数回に分けてクエンティン・タランティーノの処女作『マイ・ベスト・フレンズ・バースデー』の内容を、36分の未完成映像を中心に、脚本で補完しながら徹底解説するシリーズ。
今回はその第4回目です。
前回はこちら。
初めての方はこちらの解説文をお読みください。
【本編シーン】クラレンスがビル・スミスとエルヴィス・プレスリーについて討論する 17:27
ビル・スミスのビデオ・ベーカリーというレンタルビデオ屋とパン屋が合体しているお店にやってきたクラレンス。
親友のミッキーの誕生日ケーキを買います。
そこで、いきなり店主のビル・スミスがエルヴィス・プレスリーについて討論をふっかけてきます。
どうやら前回この店に来た時の続きのようです。
「エルヴィス・プレスリーは歌手としては一流だが、俳優としては才能がなかった」
と主張するクラレンスに、
「エルヴィスは俳優としても素晴らしい。ただ、ちょっと出来の悪い映画に何本か出ちゃっただけだ」
と主張するビル。
映画本編では短い会話ですが、タランティーノの脚本ではかなり長いセリフで白熱した議論が展開されます。
この後、映画本編ではちょっと別のシーンを挟んでから、2人の会話はまだ続きます。
(タランティーノの脚本では同じシーン)
【本編シーン】クラレンスはビル・スミスの店でやっとケーキを買う 22:24
長々とした音楽についての議論は終わり、クラレンスはやっとビルからケーキを買う段取りになります。
ケーキのプレートに書くミッキーへのメッセージについて、クラレンスは「友情とはミッキーと俺との永遠の愛の証。持久の喜びとは……」と長々と語り始めますが、ビルは慌ててそれを制し、「おいおい、長すぎて狭いケーキの上には書ききれないよ」などとツッコミを入れています。
映画本編ではこのシーンはここで終わりますが、タランティーノの脚本では、以下のように無駄な会話が続きます。
クラレンス「じゃあ、どれくらいの長さなら書けるんだ?」
ビル「そうだな……“誕生日おめでとう、ミッキー”くらいかな」
クラレンス「ありきたりだなあ」
ビル「それが定番なのは理にかなっているからだ。短くてスッキリしてるだろ」
クラレンス「確かに。文字を食べるわけじゃないもんな。実際、文字を食べるんだけど。まあいいや、とにかく何でもいいから書けよ。でも本当に『何でも』って書くなよ」
ビル「書くかっつーの」
会話の後、クラレンスがケーキの他にクッキーやらドーナツやらパイやらファッジやらチョコレート・エクレアやらアップルフリッターやらを買い込んで、このシーンは終わりです。
次回は映画本編でこのシーンの合間に挿入された部分を解説します。
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