作品データ
監督:ラージクマール・サントーシ
脚本:ラージクマール・サントーシ、シュリラーム・ラガヴァン
出演:アミターブ・バッチャン、アクシャイ・クマール、アイシュワリヤー・ラーイ、トゥシャル・カプール、アジャイ・デーヴガン
音楽:ラーム・サンパス
制作:2004年、インド
あらすじ(ネタバレなし)
イクバール・アンサリというテロリストが逮捕された。
警視正のナイドゥは5人の警官を集めてチームを結成。
チームはイクバールを裁判にかけるため、ムンバイまで護送することになった。
しかしそれは、テロリストがいつ襲ってくるかわからない危険な任務なのであった。
『KHAKEE』の感想
公開終了後にDVDが発売してすぐに見たから、18年ぶりの鑑賞。
ボリウッド制作の社会派アクション映画。
渋いストーリーと豪華キャスト
舞台はインド北部の都市チャンディガール。
イクバール・アンサリという医師が、最近起きた暴動を煽動したパキスタンのスパイのかどで、逮捕される。
イクバールを裁判にかけるため、ムンバイに護送している途中、パキスタンのテロリストたちが襲撃。
イクバールの身柄は死守したが、護送していた警官たちはほぼ全滅。
いよいよ事態はインド対パキスタンの代理戦争の様相を帯びてくる。
再度イクバールを護送する危険な任務に抜擢されたのは、アミターブ・バッチャン演ずるアナント・シュリヴァスタフ警視正。
彼は娘の結婚式を2週間後に控えている身なので、命は惜しいが、この任務に成功したら、警察副長官の座が待っている。
そんなアナント警視正を筆頭に、アクシャイ・クマール演ずる女たらしのシェーカル他、5人の警官たちでチームが結成された。
彼らの命がけの道中に襲ってくるテロリストのボスを演じているのがアジャイ・デーヴガン。
なかなか悪役がサマになっていてカッコいい。
ヒロインはアイシュワリヤー・ラーイ。
裁判の証人として彼らの危険な旅に同行し、シェーカルと恋仲になる小学校の先生を演じている。
そんな感じで、キャストもなかなか豪華。
タイトルにこめられた熱いインド魂と名台詞の数々
タイトルの「KHAKEE」は「(警察官の)制服」の意味。
物語の中盤、敵に囲まれ絶体絶命の窮地に陥ったとき、シェーカルがアンサリを敵に引き渡そうとする。
そこでアナントが、
「お前は何のためにその制服を着ている!? 任務は命より重いのだぞ!」
と叱咤する。
もうこの精神がインド映画だなあ、と目頭が熱くなる。
そんな調子で、最初から最後までこの映画、実にセリフがいかしているのだ。
ストーリーは出だしはシンプルに思えて、なかなか凝った展開が待っていた。
↓ここから先はネタバレあり↓
練られたストーリーテリング
パキスタンのスパイをムンバイまで護送する、という序盤を見て、観客は大方ラストまでの展開は予想がつくな、と思うだろう。
5人のメンバーは難関をくぐりぬけながらも、テロリストのグループを撃破し、最後は無事ボンベイに辿り着いて、めでたしめでたし。
・・・となると思ったら、これが大間違い。
中盤でストーリーは180度、逆転するのだ。
冒頭で逮捕されたイクバールは実はパキスタンのスパイでもテロリストでもなく、本当に善良な医者だったのだ。
実は彼は、暴動の死亡者の検死に関わったことで、警察官僚とテロリストがグルになっている、というとんでもない秘密を握ってしまったため、パキスタンのスパイに仕立て上げられ、逮捕されただけだったのである。
つまりテロリストが襲ってくるのは、仲間を助けるためなのではなく、裁判で不利な証言をされては困るので、目的地に着く前に殺すためだったのだ。
だったらイクバールは黙ってないで早く言えばよかったのに、と思う視聴者もいるかもしれないが、彼が握っている秘密は警察官僚の裏側なのである。
自分を護送している者たちが善良な警官なのか、テロリストと通じている悪徳警官なのか、彼一個人にわかるはずもない。
なるほど、これはよく出来たストーリーではないか。
インド映画は概ねシンプルで同じようなストーリーが多いが、それでいて、わりと頻繁にこういうひねりを効かせた展開があるからあなどれない。
そしてラストにいたっては、さらにどんでん返しはくり返される。
まったく最後の最後まで目が離せない面白さ。
唯一の欠点を挙げるとしたら、ラストがちょっと呆気ないところだが、それまでの展開が充実していたので、私はあまり気にならなかった。
評価
アクシャイ・クマールもまあまあよかったが、アミターブ・バッチャンの熱い演技にシビれっぱなし。
★★★★★
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