作品データ
原題:Fargo
監督:キャシー・ベイツ
原案:コーエン兄弟
脚本:ロバート・パーム、ブルース・パルトロー
出演:イーディ・ファルコ、ブルース・ボーン、マット・マロイ
制作:2003年、アメリカ(制作されたのは1997年)
あらすじ(ネタバレなし)
ノースダコタ州の小さな町ブレーナードの駐車場で、薬剤師が撃ち殺されているのが発見された。
妊娠中の警察官マージは相棒のルーと捜査にのりだす。
一方、同じ町の別の場所では、凍死した老人の死体が死体置き場から盗まれるという事件が発生していた。
『ファーゴ』パイロット版の感想
コーエン兄弟が1996年に監督した名作映画『ファーゴ』が、2014年からドラマ化されたのは記憶に新しい。
ところが最近インターネットで知ったことに、『ファーゴ』は実は1997年にも一度ドラマ化されたことがあるんだそうだ。
しかし出来が悪かったのか、パイロット版の第1話が制作されただけでお蔵入りになってしまい、2003年になってやっとテレビ放映されて日の目を見たのだという。
そう聞いて、見たくなった。
ネットで検索したら、YouTubeにひどく画質の悪いやつがアップされていたので、見てみた。
一応、見た映像作品はすべてここに感想を書くことにしているので、まあ1記事設けるほどの作品でもないが、いってみよう。
クレジットを見たら、なんと監督が、かの名女優キャシー・ベイツだって。調べてみたら、彼女は1995年くらいから監督業にも乗り出し、ほとんどテレビばかりではあるが、現在までに10作品以上も監督作があるそうな。
ただどれもあまり評判はよくないようだから、監督としてはそれほど才能がある方ではなさそう。
尺は45分。
内容は、マージが主役の犯罪ドラマ。
音楽も映画版と同じものが使われている。
マージはまだ妊娠しているので、時系列は映画版の直後らしい。
「あと5週間」というセリフがあった。
映画版のラストで「あと2ヶ月」と言っていたので、計算すると映画版の3週間後の物語、ということになる。
タイトルのファーゴ(ノースダコタ州の地名)だが、映画版はほとんど冒頭のシーンだけの登場だったが、このドラマはもう全編ブレーナードで、ファーゴはストーリー上まったく関係がない。
事件は、町の薬剤師が駐車場で撃ち殺されているのが発見され、マージがルーと協力して捜査にのりだす、というもの。
それともうひとつ、凍死した老人の死体が死体置き場から盗まれる、という別の事件のエピソードも並行して描かれる。
映画版のキャラクターからは、マージとその旦那さんのノーム、それから警察署でマージのパートナー的存在だったルーが引き続き登場している。
演じている俳優は、マージとノームは違うが、ルーは同じ人。
それだけに、ルーは映画版より登場頻度が高い。
それにしてもノーム役の俳優さん、映画版と違いすぎるな。
マージもかなりイメージが違うが、ノームはもうほとんど別人じゃないか。
ぜんぜん似てないにも関わらず、みんな映画版でおなじみのミネソタ訛りをくどいくらいに喋りまくるものだから、なんだか気持ち的にうんざりしてくる。
「Oh, yeah」「OK, then」「Oh, gee」とか、ホントこればっかり。
映画版より尺が短いのに、倍くらい聞いた気がする。
率直な感想を言うと、映画版と比べると驚くほど凡庸な作りで、これではお蔵入りするのも無理はないかな、という感じ。
ラストシーンが、パトカーで走行中にいきなりマージが産気づき、近くのプレハブみたいなところでルーが赤ちゃんを取り出すという、無理やりなもの。
ここは幾ら何でもダメすぎて呆れる。
唐突で不自然で狙いすぎで、実につまらない。
何よりも、映画版のあのインパクトを少しでも目指そうとした気配さえ感じられない、こころざしの低さが甚だしい。
まあでも、近年制作されたドラマはこの過去の失敗を踏まえたことで傑作となった可能性もあるから、これはこれで必要なワンクッションだったのかな、と前向きに捉えられないこともない。
それに新しいドラマの方は、コーエン兄弟がプロデュースに携わっていたが、このパイロット版には一切コーエン兄弟は関わっていない。
ひょっとしたらパイロット版の出来が悪かったので、新たにドラマ化の話しが出たときに、今度は目を光らせたくなったとか?
だとしたら尚更、このパイロット版が果たした反面教師の役割は大きいと言える。
評価
見る価値は、もの珍しさ以外にほとんどない。
★★★★★
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