもしれない。
逆にプーチンこそはオリガルヒの要求をはねつけ、ロシアのエネルギー産業を国営化することで国内の経済が海外の資本家へ流出するのを食い止め、それによってネオコンに目の敵にされ、闘争に巻き込まれている。
いわゆるこの映画で描かれているゴロボロジコと同じ立ち位置なのだ。
陰謀論だと即座に否定してはいけない。
何度も繰り返して言うが、あくまでもひとつの可能性として頭に入れておくことが大切なのだ。
だいたい、こういう話しを「陰謀論だ」とバカにする人間はだいたい「それっぽい論説」を即座に陰謀論だと見做してよく調べもしないで否定している場合が多い。
私はこれを「反陰謀論バイアス」と呼んでいる。
「そんなものは陰謀論だ」と声をあげる人のほとんどが、かなり初歩的な情報も知らないでそれを主張している場合が多いのだ。
「この戦争で一番悪いのはアメリカ」みたいな意見を「陰謀論だ」とバカにする方はまず、数十年におよぶロシアとウクライナの関係と、それへのアメリカのネオコン勢力の影響をしっかり勉強してから思う存分に否定してもらいたいと思う。
(一応この記事の最後に参考になるYouTube動画へのリンクを貼っておきます)
話しがずいぶん国際政治問題にズレてしまった。
閑話休題。
ま、政治的には何かとモヤモヤする点は残るが、ドラマとしてはなかなか評価できる代物であった。
シーズン2以降でちょっと残念なのは、オリガルヒからスパイとして送り込まれてきたアンナを演じている女優さんが他の人に替わってしまったこと。
最初の女優さん、演技に何とも言えないユーモアがあってよかったのになあ。
最後に、ウクライナとロシアに、そして世界に、早く平和が訪れますように。
評価
プロパガンダ臭は横に置いといて、なかなか面白いドラマ。
逆にプロパガンダ的側面を中心に据えても、それはそれでいっぱしの貴重な映像体験。
オススメです。
★★★★★
『国民の僕』ノートブック
ゼレンスキーTシャツ
ゼレンスキー(ホープ)パーカー
ゼレンスキー(I stand with ukraine)Tシャツ
参考資料
昨今のウクライナ情勢について非常に勉強になったYouTube動画を貼っておきます。
2022年のウクライナとロシアの戦争が起きるまでの経緯ついて勉強できる動画がこちら。
上の動画を見ると、
アメリカの資本家たちがロシアの天然資源の利権を取り戻したいために、
プーチンを失脚させようとして、
もともとあったウクライナとロシアの確執の問題を利用して、
ウクライナを矢面に立てて真面目なプーチンを挑発して、
ロシアを戦争に引きずり込んだ、ということがわかる。
次に、
最近のウクライナとロシアの戦況、
ロシアより実はウクライナ軍の方が残虐な行為をしている件、
なぜこの戦争がなかなか終わらないかの理由、
などが勉強できる動画がこちら。
コメント