作品データ
原題:Voyage of Time
監督:テレンス・マリック
脚本:テレンス・マリック
出演:ケイト・ブランシェット(声のみ)
制作:2016年、アメリカ
あらすじ(ネタバレなし)
ビッグバンから生命の誕生、現在までの歩みを映像で辿り、生命の本質と人類の未来を探求するドキュメンタリー映画。
『ボヤージュ・オブ・タイム』の感想
なんとこの映画、テレンス・マリック監督。
テレンス・マリックといえば80年代、私が映画少年だった頃、“幻の映画監督”として知られていた人だ。
というのも、彼は70年代に大傑作をたった2本撮っただけで、すっかり沈黙してしまったのである。
いわば日本でいう長谷川和彦みたいな位置付けの人だった。
90年代後半からまたぞろ映画を撮りはじめるようになり、現在では普通に活躍している映画監督になっているが、私の世代ではちょっと特別な心象を描く監督なのである。
そんなテレンス・マリック、実は私、復活以降の作品を何ひとつ見ていなかったりする。
いわばこの『ボヤージュ・オブ・タイム』は、私が初めて目にするマリック復活後の作品になるのだ。
しかもドキュメンタリー映画。
ヴェルナー・ヘルツォークの『グリズリーマン』みたいに、往年の名監督がドキュメンタリー映画で再ブレイク、なんて例も近年あることだし、これもその類のひとつかと思った。
ところが、これがかなりお粗末な作品。
Netflixのキャッチには『世界の隅々まで旅し、宇宙の果てと誕生に思いをはせる、本能で生命を体感する90分。時の経過を忘れて見入ってしまう、かつてない映像ドキュメンタリー』と書いてあったが、嘘である。
(ここからはただ文句をずらずら並べるだけの感想文が続く)

このクオリティのCGでOKしちゃう神経がいまいちわからない…(出典:imdb)
見入ってしまうような素晴らしい映像はあるにはあるが、半分以下。
途中途中にヘタクソなCGが入るので、テンションが下がる。
しかもこれらヘタなCGのせいで、その後に出てくる大自然の映像も、ひょっとしてCGかもしれない、という余計な雑念が生まれてしまい、例え素晴らしい映像でも心に響かなくなった。
ケイト・ブランシェットのナレーションが半端ないほどいらなくて、なんでもテレンス・マリックが文章を書いてるらしいのだが、内容は“森羅万象の母なる宇宙”に問いかけるという壮大な詩。…の態で、ありきたりの言葉が並んでいる。
あまりにもクソみたいな詩で、日本語字幕で見るとただ美しい画面を白い引っかき傷で汚しているだけにしか思えない。
インドの貧民街の映像だとか、原始人の再現映像みたいなのがあって、もう早送りする時間ももったいないほど意味を感じない。
とくに原始人の再現映像。
こういうシーンを撮るのなら、猿人類と原始人の違いはあれ、キューブリックの『2001年宇宙の旅』を超えるくらいを目指すのが才能ある映画監督の当然あるべき志だと思うのだが、目指そうと思った形跡さえ感じられない酷さ。
もしこれでキューブリック以上を目指したというのなら、頭がもうろくしたとしか思えない。
あと、音楽の使い方が平凡。
マーラーの『復活』の大ファンとして、あの使い方はよろしくないよね。
テレンス・マリックって相当なキレ者だと思ってたけど、ちょっとこの映画を見て認識を改めた方がいいと思った。

出典:Amazon
評価
『地獄の逃避行』はよかったなあ。
★★★★★
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