映画『夢翔る人/色情男女』の感想 – 映画制作の映画の隠れた名作

夢翔る人/色情男女
出典:imdb
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作品データ

原題:色情男女
監督:イー・トンシン
脚本:イー・トンシン、ロー・チーリョン、ボスコー・ラム
出演:レスリー・チャン、カレン・モク、スー・チー
音楽:クラレンス・ホイ
制作:1996年、香港

あらすじ(ネタバレなし)

最近ヒット作を出せずにいる映画監督のシンは、婦人警官の恋人メイと同棲中。
ある日、シンのところにプロデューサーのチャンから脚本が売れた知らせが入る。
メイと喜びを交わすのも束の間、なんとシンはポルノまがいの映画を撮ることになってしまい、芸術志向のシンは悩むことに。
しかも、主演女優のモニクはわがままときている。
シンのすったもんだの波乱の映画製作の幕開けになるが……。

『夢翔る人/色情男女』の感想

売れない映画監督が嫌々ポルノ映画を撮影するはめになり、苦悩の末、最後はポルノ映画制作に情熱を燃やすようになる、という映画。

デジタル撮影機材が発達した今でこそ誰もが映画を撮れる時代になったが、この時代、映画は一本撮るのさええらく金がかかる大事業で、映画監督なんて数本、鳴かず飛ばずの作品が続いた日には、もう新作に金出してくれるプロデューサーなんていなくなるのだ。

時代背景を鑑みると、レスリー・チャン演ずる主人公がポルノを撮らなければならない切迫した状況も理解できる。

この映画が映画好きの私にとってとてもステキな映画に思えるのは、映画を愛する心に、ポルノも芸術もないってことを教えてくれるからである。

いい映画を作るために燃やす情熱に、ジャンルの国境など無いことを、身をもって主人公が体験するのだ。
そしてそんな主人公のひたむきな姿を通して、本当にいい映画とは何かをわれわれに突きつけてくるのがこの映画なのである。

近年では『カメラを止めるな!』が、ホラーでしかもテレビ映像という、やはり映画から外れたジャンルの制作現場を通して、見事な映画愛を描いてみせた実例があったが、ちょっとそれと似ている。

こういう“映画制作の映画”の類いは得てして、映画への愛が感じられないと、つまらないものになる。
実際、そういう映画への愛がカケラも感じられないつまらない“映画制作の映画”もかなり多い。

その点、この映画は最初から最後まで、映画への愛に溢れている。
とくに主人公が日本の日活ロマンポルノのビデオをくり返し見ながら研究する姿は美しかった。
こういうシーンにこの時代の香港映画の底力を感じるな。

また、この映画はセクシー女優だったスー・チーが本格的な女優として評価されるきっかけになった作品としても記念碑的な一作。
演じているのはポルノ女優の役ながら、名演技で新人賞を獲得し、現在に至るスター女優への道を歩みはじめたのだ。

私がこの映画を初めて見たのは忘れもしない、2003年3月31日。
というのも、この映画を見て感動した次の日に主演のレスリー・チャンが自殺して衝撃を受けた。

レスリー・チャンはこの映画が自分の出演作で一番お気に入りなようで、最後に劇中劇として上映される短編はレスリー・チャン自身が監督した映像だそうだ。

評価

映画制作の映画としては、『カメラを止めるな!』『エド・ウッド』『蒲田行進曲』などと並ぶ名作。
★★★★★

Good Movie 認定


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