作品データ
原題:The Walking Dead (season 1)
監督:フランク・ダラボン、ミシェル・マクラーレン、他
原作:ロバート・カークマン、トニー・ムーア、他
脚本:フランク・ダラボン、ロバート・カークマン、他
出演:アンドリュー・リンカーン、ジョン・バーンサル、サラ・ウェイン・キャリーズ、ローリー・ホールデン、スティーヴン・ユァン、ジェフリー・デマン、チャンドラー・リッグス、マイケル・ルーカー
制作:2010年、アメリカ
あらすじ(ネタバレなし)
警官のリックが怪我をして入院。長い昏睡状態からやっと目がさめると、世界はゾンビに蹂躙されていた。病院を抜け出したリックは、ゾンビを追い払いながら、家族を探して旅に出る。そしてやっと人間たちが避難している山奥のキャンプ場にたどり着くが……。
『ウォーキング・デッド』シーズン1の感想
ゾンビもののドラマなんてどんなだろう(だいたい予想はつくが)と興味をそそられて、見てみた。
これまでゾンビ映画はいろいろ見てきたが、ストーリーはどれもシンプルで、いっけん複雑なストーリーが要求される連続ドラマには向かないように思える。
ところが、シンプルなだけに様々な要素を盛り込み、変化に富ませて、立派な連続ドラマに仕立てるのはそう困難なジャンルではないと思う。
しかしシーズン9まで製作されたこのドラマも、このシーズン1はたった6話しかない。
シーズン2は全13話、シーズン3以降は各シーズン全16話づつある。
やはり最初はミニシリーズとして企画され、手応えがあったのでシリーズ化したのかな、と想像する。
第1話は「目が覚めたらゾンビ映画の中にいた」的な始まりかた。
こう書くとおもしろそうだが、ここの部分の見せ方はそれほどうまいというわけではない。
うまいのはその後で、第1話のラストで主人公のリックがゾンビに取り囲まれ、命からがら戦車の中に籠城すると、とつぜん何者かが無線で話しかけてくるあのシーンは思わず声をあげて笑った。
印象的だったのは、アンドレアという女性が、ゾンビに噛まれて死んだ妹の遺体にひと晩中つき添い、ゾンビになるところをしっかり見届けてから自ら銃でトドメをさすシーン。
このドラマを見はじめたときからきっとこういうシーンがあるんだろうと思っていたが、やはりこういうゾンビものとヒューマニズムの絶妙な融合がこのドラマのキモだと確信した。
そういえば第1話で、モーガンという男がゾンビになった妻をどうしても銃で撃つことができず苦悩するシーンもその要素のひとつだといえる。
昔『バタリアン』というゾンビ映画があって、ゾンビに噛まれた男が自ら焼却炉の中に飛び込んで自殺する感動的(?)なシーンがあったが、ああいう、これまでのゾンビ映画に散見されたドラマ要素を大きくクローズアップして核の要素にしたのがこのドラマだといえる。
また、このドラマの核はもうひとつあって、それはゾンビ映画特有の、人間とゾンビの攻防の新パターンを次から次へと発明してゆくところ。
こちらの核を創出しているバックグラウンドは何と言ってもゾンビの生態、ホラー映画のセオリー的な言い方をすると、ゲームのルールみたいなもの。
例えばゾンビは昔から「歩くのが王道」だの「走るゾンビもアリ」だのの議論がゾンビマニアのあいだで繰り返されてきたが、この映画のゾンビは「小走りまで」という設定。
腕力とか身体能力は元の人間並みにあり、音と匂いに反応し、群れになると手強くなる。
こういったルール設定がしっかりしていて、人間のサバイバルにうまくからませていかないと、ゾンビものはおもしろくならない。
山奥に避難していた人間たちのキャンプに突然ゾンビの群れがやってくるシーンの異様な臨場感は、私的にはシーズン1最大の見せ場だった。
と、なかなかおもしろいドラマで気に入ったのだが、残念なところもある。
カメラワークというか、カット割りというか、画作りがいまいち効果的とはいえないところ。
こういうアップの多い、人間の感情にスポットを当てたカメラワークを見ると私はいつも白ける。
見ていて「ああ、ここはヒキの画にしたほうがもっと盛り上がるのに」と思う場面が数分に一回はあるのだ。
ゾンビを殺すシーンでいちいちゾンビのぶち壊される脳髄をアップにするところもイマイチ効果的だとは思えない。
まあ、映像は気に食わないが、そこそこシーズン2も期待できるドラマだった。
評価
今後の期待も含めて。
★★★★★
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