映画『ピクセル』の感想 – 雑な設定をうやむやにする見事な心理戦術!

ピクセル
出典:imdb
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作品データ

原題:Pixels
原作:パトリック・ジャン
監督:クリス・コロンバス
脚本:ティム・ハーリヒー、ティモシー・ダウリング
出演:アダム・サンドラー、ケヴィン・ジェームズ、ミシェル・モナハン、ピーター・ディンクレイジ、ジョシュ・ギャッド、ブライアン・コックス、アシュレイ・ベンソン、ジェーン・クラコウスキー
音楽:ヘンリー・ジャックマン
制作:2015年、アメリカ

あらすじ(ネタバレなし)

NASAが1982年、地球外生命体に向けて打ち上げたゲーム映像。
それを地球からの“宣戦布告”と受け取った宇宙人が、「望むところだ」とばかりに攻めてきた。
かくして、パックマンやギャラガなど、80年代アーケードゲームがリアルに出現し、世界の各地をピクセルに変えてゆく。
立ち向かうは、80年代に腕をならしたゲーマーたち。
果たして地球の運命や如何に!?

『ピクセル』の感想

この映画は2010年にフランスで製作された3分くらいの短編映画『Pixels』を原作にしているらしい。
この元になった短編映画は以下YouTubeで見れる。

ご覧の通り、短編版の方がはるかに完成度が高い。
ブロック崩しやテトリスのシーンなど、こちらの方が映像に説得力がある。
オチもこちらのほうが圧倒的に上。

とはいえ、短編版を忘れれば、長編版『ピクセル』もそれほどバカに出来た映画でもなかった。

ちょっと個人的なゲーム遍歴から解説しよう。

私は小学生の頃はブロック崩し、中学生ではギャラガとドンキーコングにハマり、高校生になってからはもっぱらディグダグが専門だった。
ちなみにセンティピードは今回、初めて知った。

肝心のパックマンは私が小学生のときに流行ったゲームだが、私には難しくて、あまりやらなかった。
大学生になってアメリカのフィラデルフィアに留学し、「近所の店にパックマンが導入された」ということで、アメリカ人の友達たちの間で話題になったことがある。
ちょうどこの映画の主演アダム・サンドラーがSNLのレギュラーになって世に出てきた頃だ。

アメリカ第6の大都市フィラデルフィアで、日本より10年遅れてやっとパックマンが流行るなんて、アメリカってなんて遅れてるんだと思ったが、あれは第二次ブームだったのかな。
この映画によると、日本よりも2年遅れてちゃんとアメリカにも導入されている様子が窺える。

ピクセル

CGはなかなか気持ちのよい出来(出典:imdb

ゲーマーたちとそれに協力を要請するアメリカ大統領が幼なじみというやたら狭い世界観。
国家の存亡をかけた連邦政府の会議室も中小企業並みに狭い。
かの『ハリー・ポッター』シリーズの監督とは思えないショボい映画。
出来が悪いというより、かなりやる気なさげ。

最初の45分くらいまでは演出もストーリーもスケール感もショボすぎて、もう駄作以外は考えられず、クソ映画決定かと思われた。

しかしセンティピードが攻めてくるあたりから徐々に盛り上がってきて、

Let the nerds take over!
(オタクどもにやらせろ!)

の名セリフを境に、前半下がりっぱなしだったテンションがいきなり急上昇。

CGがかなりよく出来ていて、80年代のアーケードゲームをリアルに表現した映像は素晴らしい。
攻撃された地球のモノがピクセル化して破壊されるところなど、ビジュアル的に実に気持ち良いとこを突いてきている。

だいたいアーケードゲームで高得点を出していた達人たちが、リアル3Dになっても同程度のパフォーマンスを発揮できてる時点で、もう設定の細かいところは投げやりだってことがわかる。

前半のつまらなさはここらへんの雑な設定をなあなあににするための心理作戦だったんじゃないかと勘ぐりたくなるほどの成功っぷり。

「リセットじゃなくて3機でゲームオーバー」だとか、マーサ・スチュワートだとか、小ネタも効いている。

先にも言及した通り、私はセンティピードというゲームを知らなかったのだが、じゅうぶんセンティピードのシーンもおもしろかったので、この映画は80年代のゲームを経験していなかった方でも楽しめる出来になっているんじゃなかろうか。

ピクセル

出典:amazon

評価

駄作なのに、人にオススメできるレベルにはおもしろくなっているという。
★★★★★

Good Movie 認定


『ピクセル (字幕版)』を見る。
『ピクセル (吹替版)』を見る。

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